ロックバンドに人生を賭ける若者たちの姿を描く『from ARGONAVIS』。これまでアニメ、ゲーム、ボイスドラマ、リアルライブと様々なメディアミックスで世界観を広げてきたプロジェクトだが、2021年以来となる舞台版『ARGONAVIS the Live Stage2 ~目醒めの王者と恒星のプログレス~』が、2月18日(土)東京建物Brillia HALLにて幕を開けた。初日公演前に行われたゲネプロ&囲み取材の模様をレポート!
作・演出はシリーズ開始当初からプロジェクトに携わる毛利亘宏が務め、キャストはアニメ&リアルライブと同じメンバーが揃った。普段は声優や俳優、ミュージシャンをしているキャストが組み合わさったときに起きるケミストリーが『from ARGONAVIS』の面白さだ。
会場に入ってまず目をひくのは、ステージに組まれた舞台美術セットとバンドセット。お芝居とライブが同時に楽しめるというのは頭でわかっていても、いざステージを見るとワクワクしてしまう。
大きなフェスに出るため上京してきた函館の大学に通う5人組ロックバンドArgonavis(アルゴナビス)と、札幌を中心に活動しているGYROAXIA(ジャイロアクシア)。互いにライバル心を燃やしながらも、刺激を与え合い、道を切り開いていく。
舞台前半で描かれるのは、カリスマボーカル・旭那由多(小笠原仁)率いるGYROAXIAの結成秘話。高校時代から妥協を許さず、孤高の存在だった那由多の元に、里崎賢太(橋本真一)や美園礼音(真野拓実)が集い、バンドの基礎を固めていく。
那由多(小笠原仁)からの高い要求に必至に応えようとするドラマー界川深幸(宮内告典)と、彼の悩みに飄々とした答えを返しながらも、芯をつく曙涼(秋谷啓斗)の掛け合いは、GYROAXIAの強固なリズム隊の秘密を知れたようでとても印象に残るシーン。
何度も何度も那由多(小笠原仁)からダメ出しされ、苦戦するスタジオリハーサルの模様。私達は普段、レコーディングされた完成された曲しか聴けないが、今回の舞台ではGYROAXIAの“あの曲”が、いかにして出来たかの過程を見ることができる。それは見てはいけないところを覗いているような不思議な気分。それ故に、完成した楽曲に込められたギターソロやリフ、ドラムのリズムパターンを改めて聴くと、各楽器の音が今までと違った響きを持って受け止められ、曲への解像度が高まる。
一方、Argonavisは、上京後のバンドの方向性についてメンバー間で話し合い、ボーカルの七星蓮(伊藤昌弘)、ギターの五稜結人(日向大輔)、桔梗凜生(森嶋秀太)らがそれぞれの気持ちをぶつけ合っていた。
Argonavisが5人でいなければいけない理由は、前作で描かれていたが、本作ではそこを更に一歩踏み込み、的場航海(前田誠二)や白石万里(橋本祥平)らがいかにバンドにとって重要なピースであるかが改めてわかるようになっている。練習でのなにげない一言に込められた、メンバー同士の絆が愛おしくなるシーンだ。
また、本作では大手レコードレーベルの社員でGYROAXIAを発掘した摩周慎太郎(益永拓弥)と、謎の男・古澤嘉寿樹(井俣太良)が、両バンドの鍵を握る人物として登場し物語にアクセントをつける。特に古澤役の井俣太良は、演出の毛利亘宏の盟友ということもあり強烈な印象を残す。
“ナビステ”の最大の魅力であり、武器でもある生演奏でのライブシーンは、実際に彼らがロックバンドとしてリアルライブを行ってきた成長が遺憾なく発揮され、楽器を持った瞬間から一気に熱狂のライブハウスへと空気を変えてしまう。芝居からライブシーンへのシームレスな繋がりは、“ナビステ”にかけられた魔法の最たるものだろう。
七星蓮(伊藤昌弘)、旭那由多(小笠原仁)、ふたりのボーカルは、Brillia HALLという大きな会場でよく映え、一挙手一投足が両バンドの音を体現していて惹き込まれる。
個人的に楽しみにしていたメンバー演奏によるBGMも、なんの違和感もなく、メンバーがそれとなく楽器を演奏し、生演奏をする贅沢な趣。改めて、演者がBGMが奏でることに贅沢を覚える。
アニメやゲームではない、生身の人間が演じるからこその言葉、そして音。今回の舞台で、毛利亘宏が紡いだセリフは、『from ARGONAVIS』を追ってきた人間には大いに突き刺さるだろう。この舞台を経て、物語は2023年夏リリースの新作アプリゲームへと繋がるという。まだまだ『from ARGONAVIS』プロジェクトは私たちを楽しませてくれそうだ。
尚、カーテンコールでは日替わりで、本編で演奏しなかった曲を披露するアンコールライブも行われる。いったいどの曲が聴けるのか?本編終了後も見逃せない!
舞台『ARGONAVIS the Live Stage2 ~目醒めの王者と恒星のプログレス~』は、2023年2月24日(金)~26日(日)まで、兵庫県AiiA 2.5 Theater Kobeにて上演される。
囲み会見
■意気込み
古澤嘉寿樹役 井俣太良
新しいキャラクターとして登場させていただくことになりました。この作品の醍醐味は、ミュージシャンを目指す若者を演じる彼らそのものが、演奏し、歌うところだと思います。僕はその背中を押せる存在であればなと思っております。新しい風を起こせればと思っておりますのでご期待ください。
白石万里役(Argonavis) 橋本祥平
今年は年明けからライブをさせていただいていて、気持ちが切れることなく稽古に入りました。今日までずっと“白石万里”と一緒に歩んできた感じですね。今は早く舞台に立たせてくれという感じです。稽古中にもいろいろ発見があったり、自分自身でもまだまだ知ることがあるので、お客さんも新しい発見があると思います。いろいろなジャンルから集まってきた僕らだからこその唯一無二の舞台をお楽しみ下さい。
摩周慎太郎 増永拓弥
今回からの参加なので、僕が加わることによっていい変化を起こせるように頑張っていきたいと思っています。アニメだったり、ゲームだったり、全てにリスペクトをもって演じたいと思いますので、最後までみんなで走り抜けられたらなと思います。よろしくおねがいします。
界川深幸役(GYROAXIA) 宮内告典
前回の“ナビステ”から1年半。その間、ライブをやってきて、そこで築かれた絆だったり、仲の良さがあるからこそ、この舞台を作れると僕は思っています。個人的にはドラマーなので、演奏で皆を引っ張っていけたなと思っております。演技も頑張ります。
■みどころ
桔梗凜生役(Argonavis) 森嶋秀太
見どころは、お芝居とライブパートが交互に織り混ぜられて、ひとつの作品に仕上がっているところですね。僕らは元々、声優をやったり、ライブ活動をしたりしてきましたが、舞台をやることによって、よりキャラクターへの理解が深まったと思います。そこで得たものをライブやゲームに反映して相乗効果が生まれているのが今です。今回の“ナビステ2”では、それらの集大成をみんなで発揮できるんじゃないかと思っているので、皆さん楽しみにしていてください。
的場航海役(Argonavis) 前田誠二
『from ARGONAVIS』という物語は、もう苦難・試練・難行の連続でして、壁にぶちあたり、悩み、つまずき、這いつくばって続けています。そういったことはバンドをやられていたり、芸能関係のお仕事をされている人にとっては共感できるところも多いんじゃないかなと思います(笑)。今回は、そんな環境の中で、Argonavis、GYROAXIAのメンバーたちが、試練にどう悩み、そして受け入れ、乗り越え、折り合いをつけていくのか? そういったところが見どころになると思います。ぜひ最後まで楽しんでいただけたらなと思います。
曙涼役(GYROAXIA) 秋谷啓斗
アニメやゲームは切り取られたところで演技をするのですが、前回の“ナビステ”をやったことで、キャラクターへの向き合い方が変わりました。例えば、“彼らは日常だったらこういう動きをするだろうな”という普段の動きを想像するようになりました。あれから1年半が経ち、また、映画やライブなどに参加することで、自分が演じているキャラクターとの距離も縮まっている気がしています。今回は役者としての僕たちの距離感というのも楽しんでいただけたらと思います。
美園礼音役(GYROAXIA) 真野拓実
今回の作品はけっこうシリアスな内容になっているなと感じています。そのなかでもときどき吹く、爽やかな風。「フフッ」と笑えてしまう若い彼らの青春ストーリーが素敵です。微笑みながら、彼らの成長を見届けていただければと思っております。
■お客様へのメッセージ
五稜結人役(Argonavis) 日向大輔
今回の舞台を通じて、いろんな問題にぶち当たっても、それでもみんなで乗り越えていくことをキャラクターと一緒に成長している実感があります。キャストとしてもすごくリンクしてる部分がたくさんある作品となっています。気になった方はぜひ足を運んでいただけると幸いです。
七星蓮役(Argonavis) 伊藤昌弘
自分としては、お芝居をして、バンド演奏をするのが、当たり前だと思っていたんですけど、いざ舞台に立ってみると、改めてこのプロジェクト、そして、このメンバーがいるというのは強みなんだなって再確認しました。お芝居と音楽をどっちもどっぷり使わせて貰えるのは、ファンの皆さんが応援してくだっているからこそできているんだと思います。今回の公演は10公演あるので、1公演1公演をレベルアップして、ひとつも同じ公演がないように、皆さんにお届けしますので、ぜひぜひ一緒に楽しんでください。
里塚賢汰役(GYROAXIA) 橋本真一
今作はお芝居も演奏もあるということで、今までの活動の集大成みたいなところがあると感じています。同時に、これからまた映画だったり、新アプリが控えていて、今後の活動の布石のようなポイントも今回は要素としてあるなと感じています。なので、今まで応援してくださっていた皆様とは、さらに近い距離感で一緒に歩んでいけたらなと思いますし、今回、はじめて見てくださった方にとっては、ここで手を繋いで、ここから歩んでいけたらいいなと思います。皆さんにとってのいいきっかけとなる作品になりますように。また、僕たちと一緒に盛り上がって、この作品を盛り上げていってくれたら嬉しいなと思います。
旭那由多役(GYROAXIA) 小笠原仁
名実ともにこのメンバーじゃないと本当に成り立たない舞台が“ナビステ”です。今回、“2”をやれるのは、これまでこの作品を応援してくださった皆様がいらっしゃったからだと思います。その応援に今回、僕らがどれだけ応えられるか? どれだけシャカリキに自分の限界を高めていけるか? そういうチャレンジをさせていただける舞台だと思っています。今、本当にいい形で積み上がっていると感じていますので、ぜひとも皆様、楽しんでいただけたらと思います。
取材・文/高畠正人