アトラスの大人気ジュブナイルRPG『ペルソナ5』を舞台化した「PERSONA5 the Stage #3」が12月10日から大阪・横浜にて上演される。本作は、現代日本を舞台に「ペルソナ能力」(=心のなかに眠る別人格が、伝来の神や悪魔の姿となって出現した特殊能力)に目覚めた高校生たちが、仲間と協力し合いながら困難に立ち向かう姿を描いた作品。シリーズ3作目となる今回は、“心の怪盗”となった主人公たちが、腐った大人たちをどのように改心させるのかを、爽快感たっぷりのバトルアクションと丁寧な心理描写で綴る。「主人公」を演じるのは、#1、#2に引き続き、猪野広樹。共演には、塩田康平、御寺ゆき、松島勇之介らが名を連ねる。シリーズを通して、明智吾郎を演じる佐々木喜英に、約1年ぶりのシリーズ最新作となる本作への意気込みを聞いた。
――シリーズも3作目になりました。佐々木さんは、1作目から本シリーズに出演されていますが、どんな思い入れがありますか?
佐々木「現時点では、ストーリー的にも僕は主人公や怪盗団のみんなを陰から観察しているような立場なので、早くみんなとお芝居で絡みたいですね(笑)。どんどんシリーズが続いていって、明智吾郎の心の奥まで見せられたらと思っています。」
――佐々木さんからみた明智吾郎は、どのようなキャラクターですか?
佐々木「2作目を終えた現時点では、まだ謎に包まれたミステリアスなキャラだなと思います。僕も、「これからどうなっていくの? どんな登場シーンがあるの?」と楽しみにしている段階です。これは他の作品でもそうですが、僕自身、謎めいた役に惹かれることが多いんですよ。その「全貌が見えなくて分からないからワクワクする」気持ちを、お客さまにも楽しんでいただけたらいいなと思って演じています。」
――謎が多いキャラクターを演じる上では、どんなことを意識していますか?
佐々木「謎が多く、まだあまり登場しないキャラだからこそ、一瞬でその場を変えられる力があると思うので、印象に残るお芝居をしていきたいと考えて演じています。」
――「主人公」役の猪野広樹さんや、坂本竜司役の塩田康平さんなど1作目からの続投キャストも多く出演されます。1作目、2作目の公演時のエピソードを教えてください。
佐々木「1作目はコロナ禍前だったので、キャストみんなでご飯に行ったりもしたのですが、2作目はコロナ禍でそれもできませんでした。なので、楽屋での空き時間にみんなで一緒にゲームをしたのが思い出に残っています。「息抜きに一戦やろうぜ」って誘い合って(笑)。」
――佐々木さんはゲーム好きなんですか?
佐々木「普段はそれほどしないんですが、ゲームが流行っている座組みだと、ものすごく影響されて、そのゲームをやり込んじゃうんです(笑)。でも、「みんなでプレイする」のが好きなだけなので、その公演が終わるとやらなくなっちゃうんですよ。だから、ゲームが好きというよりも、その空間をみんなと楽しみたいということなんだと思います。今回もゲーム好きなキャストが多いので、またゲームで盛り上がるんだろうなと思っています(笑)。」
――みんなでのゲームが楽しみの一つになりそうですね(笑)。ほかには、本作でどのようなことを楽しみにしていますか?
佐々木「これまでのシリーズでは毎回、明智のソロ曲をいただいているので、今回もそういった印象的なシーンがあると嬉しいなと思います。このシリーズの楽曲は、どの曲もすごくかっこいいんですよ! ジャズ風のアレンジがされていて、世界観にもすごく合っていると思います。毎回序盤の歌稽古では、どんなニュアンスで歌うのかを話し合いながら、少しずつアレンジを加えて作っていくんですが、その作業もすごく楽しみです。」
――今回は、メルパルクホール大阪で公演の幕が開き、KT Zepp Yokohamaでの公演も予定されています。
佐々木「メルパルクホール大阪は、僕が2.5次元舞台・ミュージカル作品に出始めた頃からずっと立たせていただいている劇場なので、色々な思い出があります。それだけに、今回もすごく楽しみです。KT Zepp Yokohamaは前作の際に立たせていただきましたが、ライブも行われる会場なので、歌っているときに音が気持ちよく響く感じがして良い劇場でした。」
――やはり、劇場とライブハウスでは音の響きが違いますか?
佐々木「全然違います。もっといったら、劇場でもそれぞれに違いがあります。僕、モニター環境にすごくこだわりがあるんですよ。毎回、どの会場でもサウンドチェックをして、デシベル単位でオーダーをしてしまうことがあるんで、仲の良い音響さんには「デシベルおじさん」と呼ばれることもあります(笑)。」
――あだ名まであるほどなんですね(笑)。佐々木さんはアーティストとしても活動されているので、音にこだわりがあるところと思います。では、アーティスト活動と俳優として舞台に立つこと、それぞれどんな想いで臨んでいますか?
佐々木「舞台に出演することも、アーティストとしてライブを行うことも、自分のパフォーマンスを届けるという点では同じですが、ライブではキャラクターを演じるのではなく、“佐々木喜英の歌を届ける”ことを大切にしています。一方で、2.5次元の舞台作品は、その原作のキャラクターを大切にするということを心がけていますね。もちろん、演出家さんによってどういう役作りをして欲しいかというのは違うとは思うので、様々な要望に応えられるように、演じるキャラクターの表現の引き出しをたくさん作った状態で稽古場に入るようにしています。」
――俳優として舞台に立つ時に、佐々木さんが一番大切にしていることは?
佐々木「今、演出家さんの要望を受けて役の作り方が変わるとお話ししましたが、僕自身は2.5次元の作品では原作に限りなく似せていきたいという思いが強いです。僕は、初めて2.5次元の作品を観たとき、漫画から飛び出してきたようなキャラクターが舞台上に存在していることにすごく感動を覚えたんですよ。(その作品は)ミュージカル『テニスの王子様』コンサート Dream Live 1st(2004年上演)だったのですが、当時高校生で、原作やアニメを見ていた僕には、彼らが本物にしか見えなくて…。だから、その感動を皆さんにもお届けしたいと、どの作品に出演するときも思っています。
原作は隅々までチェックするようにしていています。「このセリフを言うときはこの角度なのか」とか「このシーンでは上手・下手どちらから話しかけているのか」とか細かい部分まで記憶しています。それぞれのキャラクターに象徴的なポーズの“絵”があることも多く、その立ち姿というのは(劇中のどこかに)あってほしいと僕は思います。原作をリスペクトした演技は、きっと原作ファンの方の心に響くと思いますし、ファンの皆さんが望むようなキャラクター像を作り上げていけたらいいなと思って役作りしています。」
――舞台で演じる楽しさは、そうしたファンの方の反応にある?
佐々木「そうですね。温かい拍手や笑顔を感じる瞬間はとても幸せですし、劇場でお客さまと一緒にその空間を作り上げていくという楽しさがあります。」
――では、今後、俳優としての目標は?
佐々木「最近は様々な作品で、ラスボスだったり、主人公に敵対するキャラやインパクトがあるシーンに登場するキャラをいただくことが多いので、その期待にどんどん応えていきたいです。「そこまで極めるの?」「まだ上をいくの?」と言っていただけるようなパフォーマンスをどんどん観せていきたい。「こういう役なら絶対ヒデくんだよね」と言っていただけるような、印象に残るお芝居をしていきたいです。」
――ライバルやヒールのような敵役を演じる面白さはどこに感じていますか?
佐々木「敵役の最初の登場シーンって、めちゃめちゃかっこいいじゃないですか! 後々、倒されてしまうことは多いですが(笑)、それでも最初の登場シーンでは、主人公が絶対に敵わなそうな圧倒的な強さと存在感を持って登場するので、そういうシーンを演じるのはすごく楽しいです。本格的な立ち回りがあって最後にはかっこよくやられてしまうというのも、僕は好きです。」
――最後に、公演を楽しみにされているファンの方にメッセージをお願いします。
佐々木「今回は、新しいキャラクターが怪盗団に加わります。僕の演じる明智吾郎は、#2でやっと「主人公」と舞台上で言葉を交わすことができ、これから「主人公」とのシーンも増えてくると思います。キャラクターが増えて、キャラクター同士の関係も深まっていく中で、よりカラフルな世界観をお見せできるんじゃないかなと思っているので、ぜひ期待していてください!」
取材・文/嶋田真己