舞台『吸血鬼すぐ死ぬ』|山本一慶インタビュー

©盆ノ木至(秋田書店)/舞台『吸血鬼すぐ死ぬ』製作委員会 2023

原作の笑いに人間が演じるからこその笑いを加えたい

史上最弱の吸血鬼・ドラルクと吸血鬼退治人(バンパイアハンター)・ロナルドのハチャメチャな日常を描く『吸血鬼すぐ死ぬ』(作・盆ノ木至)。現在、TVアニメの第2シーズンが放映中の人気ギャグマンガだ。2023年6月より上演される舞台版では、劇作家・村上大樹を脚本・演出に迎え、山本一慶と鈴木裕樹がダブル主演を務める。ドラルク役へのオファーに山本は出演を即決したという。


「なんの迷いもなく“よろしくお願いします”と返答しました。原作を読ませていただいたのですが、疲れた体を癒やしてくれる笑いがあって、いい意味で吸血鬼のイメージを裏切ってくれるキャラクターたちがたくさん出てくるのが楽しいんです。特にゼンラニウム(股間にゼラニウムを咲かせた全裸の吸血鬼)が出てきたエピソードは衝撃でした」

山本が演じるドラルクは、恐ろしい雰囲気を醸し出しているが、実は小さなダメージですぐに死んでしまう最弱な吸血鬼。


「すぐ死ぬっていう設定が面白いですよね。僕も物音とかは苦手なので、ちょっとした音でも“わー!びっくりした”と声が出てしまいます。たぶん、ドラルクだったら100%死んでます。通常、キャラクターに対してこういう人間像だよなって一度思ってしまうと、そこからはイメージが変わることがあまりなかったんですけど、ドラルクはイメージの振り幅が広いというか、無限の可能性を秘めたキャラクターだなと思っています」

ダブル主演となる鈴木裕樹は吸血鬼退治人・ロナルド役。ふたりの掛け合いは見どころだ。


「鈴木さんとは今回が“はじめまして”です。過去に他の作品で同じ役をやっていたというご縁もありますし、先日、お話したときにお芝居に関してすごく信頼できる方だなと感じたので、稽古が始まるのを楽しみにしています」

ドラルクの“死にざま”も気になるところ。原作では一瞬で塵になってしまうが、それはマンガやアニメの表現ならばこそ。果たして人間が演じる場合、どんな描写になるのだろうか。


「そこは僕も楽しみにしているところです。こんな言い方はどうかと思いますけど、僕は相当、死にたいんですよね(笑)。ただ、どうやって砂になるのかは現実問題としてハードルが高いです。どうするんでしょう?でも、意気込みとしては数分に1回は死にたいですね(笑)」

原作では個性的な吸血鬼や退治人たちが、凄まじいギャグの応酬を繰り広げる。笑いがふんだんに散りばめられた楽しい舞台になりそうだ。


「笑いってものすごく緻密な計算のうえに成り立っていると思うので、演出の村上大樹さんが示す笑いの方向を敏感に捉えながら、役者同士の信頼関係を築いて、真摯に作品をつくっていけたらと思っています。原作の笑いに加えて、人間が肉体で演じるからこその笑いをプラスして、皆さんが笑顔に包まれたら僕は幸せです。期待してぜひ観に来てください」

インタビュー&文/高畠正人

 

※構成/月刊ローチケ編集部 3月15日号より転載

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【プロフィール】

山本一慶
■ヤマモト イッケイ
’89年生まれ。ミュージカルや舞台を中心に活躍中。2021年にシェイクスピア作品「夏の夜の夢」で演出家としても活動を開始。