舞台「サイボーグ009」植木 豪×七海ひろき インタビュー

石ノ森章太郎の代表作の一つ「サイボーグ009」。誕生60周年を記念した初の舞台が、5月18日(土)より東京・日本青年館ホールで上演される。演出は植木 豪、脚本は亀田真二郎。009/島村ジョーを七海ひろき、仲間のサイボーグ戦士を天華えま(声の出演)、高橋駿一、音波みのり、里中将道、桜庭大翔、酒井敏也、川原一馬、Toyotaka。ギルモア博士を大高洋夫。彼らの前に立ちはだかる0010/プラス、シキを滝澤 諒、0010/マイナス、リクを相澤莉多、スカールを中塚皓平が務める。
稽古も佳境に入る中、植木 豪と七海ひろきにインタビューを行った。

――現時点での手応えはいかがですか?

七海 すごくあります。今は全部やることがわかっているので、あとはお客さんに早く見てもらいたい。みんなめちゃめちゃかっこいいです!

植木 みなさん稽古初日からキャラクターを自分の中にちゃんと昇華させ、舞台ならではのゼロゼロナンバーサイボーグを見せてくれています。パフォーマンスもお芝居も素敵で、手応えはすごくありますね。

――お互いの印象、一緒にものづくりをした感想はどうでしょう?

七海 豪さんの演出作品をいくつか拝見し、いつかご一緒できたらと思っていたので、すごく嬉しかったです。演出の方って、「教えてもらう人」という先生のように思っているからか、キリッとしたイメージがあるので最初は緊張しましたが、豪さんは全部ポジティブに持っていってくれる方。それぞれの個性を活かしてくれるので稽古場が楽しいです。そんなお人柄なので、みんな「豪さんについていきます!」って感じ(笑)。初めましての人ばかりでしたが、そう感じないアットホームな雰囲気がありました。

植木 ピリッとしてかっこいい方なので、正直ちょっと怖いのかなと思っていました。

七海 お互いに(笑)。

植木 そう(笑)。オーラがすごくて緊張していましたが、とても優しい。こういう方が座長だとこんなに素敵な空気になるんだなと感じますし、こういう方を応援していたら、ファンの方も幸せだろうなと。お客さんに素敵なものを届けたいという思いに他のみんなも引っ張られて、カンパニーがまっすぐ進んでいると思いますね。

七海 心根もパフォーマンスも素晴らしいメンバーがそろっていますよね。あと、豪さんの演出はすごく的確。私は難しい言い方をされると考え込んでしまって、変な方向に行ってしまうこともあるんです。豪さんは迷いなく「これがかっこいい」と言葉にしてくださるのがいいなと思います。

――七海さんが演じていて感じる009/島村ジョーの魅力、植木さんから見た印象は?

植木 ジョーが目覚めたところから物語がスタートしますが、みなさんが009と同じ気持ちで見られる舞台だと思います。それは七海さんのまっすぐな表現あってのこと。「ここでこう見せたい」という感情がビシビシ伝わってくるので、演出をしている僕が教えてもらっていることも多いです。七海さんが演じることで台本の強さがさらに出てくる部分もたくさんあり、気付きを元に修正しているところ。めちゃくちゃかっこいいです。

七海 改めて言われると恥ずかしいですね。でも嬉しいです。

植木 みんなからもすごくリスペクトされています。

七海 本当ですか?稽古場でたくさん失敗して、できないことをみんなに教えてもらっているので、心配されているだろうと思っていました。

植木 いやいや。

七海 一人ひとりの技術も高いし、表現に対する思いもすごくある。お互いに高めあっている感覚があります。

――演じる上でこだわっている部分はどこでしょう?

七海 今回の作品は、ただの人間だった島村ジョーがサイボーグになる段階。気持ちの変化を表現できたらいいなと思っています。普通の人だと、かなり迷う状況だと思うけど、ジョーは順応性が高くて、「みんなと一緒に戦うぞ!」という思いがどんどん強くなっていく。今まで孤独で心を許せる人がいなかったから、「俺たちは兄弟だ」という言葉に惹かれ、同じ境遇のメンバーを大事にしたくなったんだと感じながら演じています。

――七海さん演じるジョーの魅力を一言で表すとしたら?

七海 石ノ森章太郎先生が描かれた島村ジョーはすごく愛情深い人。敵であっても境遇などをわかった上で向き合う、正義と愛情の人だと思います。

植木 002/ジェット・リンクの「みんなのいいところが全部入ってるのがお前だ」という一言に集約されていると思います。全員の気持ち、敵の気持ちさえわかっているのがジョー。七海さんもそういう方だと、見ながらいつも思っています。

――舞台版の見どころを教えてください

植木 映像を使っていても、一番見せたいのは人。フィジカルや熱量が板の上から飛んでくるのが大事だと思っているし、現時点でそういう作品になっています。この間もみんなと話しましたが、改造された人が自分の体からマシンガンを打つ時、本当はすごい衝撃があると思う。そういった部分を役者として見せてもらいたいと伝えたらみんなすごく表現してくれました。さらに熱量が上がり、舞台でやる意味があると感じています。

七海 豪さんが「稽古場だと何が起きているかわからない部分があるかもしれないけど、機構などが加わるとかっこよくなる。信じてくれれば大丈夫」と言ってくださいました。舞台で表現できる最高のものが全て組み込まれていると思います。映像は同じものを使うので何回見ても変わらないけど、そこにすら「今日は違って見えたかも」という色を添えられるのが人間。みんなのパフォーマンス、心意気などが総合的に見どころになると思います。

――お気に入りのシーンはありますか?

七海 悩みますが、ゼロゼロナンバーの紹介シーンです。とてもかっこいいし、作中でも全員に見せ場がある。何も知らずに見にきても、帰る頃には全員の名前と能力がわかるようになっているはずです。

植木 子供の時に好きだった気持ちに立ち返って、この作品の魅力を描いています。9人全員が違う能力を持っていて、9人で一つのキャラクターみたいな作品って当時なかったと思う。それが見られるシーンが好きだし、お客さんにもワクワクしてもらえたら嬉しいです。

七海 能力をここまで考えるのがすごい。原作の力を感じますよね。

――アフターイベントも種類豊富です

七海 回によってアクションもあればトークもあります。トークイベントではいろいろな稽古場トークが出てきたり、役だけじゃなく本人の魅力も伝わったりすると思うので楽しみにしていただきたいです。お見送りの回もあるので、幕が開いてから劇場を出るまでの全部を一つのエンターテインメントとして楽しんでいただけると思います。

植木 七海さんが「来てくれる方に楽しみをプレゼントしたい」という思いで素敵なイベントを考えてくださっているので応えたいです。何回観にきても楽しいだろうから、そこも推しポイントですね。

――楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします

植木 「サイボーグ009」を見たことがない方も、大好きだった方も楽しめる作品になっていますし、今の世の中だからこそ響くメッセージがあると思います。キャッチーな作品ですが深いお芝居も見られるので、楽しんでいただけたら。

七海 キャスト一人ひとりが核を持って舞台に立っているので、稽古場でも目が足りません。「もう一回見たい!」と思ったらぜひ観てほしいですし、配信もあります。観た方にもサイボーグのみんなのように仲間や周りを信じ、頑張って、日々の生活に潤いを感じてもらえたら嬉しいです。とにかくかっこいい舞台なので、ぜひ観にいらしてください。

※石ノ森章太郎の「ノ」の字は、約60%縮小が正式表記。

取材・文/吉田 沙奈
Photo/篠塚ようこ