さらに「さらざんまい」~愛と欲望のステージ~稽古場レポート&振付講座動画公開!


2019年4月から6月までフジテレビ『ノイタミナ』枠にて放送された、幾原邦彦監督によるオリジナルアニメ「さらざんまい」。
中学2年生の矢逆一稀、久慈悠、陣内燕太の3人はある日、謎のカッパ型生命体“ケッピ”に出会い、無理やり尻子玉を奪われカッパに変身させられてしまう。『元の姿に戻りたければ“ある方法”でつながり、ゾンビの尻子玉を持ってこい』とケッピに告げられた3人は、ゾンビの尻子玉奪還に奔走する。一方、謎めいたふたりの警官、新星玲央と阿久津真武が勤務する交番でも何かが起ころうとしていた――。

東京・浅草で繰り広げられる“愛”と“欲望”を巡る物語は大評判となり、異例の早さで舞台化も決定した。
舞台版のタイトルはズバリ、『さらに「さらざんまい」~愛と欲望のステージ~』だ。11月28日(木)の初日を目前に控える中、稽古場取材から伝わってきた“さらざんまい”特有のワクワク感をお届けしたい。

稽古場レポート

この日の稽古は、昨日組み立てられたばかりという舞台装置の説明から始まった。

センター中央に置かれた可動式の階段。その後方には2階建ての高さにセットが組み上がっている。上手から下手に渡って設置された2階の幅などを担当スタッフが丁寧に説明していく。安全性確保のために何よりも大事な作業だ。

集まったキャストたちも、真剣な表情でスタッフの解説に耳を傾ける。一通りの説明が終わると、キャストも実際に階段を登り、高さや幅を確認。

特殊な場面で使うと思しき舞台装置が登場すると、矢逆一稀役の木津つばさが思わず「でかいっ!」と驚きの声。他のキャストたちも歓声を上げ、興味津々だ。
その舞台装置からお尻をにゅっと突き出す練習をしているキャストもおり、一体どのシーンでどのようにして使われるのか、期待が高まる。

大方のチェックが終わると、いよいよ場面稽古がスタートした。
ここからは演出・伊勢直弘が手綱を取る。

まずは今日までの稽古を振り返って「もっと流れでやっていくことの重要性を意識したい」とコメント。あらためて本日の稽古が「繰り返し流していく作業がメインになると思う」と伝え、場面の稽古を開始する。

「さらざんまい」は、何者かが“カパゾンビ”なるモノと化して、そのモノが欲するものが街中から消えてしまう事件が起点。カパゾンビの“尻子玉”を抜き、事件を収めるために主人公・矢逆一稀たちが奔走するエピソードで構成されている。
ただ、一稀たちも秘めた欲望を抱えており、尻子玉を奪う代償として自身の欲望が漏洩してしまうというリスクが、この物語の肝でもある。

セットの2階で、浅草のローカル番組「アサクササラテレビ」のMCを務めているご当地アイドル・吾妻サラ役の帝子がニュースを伝える。TVアニメで同役の声優も務めている帝子の台詞回しは、アニメ同様にキュートだ。

矢逆一稀、久慈悠、陣内燕太たちがステージの中央に登場し、謎のカッパ型生命体・ケッピの元を訪れてカパゾンビの尻子玉奪取に赴く。

アニメファンなら誰もが期待するであろう楽曲「さらざんまいのうた」が流れ、カパゾンビの尻子玉を奪う「欲望搾取!」、そして自分たちの欲望が漏洩してしまう場面が続けて展開される。

「さらざんまい」独自のポージング、楽曲は舞台映え確実だ。疾走感のある曲とフォーメーションと決めポーズは、とにかくカッコイイの一言。詳細はぜひ、劇場で。

「さらざんまい!」という3人の掛け声をキッカケに、漏洩シーンが始まる。アニメでは鮮やかな配色とめくるめく場面転換、そこに一度聴いたら耳から離れないメロディが重なるカオスなシーンとなっていたが、舞台では「あの場面がこうした形になるのか!」と目を瞠る展開を見せる。

場面を通した後、テンポ感を出すために伊勢がアドバイスしていく。木津が質問を投げかけると、伊勢が「そうだね。ここはこうした方がいいかも」と回答。
木津は、ダンスボーカルグループXOXの最年少メンバーにして男性演劇集団劇団番町ボーイズ☆にも所属している注目の若手俳優。主演として周囲を牽引している様子が伺える。

陣内燕太役の野口凖は、伊勢から「(燕太は)キス、という単語に反応して」と指示され、即座にコメディタッチな動きで動揺を表してみせていた。野口は舞台を始め映像作品でも活躍しており、さすがの対応力だ。

久慈悠役の設楽銀河は、『アイ★チュウ ザ・ステージ』シリーズ(華房心役)、舞台『刀剣乱舞』慈伝 日日の葉よ散るらむ(五虎退役)など、これまで演じてきた役柄とは、また違ったクールな役どころに挑んでいる。

野口と設楽は未だ十代。中学2年生の危うさを演じることもハマっていた。

その後、セットのセッティングスピードなどを含めて再調整。
あらためて場面を通そうとすると、勢い込んでステージに駆け込んできた木津が台詞を噛んでしまい、もう一度始めからに。ケッピ役の一内侑が「気持ちは伝わる」とやさしく微笑んだ。

セッティングとのタイミングを図ることもあり、一度自分たちの動きを合わせてみる3人。カウントは木津がメインで取り、設楽たちにも積極的に声を掛けていた。

そんな彼らの背後では回想シーンでもある「漏洩」場面が展開。尻子玉を抜かれたモノたちの欲望が溢れ出す。次々と白日の下に晒されていく欲望はストーリー的にも重要。綿密に打ち合わせが重ねられる。

背後の回想とセットの移動、そして3人の動きがピッタリ合うのはなかなか難しい作業だが、メインを演じる3人は黙々と確認を続けていた。ひたむきさはキャラクターと通じる部分でもあるようだ。

一段落後、みんな休む間もなくシーンを通す稽古に入る。

1場面のみの稽古場取材ではあったが、見どころのひとつであるシーンの作りを目にすることが出来、原作ファンも演劇ファンもきっと楽しめる舞台となるに違いないと、“さらに”期待値が上がった。

東京公演は11月28日(木)~12月1日(日)シアター1010にて上演。大阪公演は12月7日(土)~8日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて上演される。

(取材・文:片桐ユウ)

振付講座動画を公開!

振付講座(1)「さらざんまいのうた」
振付講座(2)「カワウソイヤァ」
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