2013年5月に廣嶋玲子・作、jyajya・絵のタッグで刊行した人気の児童書シリーズ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」。2023年4月に最新刊である19巻が発売され、児童書として異例の420万部を突破している(2023年4月現在)。また、世界各国でも翻訳され、国内にとどまらない人気を誇っている。
2023年8月17日(木)からは、夏休み!オン・ステージ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」が開幕。また、演劇界を盛り上げるためにネルケプランニングが発足した「WELCOME KIDS PROJECT」の一環で、終演後には子供達向けのスペシャルカーテンコールも行われる。開幕に先駆け、“ぜにてんプレイヤーズ”の一人、坪倉康晴にインタビューを行った。
――まずは出演が決まった時の思いを教えてください。
「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」という作品は知っていましたが、ちゃんと本を読んだり、アニメを観たりしたことはありませんでした。舞台ではどんな世界観で表現されるのか気になったのと、アニメは1話ずつ完結しているので、舞台はどの話を持ってきてどんな形で作るのか。ワクワクしましたね。
――ちなみに、改めて原作やアニメに触れてみた感想はいかがでしょう
こんなに現実的な作品なんだと思いました。人の裏の性格や嫌なところも良いところも描かれていて、子供向けではあるけど大人が見ても見応えがありますよね。世界はこうで、こういうことをされたら人は傷付くんだよ、とか、そういうことをちゃんと教えてくれる。勉強になるアニメだと思いました。
――そのアニメを元にした舞台の台本を読んだ印象は
オムニバス形式で、Wキャストの響(田中悠貴・令旺)がいろんな物語を見ていきます。最初は「どうしてこの作品が抜粋されているんだろう?」と思いましたが、読んでいくと「なるほど」と思いました。
――公式Twitterであらすじも紹介されたので、ネタバレにならない範囲で演じる役について教えてください
僕がまず演じるのは「おもてナシ」に登場するタクシー運転手です。めんどくさがり屋で欲深いキャラクターで、決していい人ではないです。多分楽して生きたい、楽してお金がもらえたらラッキーという考え方。そんな彼が「おもてナシ」を食べて、誰にでもおもてなしができるようになっていきます。食べる前と後ですごく差があるので、そのギャップを楽しんでもらえたら。役作りをこれから突き詰めていきたいと思います。 あとは、「おっかさん仮面」では仮面を被って“おっかさんビーム”を出したり、コミカルなシーンもたくさんあるので楽しみたいです。ちゃんと芝居をする部分と楽しんで思い切りやっていい部分がたくさんあるので、老若男女問わず楽しんでいただけると思います。
――稽古場エピソードがあったら教えてください
託児所みたいな感じです(笑)。まだ稽古に合流して間もないですが、子供達が可愛いです。多分子供達自身も楽しみながらやってるからだと思うんですが、本当に元気で稽古中も疲れ知らず。大人メンバーも優しい方ばかりで、ずっとみんなでわちゃわちゃしているカンパニーです。
――こんなに子役の皆さんがいる舞台は初めてだと思いますが、普段の稽古場との違いはどんなところに感じますか?
大人メンバーだけの舞台だと芝居のディスカッションを結構するんです。もちろん、子供達もしっかりお芝居していますが、子供達の一番の取り柄は元気。そしてその元気が、この「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」という作品に合っていると思うので、たくさんの元気を舞台上に乗せて楽しいエンターテインメントステージを作っていこうと思います。そこが普段と違うと感じます。
――小林顕作さん演出作品も初だと思いますが、演出を受けてみてどうでしょう
なんでもやらせてくれる方です。まだ僕は稽古に参加して日が浅いですが、特にエンターテインメントとしての見せ方が本当にお上手だと感じるので、いろいろ試してみたいなと思います。あと、僕はタクシー運転手役でラップを歌うんですが、その曲を顕作さんは10分くらいで作ったらしいんです。その曲もすごく面白くて、すごいなって思いました。
――3回目のWELCOME KIDS PROJECT作品への出演ですが、このプロジェクトならではの楽しさはありますか?
エンタメ要素が強い作品が多いので、稽古の中でもかなり自由にできて演じている方も楽しめます。本番が始まると客席にお子様も多いので、いつもの舞台とはまた違う光景が見られますね。子供達の笑顔を見てこっちも笑顔になるというか。お客さんの反応が嬉しいのはどの舞台でも同じですが、子供達って意外なところで笑ったりするんですよ。僕らが考えた「これはウケるだろう」ってところはウケず、思ってもいないところでウケたりする。すごく面白いなと思いますね。
――自分だったらどんな駄菓子を買いたいか教えてください。
頭がよくなる食べ物……いや、やっぱり「それを食べたらずっと疲れずにいられる駄菓子」ですね。性格とかには影響しない効果がいいなと思います。
――公式の動画と被りますが、夏にぴったりのお話がたくさん登場するので、夏休みの思い出を教えてください
せっかくなので小さい頃の話にしますね。夏休みは家にいることがなくて、虫取りや川釣り、公園で野球などをしていました。あとはやっぱりお祭りです。毎年、地元の学校のグラウンドで行われるお祭りに行って友だちとみんなでワイワイ遊ぶのが一番楽しかったです。
――お祭りといえば屋台ですが、どんな屋台が好きでしたか?
やっぱりくじ引きじゃないですか。でも子供達にはオススメしないです(笑)。大人になってから考えると、目当ての商品を当てるのはなかなか難しいなと改めて感じたので。あとは金魚すくいとか、型抜きも大好きでした!
――ネタバレにならない範囲で、舞台全体の見どころを教えていただけますか?
基本的に、歌のシーンはノってもらいたいなって思います。そういう雰囲気じゃない曲もありますが、手拍子をしたり水泳っぽく手を動かしたり、体を動かせる部分は一緒にやっていただいて、みんなで楽しめたら嬉しいです。
あと、個人的に好きなのがアニメのオープニングの曲でもある「奇想天外ふしぎをどうぞ」です。この作品は結構謎めいたストーリーもあるんですが、それにあった曲調なんです。明るく元気!というよりは「どんな世界なんだろう?」と引き込まれるようなメロディーなので、ステージ上でそこも注目してほしいですね。
――ご自身がメインのパートに関しての見どころも教えていただけますか
二面性のあるキャラクターで、良い面も悪い面も両方見られます。悪い面で嫌いにはならないでほしいってのはありますね(笑)。あとは、僕が歌うのがおそらく作中で唯一のラップなんです。「おもてナシ」の力で気分が上がって、いろんな人を目的地に送るときにラップでいろんなセリフを喋る。お客さんと一緒に盛り上がる曲ではないかもしれませんが、唯一のカラーがあると思いますね。
――初共演の方も多いと思いますが、皆さんの印象はどうですか
佐川大樹くんはすごく前に共演したことがありますが、他の皆さんは初めましてです。大樹くんは結構落ち着いているんですが、(桑原)勝と(広井)雄士と(酒寄)楓太はずっとわちゃわちゃしてて「康晴くーん!」って感じできてくれます。
――オムニバス形式ですが、作中での皆さんとの絡みはどれくらいあるんでしょう?
結構みんなと絡みますね。「おもてナシ」のラップシーンでは、雄士とザン(ヨウコ)さんと酒井(敏也)さんがタクシーのお客さんをやってくれるんですが、それぞれタイプの違うお客さんで面白いところがあって、酒井さんのめちゃくちゃ可愛いセリフとかもあるんです。ぜひ注目してほしいですね。
――今回は、本編終了後にスペシャルカーテンコールもあります
そうなんです。観に来てくれた子供達に舞台に上がってもらって「はにゃ○満点、銭天堂。」を一緒にダンスをするカーテンコールがあります。振りも僕らがちゃんと教えます。大人の方々も客席から一緒に楽しんでいただけたら。
――最後に、観にくるお客様へのメッセージをお願いします
夏休み!オン・ステージ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」のカンパニーは、老若男女に楽しんでいただける作品を作っています。一緒に盛り上がれるシーンもたくさんあります。子供達も多くて、カンパニーの仲の良さも見えると思うのでそこも楽しんでほしいです!
インタビュー・写真/吉田沙奈