「錆色のアーマ」-繋ぐ- 稽古場レポート

佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS from EXILE TRIBE)、増田俊樹のW主演で約2年ぶりに待望の続編が上演されるのが、メディアミックス作品「錆色のアーマ」。
『月刊コミックジーン』(KADOKAWA)でコミカライズの連載もスタートし、熱い注目を集めている本作。
第2作目となる今回の『「錆色のアーマ」-繋ぐ-』で新たに登場するキャラクターも多く、どのようにストーリーが展開していくのかが気になるところだ。本番が迫るある日の稽古場にお邪魔した。

本作は、一作目がクライマックスを迎えた本能寺から物語が動き出す。
織田信長(増田俊樹)は燃え盛る炎の中で、妖しげなる“影”に出会う。
一方、孫一(佐藤大樹)率いる鉄砲傭兵集団・雑賀衆は本能寺より帰還するが、孫一には雑賀の里を含む紀州惣国を取り仕切る藤白(石渡真修)から呼び出しがかかる。
紀州惣国の平和を願う藤白は、孫一を拘束し羽柴(のちの豊臣)秀吉に差し出そうとするが……。
信長亡きあと、信長の地盤を継ぐ秀吉は病弱な養子・秀勝(玉城裕規)の命をつなぐために奔走していた。
その裏には陰陽師・賀茂在昌(丘山晴己)の策略があり……!?

通し稽古の滑り出しとなる、本能寺のシーン。
瀕死の重傷を負い、思うように体が動かない信長を演じる増田のセリフ回しの重厚感に、初っ端から圧倒された。
どこか歌舞伎などにも通じるようなリズム感を持つ増田の演技を受けて、稽古場にも本番さながらの空気感が漂う。

一方、本能寺での戦いを終えた孫一と雑賀衆はそれぞれバラバラに故郷を目指す。
何事にも熱く全力で立ち向かおうとする孫一はもちろん、親子のように慕い合う鶴首(荒木健太朗)と蛍火(永田崇人)、豪快で家族思いな木偶(章平)、妖艶な女形のようでありつつ面倒見のよいアゲハ(神里優希)、雑賀衆の弾使いの荒さを嘆く経理担当(?)の黒氷(平田裕一郎)も健在だ。
そして彼ら同様にこの作品の主役でもあるのが、彼らが操るアーマ。
銃剣一体型になっている孫一の「麒麟殺し」を筆頭に、木偶が巨大な大筒「玄武砕き」を担ぎ、鶴首も身長ほどもある槍のような長銃「鳳凰落とし」を構えるなど、全員が個性的なアーマを駆使する姿はなんとも鮮やかだ。

チームワークの良さを見せる雑賀衆はもちろん、この第二作目で初登場するキャラクターたちの“濃さ”も興味深い。
まずは闇の陰陽師・在昌を演じる丘山。
暑かったこの日の稽古でも衣裳を想定しているのか、ロングコートにヒールのブーツに挑んでいた。元々バレエダンサーでもあり、キャラクターのトレードマークといえる鉄扇を持っての立ち回りなど身のこなしが非常に優雅で、ダークヒーローさながらの佇まいだった。

そして雑賀の里を含む紀州の棟梁である八咫烏の筆頭・藤白を演じるのが石渡。
孫一にライバル意識を持ち、ときには雑賀衆の敵ともなるが、さまざまな戦略を駆使しつつ国を守ろうとする熱き男を、落ち着きを感じさせる芝居で見せていく。

さらに上記の2人と同じく物語のカギを握る存在が、玉城演じる羽柴秀勝だ。
自分を実の子のようにかわいがってくれる秀吉に尽くしたいと考えているが、生来病弱なため戦にはほとんど出られないという彼の中に渦巻く葛藤をときに激しく、ときに繊細に表現していた。

そんな彼らの運命を翻弄するのが、在昌によって封印を解かれた妖の兄弟・酒呑童子(田中しげ美)と茨木童子(佐藤永典)。
田中は身長ほどもある大太刀「大量(おおはかり)」を使った殺陣を含め、豪快な演技で魅せる。
佐藤も二対の妖剣「十握剣」を操りつつ、どこか人を食ったような表情など、ひとクセもふたクセもあるキャラクターを好演していて興味深かった。

本作の大きな見どころの一つといえるのが、キャストが歌い上げるオリジナル曲の数々。
大勢でのパワフルな群唱もあるが、第一作でも特に好評だったのが増田の歌声だ。
この日の稽古でも、魅力的な低音で稽古場の空気感を一変させていた。
さらに新キャストの丘山も特徴的なビブラートを響かせる楽曲があるなど、本番での仕上がり具合が楽しみだ。

そしてそれぞれのアーマが重要な役割を果たすこのシリーズにおいての醍醐味は、なんといっても鮮やかな殺陣。
パフォーマーでもありキレのある動きが光る佐藤大樹を筆頭に、アクロバットしながら二丁拳銃「烏天狗封じ」を駆使する永田、全身のあらゆる箇所に仕込んだ連発銃「白虎薙ぎ」をぶっ放す平田、女形のような動きとアクロバティックな動きを切り替えながら敵に斬り込む神里など、それぞれが得意技を使いながらステージ各所でバトルする姿はまさに“目がいくつあっても足りない”レベル。
佐藤と増田はわずかな休憩時間も惜しんでセリフや殺陣を合わせていたが、とあるシーンでの孫一と信長の一騎打ちのシーンでは、ステージからリアルに風が吹いてくるような迫力さえ感じさせた。

またこの二作目独自の見どころといえるのが、ひょんなことから出会った秀勝と孫一が絆を深めていくシーンの数々だ。
激しい戦いの連続でもあるこの作品の中で、唯一穏やかな空気が流れるこの場での2人の繊細な演技に注目してほしい。

シーンが進むにつれて、第一作目では明かされなかった登場人物たちのバックグラウンドも少しずつ見えてくる。
今は亡き孫一の姉・沙羅への、孫一と信長の断ち切れない思い。
鶴首と蛍火の親子のように固い絆。家を滅ぼされ、殺された双子の姉への思いを胸に抱き続けるアゲハ。
それぞれのドラマに在昌や酒呑童子、茨木童子らの思惑が絡みつき、物語は予想もつかない方向へと展開していく。

シリーズとしての深みを感じさせる脚本、より進化した殺陣など、二作目ならではのお楽しみポイントも多い本作。
驚きと感動のクライマックスを、是非劇場で確かめてほしい。

 

取材・文/古知屋ジュン