ラディカルな笑いを求めてたら一周して新喜劇になった 明日のアー大北×金井球×ハチカイ警備員

俳優・非俳優が入り乱れてラディカルなコントを探求してきた「明日のアー」がここで突然新喜劇の枠組みを導入した「明日のアーの新喜劇『親切な寿司屋が信じた「3000万あるんですけど会ってもらえますか?」』」を3月28~30日に浅草木馬亭で上演するという。

稽古がどんどんと進んでいく中、今回明日のアーに初出演となるお笑い好きミスiD2022グランプリの金井球、お笑いトリオ「ハチカイ」や大喜利ライブで活動する警備員、アー主宰の大北栄人の3人が本公演の見どころをお届け!

 

対談の全編はこちらから!

 

大北「お二人は明日のアーに参加してみてどうですか?」

 

金井「すごく難しいんですけど、稽古が面白すぎて。毎回めちゃくちゃ楽しいです」

 

大北「普段から俳優をやっているわけじゃない人も多いですからね。よシまる(シン)さんとか、稽古から面白いですよね」

 

金井「よシまるさん面白すぎる!(笑)」

 

警備員「僕も何回か明日のアーを観せていただいて、あのセリフ回しとかを客席にいてもすごく食らったのに、稽古場で20cmの距離で見ると『なんて巨大なキャラなんだ……!』って思いました(笑)」

 

大北「警備員さんが芸人さんの視点で明日のアーを見てるのが面白いです。八木(光太郎)くんに関して『言葉や身体にウケがパンパンに詰まっていて、どこをいつ刺しても弾けるので気持ちが良いです』とツイートしてたり」

 

警備員「舞台上の八木さんは存在そのものがめちゃくちゃ大きいボケじゃないですか。ツンって刺したらマリモ羊羹みたいに弾ける感じなんですよ。あと、ゲームのチュートリアルみたいに八木さんのどこにツッコめばいいか、赤く光って見えるんですよね」

 

大北「ははははは!(笑)あれはケミストリー生まれてますよ。我々の稽古場に芸人さんがやってきたら爆発したっていう。あれは面白い。見てほしいなあ。金井さんもならではの面白い役をいろいろやってもらってます」


金井「私はどういう身体で舞台にいればいいのかわからなくて」

 

大北「俳優ではないし芸人でもないし、ということですよね。明日のアーは金井さんみたいな人ばっかりだったんですよ。藤原(浩一)くんとか、何の訓練もしてきていない人がいっぱいいて。それが9年目になって、大きな声が出るようになってきたりしてますけど。あんまりうまく芝居しようとしなくてもいいんじゃないですかね。舞台から客席の一番後ろまで10mくらい離れてるんで、何言ってるのかがわかればいいと思います。大きな声出してれば大体面白いですよ」

 

警備員「大きな声は本当に大事ですよね」

 

大北「八木くんとか高木(珠里)さんとか、めちゃくちゃでかい声出ますからね」

 

警備員「もう『笑え!』っていう暴力ですよね(笑)」

 

 

大北「だんだん俳優じゃない人らも声が大きくなってきたりして見やすい舞台になってきたんですけど、ここにきて高木さんから『普通の演劇だと、他人がセリフ言ってるときに動かないよ』ってアドバイスされてましたね」

 

警備員「小学生が注意されてるみたいな(笑)」

 

金井「今までの明日のアーはそれがOKだったんですか?」

 

大北「気にしたことなかったんですけど、それで見にくかったのか…と思いました(笑)。目には見えない演劇のルールってあるんですよね」

 

警備員「普段はトリオでコントやってるので立ち位置はそんなに気にしないんですけど、明日のアーは立ち位置をすごく意識してやっていくので新鮮です」

 

大北「演劇ならではの。特に今回は新喜劇っていう枠組みがあるんで、システムもストーリーもわかりやすいから見やすくなってると思うんです。八木くん演じる親切な寿司屋がただただ詐欺に遭う話ですから(笑)。でも、みんなで話しながら稽古を続けていくうちに、いろんなモチーフが潜んでることに気付いたり」

 

警備員「そこは演劇の面白さでもありますよね。反射的に笑うこともできるし、前のめりで考察してもいいし。幅広く見てもらいたいと思いますよね」

 

大北「明日のアーは演劇の文脈だし、警備員さんはお笑いだけど新喜劇とは違うし、いろんな要素が混ざってる状態がどうなっているのか見にきてほしいですよ。今回はこれまでの明日のアーのギャグのベスト盤でもありますが、金井さんのお気に入りはどれですか?」

 

金井「カニカマ(明日のアーvol.8 本人コント公演『カニカマの自己喪失』)でやってた、高木さんが『乗りな!』って言うやつがずっと面白くて、そこに参加できてるのが超楽しいです。あれはなんなんですか?(笑)」

 

大北「なんなんですかね(笑)。アニメにああいう姉御肌のお姉さん出てくるよな、っていう。あれってみんなのどういう憧れなんですかね」

 

警備員「記憶にはあるけど、でも具体的に誰なのかは思い浮かばない(笑)」

 

金井「あと、ペッツはやりたくて、『負担が大きいから金井さんじゃない方がいいかな』っていう話になりそうだったんで、帰り道で『私、ペッツになりたいです』と伝えました」

 

警備員「ペッツは面白いよなあ」

 

大北「そもそもこんなことやってるのもコロナ禍になったときに、すごく嫌な気持ちになってくだらないことをしたいなと思ったんですね。それで次々と変な人がやってきて帰っていくというのをやっていたら新喜劇に近づいてきたという。コロナ対応も変わってきたし、このシステムは今回で区切りになる気がしてるんです。近年のくだらない路線の総まとめ的な作品なので、ぜひ皆さんに見に来ていただきたいですね」

 

構成・文:張江浩司