「『錆色のアーマ』外伝 -碧空の梟-(あおのふくろう)」仲田博喜インタビュー

©「錆色のアーマ」プロジェクト

舞台を原作に、さまざまなメディアミックスプロジェクトを展開する「錆色のアーマ」。これまで2作(’17年・’19年)上演された本編のスピンオフとなる「外伝 -碧空の梟-(あおのふくろう)」が、東京・池袋にオープンする新劇場Mixalive TOKYO Theater Mixaのこけら落とし公演の1つとして6月に上演されます。今作で初めて登場する<橘三兄弟>の次男・橘 東雲(たちばな・しののめ)役として出演する仲田博喜さんにお話をうかがいました。


――「錆色のアーマ」に出演が決まっていかがですか?

「2.5次元作品の中でも、“逆2.5次元”という、まず舞台が上演されて、そこからアニメ化されたり、コミカライズされたりするという新しい試みの作品だと思いますので、そこに関わることができるのは嬉しいです。舞台一作目、二作目も拝見しましたが、今のエンターテインメントの良さが詰め込まれていますし、世界観が素敵で単純に楽しそうだなとも思いました。ワクワクしています」


――「今のエンターテインメントの良さ」とはどのようなものですか?

「歌があって、アクションがあって、歴史もので、音楽も素敵で……全部ですね(笑)。僕は2.5次元作品に出演させていただくことも多いのですが、常々、世間のイメージをいい意味で壊したいなと思っていて。この作品はここがスタート(原作)だからこそ、(芝居で)戦えるし、遊べるし、表現できるし、つくっていけるものがあるなと感じています」


――ちなみに、いい意味で壊すには、どういうところがポイントになるのでしょうか?

「言葉にするのが難しいのですが、2.5次元作品は、やっぱりまず見た目があって、声があって、性格があって……という前提が用意されている。そこにはひとつの“答え”があるんですよね。でもそれは2次元のものなので、舞台上で生身の人間がやることで起きる変化もあるし、僕自身と混ざり合うことで新たに生まれるキャラクターもある。そこに、原作に寄り添いつつ戦える部分があると思っています」


――なるほど。今作はどんなお話になりそうですか?

「本編に出てくる雑賀衆(さいかしゅう/本編の主人公・孫一が属する集団)の過去に僕ら<橘三兄弟>が関わっているのですが、僕らが敵なのかそうじゃないのか、なぜ三兄弟なのか、どんなふうに雑賀衆と絡むのかは、この話の面白いところだからな……(笑)」


――(笑)。本番でのお楽しみですね。では、台本を読んで仲田さんご自身はどんな気持ちになったかお聞きしたいです。

「悲しくなりました。この作品の舞台って、リアルに命のやり取りがある時代なんですよね。だから大切なもののために本当に命を懸けることもあって。そこにドラマを感じました」


――ご自身が演じる橘東雲(たちばな・しののめ)はどんな役ですか?

「一言で言うと、強い。圧倒的な強さです。僕ら三兄弟のやり取りはぜひ楽しんでいただきたいです。キービジュアルを見るとヒール風ですが、この人たちにはこの人たちの正義があって、守りたいものがあるので」


――この作品と言えば武器も魅力のひとつですが、キービジュアルを見るとカッコよさそうですね。

「『よさそう』じゃないですよ、カッコいいんです!(笑)僕が持つのは特殊な長物の刀です。長男・未布留(みふる/櫻井圭登)の武器も普通の弓に見えるけど、それだけじゃないですよ。三男・羽矢十(はやと/富園力也)の武器が一番正統派かな。武器からもアクションの違いが出てくると思いますし、楽しみです。本編を観ると、皆さん必殺技みたいなものがあってカッコいいので、僕らもやりたいなと思っているところです(笑)」


――期待しています! 義兄弟役の櫻井さんと富園さんとは既に一度お会いしたそうですね。

「はい、初めてお会いしたときから、初めてとは思えないくらい打ち解けやすいふたりで。初日からこんなに仲が深められるのなら、稽古でさらに絆が深まっていくんじゃないかなと思っています。兄弟の絆はこの作品では大事なところですからね」


――期待できそうですね。

「絶対大丈夫だと確信しています。櫻井くんも言ってくれたんですよ。『このふたりとだったら絶対大丈夫だと思えた』って。僕もそう感じたので、いいスタートだなと思いました」


――新キャラクターとして参加することはどのように感じていますか?

「初演からつくりあげてきた世界観や、雑賀衆の絆があるところに僕らが入るので、胸を借りるつもりでいます。でもいい意味で散らかしたいし、掻き回したいです。今作で描かれる雑賀衆一人ひとりの過去って、初めて見える部分だと思うので、彼らの生き様がしっかりと描けたらいいなと思っています」


――楽しみです。演出・上演台本の元吉庸泰さんとは初めてのタッグですね。

「実は以前、元吉さんが演出助手をされていた作品でお会いしていまして。そのときに『いつか一緒にできたらいいね』という話をしていたんですよ」


――それは嬉しい再会ですね!

「はい。それ以降、元吉さん演出の作品は一方的に拝見していますが、元吉さんにしかつくれない世界観があるなと感じています。そこに入れるのは楽しみですし、プレッシャーでもありますね」


――元吉さんの世界観ってどういうものですか?

「繊細で綺麗。儚さがありますよね。あと、“良い裏切り”が散りばめられてるんですよ。観ていて、僕の経験則で『こうなるだろうな』と思っていても『あれ?』って。予想できることをしない魅力。尖っているし、攻めている。ワクワクしますよね」


――そんな元吉さんと一緒につくる“逆2.5次元”作品はどんなふうにしたいですか。

「これがオリジナルだけど、原作があるように思えるものをつくりたいです。逆2.5次元だからこそ、自分の経験と、稽古で積み上げていくものを反映させて、深い人間像や人生を描けたらと思いますね。泥臭く」


――仲田さんは2.5次元作品にたくさん出ていらっしゃいますが、きっと最初は“再現する”というところから始まったと思うんです。そこからいろんな作品を経て、今おっしゃったような“攻める”のラインが見極められるになったのだと思うのですが、そこに感じる面白さってなんですか?

「やはりまずは、ひとつの正解があって、そこに近づけば近づくほど原作を好きな方が喜んでくださるというのがやりがいですし面白さでもあります。それが大前提で、そのキャラクターを好きな人たちが『こういう一面もあるんだ』というところをつくりあげていけることは、またひとつ面白いところなのかなと思いますね。それはだから“奥行き”ですよね」


――人間が演じるからこその奥行きということでしょうか?

「はい。その人物が生きてきた過程が出せたらいいなと思っています」


――本番、楽しみにしています!

 

インタビュー・文/中川實穂