1998年より「週刊少年ジャンプ」で連載を開始し、シリーズ累計発行部数8400万部を超える冨樫義博の人気漫画『HUNTER×HUNTER』。父に会うため、父と同じハンターを目指して旅に出た主人公・ゴンが、キルアやクラピカ、レオリオといった仲間と出会い、様々な試練に立ち向かう物語は世界中で愛されている。
新たな舞台化第二弾となる『HUNTER×HUNTER』THE STAGE 2は、クラピカと因縁のある盗賊グループ・幻影旅団が登場する「ヨークシンシティ編」が中心に描かれる。稽古場取材では幻影旅団のシーンをメインに、物語の中盤を見ることができた。
まだ衣裳やヘアメイクはついていないものの、クロロ(太田基裕)率いる幻影旅団メンバーが揃うと圧巻。落ち着いた雰囲気の中にカリスマ性を感じさせる太田、1作目から圧倒的な不気味さと強さを見せるヒソカ(丘山晴己)をはじめ、並んでいるだけでキャラクターらしさが見えるキャストの姿に惹き付けられた。
今回の物語の中心となるクラピカを演じる小越勇輝は冷静さと情の厚さを緩急のついた芝居で見せ、クラピカの抱える事情や覚悟の大きさを表現。ゴン(大友至恩)とキルア(阿久津仁愛)、レオリオ(近藤頌利)のシーンは、息のあったやり取りでホッと和ませてくれる。
多くの登場人物は、アンサンブルキャストを中心に兼役で担当。『HUNTER×HUNTER』の世界やバトルの規模感を伝えるための様々な工夫がされており、完成した作品に対する期待とワクワクが高まっていく。
そして、『HUNTER×HUNTER』の魅力の一つが、舞台では今作から登場する“念能力”と言っていいだろう。作中では個性的な能力とアイデアで自身や仲間のポテンシャルを引き出して格上の相手に勝利することもあり、単純な戦闘力だけでは測りきれない駆け引きや先の読めない展開が魅力だ。
次々に繰り広げられるバトルは息のあった殺陣に映像や照明を組み合わせて作っていくそう。クラピカの鎖やシズクのデメちゃんなど、念能力に関する一部の小道具は完成しており、クオリティも申し分ない。
そして、伊勢大貴演じるウボォーギンが大勢の敵を薙ぎ倒していく様子、クラピカの隙のない戦い方、アンサンブルキャストによるアクロバットなど、殺陣だけでも迫力満点。映像などの効果が加わった本番では、手に汗握る能力バトルが見られるに違いない。
今回は階段と盆が組み合わさったセットで、街中やホテル、アジトなど様々な場所と、特殊能力を使ったバトルの躍動感を表現。演出の山崎 彬は、キャストの安全に配慮し、観客の見やすさも確認しながら、原作に忠実かつ自然に見えるようにキャラクター同士の距離感や立ち位置を細かく調整していく。
物語としてはシリアスなシーンが多いが、幻影旅団に挑むクラピカの事情を知って思いやるセンリツの優しさ、クラピカを助けようと奮闘するゴン・キルア・レオリオの友情といったあたたかい場面や、幻影旅団メンバーのユーモラスなやり取り、大変な事態の中でも気ままに振る舞う、ノストラード組のボスであるライトの娘・ネオン(櫻井佑音)の明るさなど、コミカルなシーンも散りばめられている。
原作をコンパクトにまとめつつ、物語としての面白さ・バトルの熱さ・キャラクターの心情を丁寧に描いていると感じた。原作ファンはもちろん、舞台で初めて『HUNTER×HUNTER』に触れるという方も楽しめる仕上がりになっているのではないだろうか。
また、稽古の合間にキャスト陣が雑談で盛り上がっていたり、センリツ役の岩田弘子がフルートを実際に鳴らすと拍手が起きたり、ヒソカ役の丘山が取材陣のカメラに向かってポーズを決めてくれたりと、和気あいあいとした雰囲気が印象的。
キャラクターが多いため、時には舞台上でポーズが被って演出の山崎から「仲良しだな(笑)」と指摘されることも。キャストからも「こう動いてみたらどうだろう」「ポーズはこうしてみる?」と意見が出て、どんどんブラッシュアップされていく。場面稽古と並行して進んでいる歌稽古もかすかに聞こえ、芝居やバトルをさらに盛り上げる楽曲も楽しみになった。
本作は3月16日(土)より東京・天王洲 銀河劇場で開幕。4月6日(土)からは、大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで大阪公演も行われる。
取材・写真/吉田 沙奈