特殊なマイクを使い、男たちが威信をかけたバトルを繰り広げる『ヒプノシスマイク』。
舞台版『ヒプノシスマイク』(通称:ヒプステ)の最新作は、初のスピンオフストーリーとなる《Mix Tape1》。ヨコハマ・ディビジョン、シブヤ・ディビジョン、そして舞台オリジナルのアカバネ・ディビジョンが登場し、これまでとは一味違った熱い物語が展開される。
期間は2022年7月14日(木)~18日(月・祝)、【東京】TOKYO DOME CITY HALLにて。今回は“ヒプステ”初のオリジナルディビジョンとしてtrack.1から登場したアカバネ・ディビジョンの3人、堂庵和聖役・岸本勇太さん、狐久里梁山役・南部海人さん、蛇穴健栄役・松浦司さんにスピンオフストーリーに挑む気持ちを聞いた。
ーー今回は“ヒプステ”初のスピンオフということですが、今のお気持ちをお聞かせください。アカバネ・ディビジョンが再び見られるということで喜んでいるファンも多いと思います。
岸本 “ヒプステ”は、『Battle of Pride』のライブ公演が集大成ともいえると思うんですけど、もう一度アカバネ・ディビジョンとしてみなさんの前に出られるのはとても嬉しいです。物語のなかで時を経た設定になっているので、そこをちゃんと感じながらアカバネ・ディビジョンの堂庵和聖として(ステージに)立ちたいと思います。
松浦 アカバネ・ディビジョンはオリジナル・ディビジョンなので毎回、これが最後という気持ちでやっています。そういう意味で今回、また出させてもらえて嬉しいです。
南部 これまで「track.1」、アサクサ・ディビジョンとの「Flava Edition」、そして「Battle of Pride」と、アカバネ・ディビジョンは出ていますけど、今回は久しぶりにお芝居も交えてみなさんにお届けできるのが楽しみです。
ーー最初に3人で顔を合わせたときのことは覚えていますか? そのときの印象は?
松浦 「仲良くなれなさそうだな」と思いました。だから最初は会話とかも全然しなかったですね(笑)。
ーーそれまで共演や交流もなかったんですか?
岸本 ないです。他のディビジョンはけっこう舞台での共演歴があったりされていましたけど、僕らは年齢も違うし、バラバラのところから来ていたので異色感がありました。
ーー最初はけっこうバチバチな感じだったんですね?
松浦 そうなるはずだったんですけど、1週間後くらいには僕、南部くんにピアスを開けて貰っていましたね(笑)。
ーー仲良くなるのが早い(笑)ピアスの穴を開けてもらうってなかなかの親密度がないと任せない行為では?
松浦 ですよね? すぐに仲良くなっていました(笑)。
南部 (松浦)司くんとは一回りくらい年齢が違うんですけど、僕が何かやったら常にツッコミを入れてくれる。そういう関係です。
松浦 僕は嫌なんですけどね(笑)。
南部 ほんとに~? 喜んでくれていると思っていました。僕はtrack.1が初めての舞台出演だったので、ふたりには本当にお世話になりました。当時はコロナもなかったので3人でご飯を食べに行ったり、お茶したりとかもしてましたね。
ーー仲良くなったきっかけみたいなことがあったんですか?
岸本 雰囲気も違うし、やってきたことも違ったので、どういうふうに距離が縮まっていくのかなっていうのはありましたけど、3人とも音楽が好きという最大の共通項があったので問題なく距離は縮まりました。
南部 確かに。
岸本 ふたりのラップを聴けば「仲良くなろうよ」って言わなくても、この人はあのへんを聴いてきたんだろうなとか、こういうのが好きだろうなとか、どんな人間かわかりました。なので、確認したり、特にきっかけもなかったです。
ーーそれってまさにアカバネ・ディビジョンの感じだと思います。
岸本 そうですね。アカバネ・ディビジョンはチームで切磋琢磨していくノリじゃなくて、それぞれ野望があるなかで一緒にいるので、そこは他のディビジョンとは違うかもしれない。僕が演じる堂庵だったら本物の強さを手に入れたいとか。
松浦 それぞれが我が道を行ってるんだけど、周りからみたらひとつのディビジョンに見えている。アカバネ・ディビジョンの感じかも。
南部 それぞれの武器を稽古で見せていくなかで、作品に得意分野を入れていただいているんです。岸本さんなら歌とか、司くんならダンスとか。内容的にはアカバネは悪い連中なんですけど、でも、心のなかでは表現の仕方とか譲れないものが各々にあって、それが作品を通してお客さんに伝わっているのかなって感じます。
ーーtrack.1のことで印象に残っていることはありますか?
岸本 『ヒプノシスマイク』というビッグプロジェクトをはじめて舞台にするということで、僕らだけじゃなく周囲のみなさんのスタートにかけるエネルギーが強かったことを覚えています。トライする気持ちでしたね。やっぱり特別な回です。
松浦 (南部)海人がはじめてだったこともあるけど、4回目くらいの稽古のとき堂庵が喋って、狐久里が喋って、次に俺が喋るっていうシーンがあったんですけど、全然、狐久里がセリフを言わないときがあって、さすがに「このセリフなんで言わないの?」って聞いたら、「え? なんですか? こ、こんなところに僕のセリフがっ!」ってめっちゃ驚いて(笑)。あれは印象深かったな~。自分のセリフがあるのを気づいてなかったという。
南部 あ~、はい。覚えています! はじめての舞台だからと脚本を通しで全部覚えていったんですけど、セリフがあること自体が抜けてて。言われるまでまったく気づきませんでした(笑)。
松浦 それはめっちゃ覚えてる(笑)
ーー《Mix Tape1》は、どんな内容になりそうですか?
松浦 今までなかったような掛け合いがあるので、新鮮なアカバネ・ディビジョンが見られると思います。特にtrack.1から観てくれているみなさんには、これまでとはまた違った感情を抱いてもらえるのではないかなと思います。
ーー今回はイケブクロ・ディビジョンは出演せず、ヨコハマ&シブヤ&アカバネ・ディビジョンによる騒動が描かれるとか?
南部 アカバネが出た「track.1」、「Flava Edition」、「Battle of Pride」は、すべてじりじりする戦いがありましたけど、今回はディビジョン同士のバチバチというよりも、僕たちの日常を見てもらえるのかなと思います。
松浦 確かに今回の脚本を読んだとき、「このセリフはどう言ったらええんやろ?」って思った箇所がありました。そういう意味では今までの蛇穴のイメージとは違う新たな一面を出せるのかなと思っています。
岸本 まだ稽古がはじまっていないので、これから演出的な部分が決まっていくんですけど、堂庵としては一郎(イケブクロ・ディビジョン)との過去があって、時を経ていますからね。彼は彼のなかでの葛藤がありつつ、本物の強さについてずっとこだわり続けている。そこのところを考えながら稽古に入っていけたらなと思います。
ーーアカバネ・ディビジョンは曲もカッコいいですよね? ラップに関してはいかがですか? かなり難しいのでは?
岸本 僕は大変だったり、難しいと感じたことはありません。
松浦 みんな音楽が好きで、普段からラップしていたり、歌を歌ったりしているので、難しいよりも面白いって感覚です。逆に言うとトラックがカッコよくて、歌詞も良くて、リズムもいい、三拍子揃っている楽曲でラップができるって喜びのほうが勝っています。これを「もっともっとよくしていこうぜ!」みたいな気持ちで臨んでいます。
南部 合わせてみて「ここはこうしたらいいね」っていうのはありますけど、基本的にはそれぞれが完成形を持ってやってきて、良いところを盗んだり、合わせたりしていますからね。あと、個人的には僕はずっとKEN THE 390さんの曲を聴いてきたので、好きな人が作った曲を歌えるのがめっちゃ嬉しかったですね。
岸本 本当に特別に何かをするわけじゃなくて、それぞれ培ってきたものを背伸びせず表現することをした結果を見てもらっていると思います。
ーーダンスも“ヒプステ”の魅力のひとつですよね。
松浦 アカバネはめっちゃ踊るんですよ。最初は原作との兼ね合いもあって、どこまでダンスするか? というところで葛藤があったんですけど、シリーズを重ねるごとにダンスもどんどん増えていって、本当にいいものを作るためにみんなが“ダンスのカッコよさ”に挑戦しているんですよね。今回も楽しみにしていてください。
ーー演出の植木豪さんの映像や光の演出には毎回驚かされます。
岸本 今回も期待してもらっていいと思います。僕ら、稽古中は映像とか見れないんで、(植木)豪さんがカッコいいって言っていることはカッコいいんだって信じて稽古をしているんですが、本番では僕らの想像を超えてくるんですよね。
松浦 自分でもイメージはしてるけど、豪さんはその何倍も超えてくる。「ここで映像があるから右手を止めて」って言われて、「これで大丈夫なのかな」って思いながらもそのとおりにやると映像と光でめちゃくちゃカッコよくなっている。あれはもう豪さんマジックです。
ーー今回、楽しみにしていることはありますか?
南部 シブヤ・ディビジョンの面々とはライブでは共演しましたけど、ストーリーとしては関わったことがないので、どういうふうになるか楽しみです!
岸本 ヨコハマとシブヤとアカバネがどう絡むかはお客さんも楽しみにしているところですよね。僕らも脚本は読みましたけど、稽古がはじまってみなさんがどう挑むかで変わってくると思います。なので、あまり役を作りすぎないようにいこうと思っています。特にはじめて一緒にお芝居する方もいらっしゃるので、そこはなんかセッション的な感じでうまく混ざるといいなと思います。
松浦 楽しみですね。
岸本 あと、今回もテーマソングが凄くカッコいいです。やっぱり“ヒプステ”のテーマソングってそれぞれの公演ごとにストーリーやバックボーンがギュッと詰まっているので、そこは楽しみにしていただきたいし、僕らも楽しみにしています。
ーーまだ“ヒプステ”を見たことがない方に対してメッセージをお願いします。
岸本 “ヒプステ”は、作品としてエンターテイメント要素が盛りだくさんで舞台という概念からはみ出ていると思います。本当に今、日本でお届け出来るエンターテイメントのトップクラスじゃないかと思います。それぞれのキャラクターも濃いですし、初めて観る方もきっと推しが見つかると思います。男性、女性、限らずぜひ、楽しんで貰えたらいいなと思います。
松浦 ラップが好きな人は「え? こんな重いラップやってんの?」って思うだろうし、お芝居を好きな人が見てくれたら、「え? ラップって楽しいかも」ってなると思う。ラップ、芝居、ヒプノシスマイク……何か好きなものがひとつでもあれば相乗効果で楽しめる作品です。
ーー相乗効果はありますよね。全方位で楽しめる。
松浦 あと、例えばアニメの舞台をやると、どうしてもできない表現があって、そこが難しいからこそ挑戦するんですけど、『ヒプノシスマイク』に関しては、原作が舞台との相性が凄く良くて、“ヒプステ”でいろんな要素を表現できていると思います。僕らは自信を持ってやり遂げるだけなんで、ぜひ観に来てください。
南部 いきなり今回から観てもらっても楽しめると思います。前回、僕の友だちが原作を全然知らない状態で観て、どハマリして、そこから原作を見るようになったので、何も知らずに来ても楽しめることは保証済みです。もちろん舞台の過去作をチェックしてから来るともっと楽しめるとも思いますけど、まずは気軽に観に来てください。
ーー幕が上がるのが楽しみです。最後にLAWSONに対して一言ありますか?
松浦 一言? なんだろ? LAWSON見ると安心する(笑)。あの青と白を見るとホッとするというか、開いてるだけで安心するんですよね。
岸本 LAWSONのイメージそこ? 僕は稽古に入るとメガサイズのアイスカフェオレを1日に3回くらい買いにいきますよ。
ーーメガサイズってけっこう大きいですよ?
岸本 できればもっとデカいのが欲しいくらい。デザートもけっこう買いますね。
南部 もっちりクレープのチョコのやつ大好き。
松浦 「からあげクン」もついつい買うな~。レッドの辛さが絶妙なんだよな~。
南部 食べたくなってきた。サクサクのも美味しいっすよね?
岸本 じゃあ、帰りにLAWSON寄って帰るか~(笑)。
ーー嬉しいです。本日はありがとうございました。
ライター:高畠正人
写真:村上宗一郎