「地味なりに派手に!」
大好評シリーズ、待望の第二弾開催
1月にユーロライブで開催され、大好評を博したテアトロコントspecial『寸劇の館』。ブルー&スカイ作・演出の濃厚なナンセンスコメディの世界を8名の個性豊かな俳優が彩った名企画に多くのファンが殺到した。そんな奇跡の“寸劇”シリーズの第二弾となる『寸劇の庭』が11月20日より開幕する。今回は近現代不条理集合3人、テニスコート、劇団アンパサンドと世代を横断した3団体が1本ずつオムニバス作品を上演。稽古に先駆けて、近現代不条理集合3人のブルー&スカイ(脚本・出演)と大堀こういち(演出)に話を聞いた。
――今回はオムニバス形式の上演です。近現代不条理集合3人はどんな作品を上演するのでしょうか?
大堀 『寸劇の館』は僕も拝見したのですが、面白かったですね〜!ブルーさんと吉増裕士さんの二人のコントもすごくよかったんですよ。なので、そんな二人の独特の空気感を存分に活かした作品にできたらと思っています。ブルーさんも吉増さんとまたやりたかったんだよね?
ブルー そうですね。『寸劇の館』では、20分ちょっとの作品を吉増さんと二人でやったんですけど、稽古も二人きりで、都度動画を撮って確認して話し合って…みたいな形で作っていきました。客観的に見てくれる人がいなかったので、お客さんに観てもらうまでは吉増さんも僕も「これって面白いのかな?」って正直よくわからないまま本番を迎えたという感じでした。今回は前回より長尺ですし、大堀さんに見てもらって、がっつり稽古ができるのが楽しみです。
――ブルーさん、大堀さん、吉増さんの3人で“近現代不条理集合3人”。この魅惑のユニットの誕生秘話は?
大堀 3年前に近現代不条理劇会の第一回公演として『逆流』という作品を上演したんです。初演ではブルーさんと川俣しのぶさんに出演してもらったのですが、今回はブルーさんと吉増裕士さんに出演してもらってのリメイクになります。元々縁のあった3人が集まったので、そのまま“集合3人”という名を付けました(笑)。
ブルー 初演は会場も小さなライブハウスだったし、数少ない人しか観ていない作品なんですよ。
大堀 宣伝もSNSでちょこっと言うくらいしかしてなかったですもんね。
ブルー コロナ禍真っ最中くらいでしたよね。舞台が小さい上に、さらに(飛沫防止の)ビニールを隔てた独特な空間で上演をしたのを覚えています。
大堀 そうそう!すごくシュールな絵面になっていましたね。初演はスタッフもいなかったし、音響や照明も全部自分たちでやって…。
ブルー たしか、1公演につき20人くらいしか入らない場所だった気がする。そう思うと、今回は大きいですね。
大堀 ユーロライブでやることでまた全然違うものになるし、新しい作品を演出するくらいの気持ちでいます。登場人物が男性二人になるので、本も変わるよね。
ブルー そうですね。結構な書き換えをすることになると思います。あ、そうか。いつもだったら、こういう取材の時にはまだ台本が出来ていないからあらすじもあんまり話せないけど、今日は初演があるから話せちゃうんだ。
大堀 よかったですね。話すことがあって!(笑)。
――では、ぜひ『逆流』のあらすじをお願いします。
ブルー ボロアパートに住んでいる中年の男と大家さんがある殺人計画を進める話です。男は家賃を滞納していて無職。だから、家賃を帳消しにする代わりにその計画に加担することになると。そういう話です。
大堀 何が“逆流”なのかっていうところがポイントなんですけど、そこは開幕後のお楽しみということで!
ブルー 男は殺人計画の協力をするにあたって、家賃免除に加えてもう一つ条件を出すんです。それが一体なんなのかというところですね。
大堀 アパートに暮らす様々な住人たちもブルーさんと吉増さんが演じていくという見どころもあります。そこに不条理的なドラマやシュールな世界が生まれていくという感じで…。
――なるほど!二人芝居ですが、複数の役を演じられると。シーン毎に繰り広げられるお二人の様々なやりとりも大きな見どころですね。
大堀 基本的には僕がブルーさんの演出を受けることがほとんどで、僕が演出をしてブルーさんに出演してもらったのはこの『逆流』という作品だけなんですよ。それを吉増さんも交えてバージョンアップしてお届けできるのも嬉しいですね。
ブルー 大堀さんは「演劇」っていうものをすごく大事にしていますよね。演出からもそう感じますし、役者として出ていただいている時も感じます。
大堀 たしかに、予定調和ではない瞬間は結構大事にしていますね。口を突いて出ちゃった言葉とか反射的な振る舞いとか、そういったものを大切にしてやっていきたいなと。初演はなるべく初稿を変えずにやってみる試みだったんです。大抵の作品は、稽古をしている中で本を変えたり、書き加えたりがあるのですが、それを一切やらずに上演しようという企画でもあったんですよね。
ブルー そうでしたね。内容自体はあまり悩まず書けたのですが、アラがあるまま初稿を出したので、今回はそのあたりを整えたいなと思っています。
――初演のチャレンジを経て、リメイクにして新作のような作品に出会えそうで楽しみです!
大堀 本も書き換えるし、演出も初演より熟考してやることになると思うのでまた全然違うものが生まれそうです。初めての人にはもちろん、初演を観ている数少ない人にも新たに楽しんでもらえるようにやっていきたいと思います。
ブルー 寸劇というわりにはこの作品は結構長いんですよ。70分くらいありますよね。
大堀 テニスコートとアンパサンドは多分もうちょっとコンパクトですよね。大丈夫かな。
みんなに「長い!」って言われないかな…(笑)。
ブルー 10分くらいは短くできるかな…。それでも1時間ありますけど。
大堀 あははは。でも、ブルーさん企画の別の舞台でテニスコートの神谷圭介くんと共演したり、小出圭祐くんもEテレの『シャキーン!』という番組でご一緒しているので、こうした形での競演も楽しみです。
ブルー テニスコートは『寸劇の館』でも一緒にやりました。アンパサンドはまだ観たことはないのですが、方々から評判は聞いているので楽しみです。
大堀 3団体の個性の出る公演になると思います。僕はとにかく俳優としての二人の良さを陰で支えたいと思っています。二人の間に流れる沈黙や間も面白いので、ただただ黙っているっていうシーンがあってもいい気もする(笑)。
ブルー 要所要所に大堀さんの生演奏とかは入らないんですかね?
大堀 どうでしょう、稽古の中でそういう展開も出てくるかもしれません!いずれにしてもこういった形で3人が集結できてうれしいですし、地味なユニットですけど、地味なりに派手に咲かせられたらと思います!
インタビュー・文/丘田ミイ子 Photo/植田真紗美
※構成/月刊ローチケ編集部 10月15日号より転載
※写真は誌面と異なります
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
大堀こういち
■オオホリ コウイチ
俳優として数多くの舞台に出演。近年は舞台演出やフォークシンガー小象として音楽活動もおこなう。
ブルー&スカイ
■ブルーアンドスカイ
劇作家、演出家、俳優と幅広く活動。近年は映像・ラジオなどの作家活動もおこなう。