オフィス3○○『70祭 ERI WATANABE CONCERT~ここまでやるの、なんでだろう?~』|渡辺えり インタビュー

撮影/双海しお

2025年1月に70歳を迎えた渡辺えりが、12月に『70祭 ERI WATANABE CONCERT~ここまでやるの、なんでだろう?~』を開催する。
1月には古希を記念して『鯨よ!私の手に乗れ』『りぼん』の2作品連続公演を実施。6月には唐十郎追悼公演『少女仮面』を上演し、渡辺は42年ぶりに本作に挑んだ。そして12月、『70祭 ERI WATANABE CONCERT〜ここまでやるの、なんでだろう?〜』では、彼女にゆかりのあるゲストが多数集い、平和への祈りとともに盛大なお祭りを繰り広げる。本コンサートの演出家としても多忙な日々を過ごす渡辺に、本公演の見どころや新たな夢を聞いた。

――誕生日を迎えられた1月から駆け抜けてきた70歳イヤー。その締めくくりとなる『70祭 ERI WATANABE CONCERT~ここまでやるの、なんでだろう?~』が12月に開催されます

年が明けた1月5日(月)には71歳になっちゃうんだけど、その前に70歳の締めくくり、そして人生の一つの節目として、これまで劇団3〇〇を支えてくれたミュージシャンと、客演として出演してくれた役者とで、打ち上げ花火のような時間を過ごせたらと思って開催を決めたんです。でも、いざやろうと思うと大変で(苦笑)。気持ちはいつまでも若いつもりでいるけれど、徹夜はできないし、体もなぜか痛いところが出てきてしまう。でも、そういったものを超えてお祭りをお届けしたいので、今まさに頑張って準備をしているところです。

――70歳の締めくくりにコンサートを、というのはいつ頃から構想されていたんでしょうか?

約7年前ですね。私が大好きな沢田研二さんが古希を記念してコンサートをされていたんです(沢田研二 70YEARS LIVE『OLD GUYS ROCK』)。それを見て、生きる勇気を得られたので、私もやろうと思ったんですよ。
会場は、私が演劇を学ぶために上京してきて最初の一歩を踏み出した池袋がいいなと。今回開催する東京芸術劇場プレイハウスは、実は私が舞台芸術学院の1年生だった頃、エチュードや発声練習に使っていた公園の跡地に建てられた施設なんです。もうここ以上にぴったりなところはないなと思って、ここでの開催に決めました。27年前に開催した初めてのコンサートも、続くセカンドコンサートも、同じ池袋にあるサンシャイン劇場だったので、本当に思い出の詰まった場所なんですよ。

撮影/横田敦史 ※コンサート過去公演より。

――20日(土)と21日(日)、それぞれの見どころを教えてください

まず私が歌を歌うということがあまり知られていないんですが、オペラ歌手になるのが夢だったくらい歌が好きなんです。28歳の初コンサートでは約3時間で28曲歌ったのですが、今回は30曲を歌う予定です。もちろん沢田研二さんが昔私のために書き下ろして贈ってくださった「スペシャルボーイ」も歌わせていただきます。他にも私が人生で影響を受けた楽曲を披露できたらと思っているところです。といっても、これまで劇中歌でも何百曲も歌っていますから、そこから30曲を選ぶのに非常に頭を悩ませています。
20日(土)にはロックバンドの頭脳警察が出演します。オリジナルメンバーとして1970年代から活躍されていたPANTAさんは2023年に鬼籍に入られましたが、2001年からはPANTAさんが募ったメンバーと共に再々結成をして活動をされていました。20日(土)にはメンバーの皆さんが揃って出てくれるので、私が影響を受けたPANTAさんの楽曲を歌おうと思っています。ロック好きの方はより楽しめるんじゃないかしら。
あと、20日(土)はテツandトモのお二人が、司会に歌にコントにと大活躍してくれると思います。当日は私のために作ってくれた1日限りのコントや、生で聴いたら震えるほどうまい彼らの歌も楽しんでもらいたいですね。
21日(日)は尾上松也くんや屋比久知奈ちゃんが出演してくれます。普段披露している楽曲とはまた違った、うちの劇団で歌ってくれた劇中歌を歌ってくれる予定です。チラシにも「飛び入りゲストあり!!」と入れているのですが、劇団3〇〇の元劇団員や関係者がいっぱい参加してくれるようなので、そちらも誰が登場するのか含めてぜひご期待ください。

撮影/横田敦史 ※コンサート過去公演より。

――演出もご担当されます。構成などは決まりつつありますか?

ちょうど今、台本を書いているところです。芝居仕立てのところもあれば、若い人たちがコーラスやダンスで盛り上げる部分もあって、見ごたえのあるショーになると思います。
世界を見渡せば、今なおガザ地区やウクライナでは争いが続いていて、日本国内にもただならぬ気配が漂っていますよね。年末にふさわしく、平和への強い祈りが伝わるような内容にしたいと思っています。
1991年の湾岸戦争時に戦争が止まらなかった悔しさから書いた戯曲「クレヨンの島」で歌った「クレヨンの島」や、先日古希記念公演第1弾としても上演した反戦とフェミニズムをテーマに掲げた舞台「りぼん」の劇中歌「りぼんの歌」や「待ちましょう」。他にも「一の一の六の中」や「明日寂しい人がいるなら」、「悪い夢」、「月は寂しく歌う」など、反戦への強い思いや怒りを原動力に歌詞を書いた楽曲も歌唱予定です。
同時に、地元山形のお祭りの花笠祭りのようなテイストも入れて、ジャズ、シャンソン、ロック、舞台の劇中歌……とジャンルを超えたコンサートにしたいと思っています。
あと、タンゴも楽しみにしていてください。大好きなアストル・ピアソラの楽曲に狂気を込めて作詞した「ロコへのバラード」も歌う予定です。
音楽面も本当に豪華なんですよ。2022年にはウクライナ情勢を受けて一緒に「ひまわりの種をポケットに」という楽曲を作ったアコーディオニストのcobaさんや、ウクレレ奏者のRIOさんをはじめ、世界で活躍しているアーティストの方々がジャンルを超えて集結してくれて、こんなコンサートは他にないんじゃないかと思います。
盛りだくさんで目が離せない全4時間の公演(途中休憩30分)を予定していますが、出入り自由にしていますので、休憩を取りながら笑ったり音楽を楽しんだりしてもらいたいですね。

撮影/加藤孝 ※コンサート過去公演より。

――ゲストの方とのトークタイムも予定されているそうですね

もちろんありますよ。これだけの顔ぶれが揃うので、20日も21日もたくさん歌って、トークでもたくさん笑ってもらいたいですね。約4時間と聞くと長く感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、最初から最後まで飽きさせない構成を考えています。本当は半日くらい通してやろうと思っていたのですが、それは周りに止められてしまいました(笑)。
お客様とのコミュニケーションも大切にしたいなと思っています。去年開催したコンサートでもリクエスト曲を募ってその場で歌うというコーナーをやったのですが、すごく楽しかったので、そういったコーナーも盛り込みたいです。

――70歳という節目を迎えた今、新たな夢はありますか?

個人的な夢は、パク・ボゴムと共演すること。ピアノも歌もお上手なので、いつかデュエットが叶ったらいいなと。欲を言えば、うちの劇団の作品にも出てもらいたいですね。大きな目標としてはこれまでと同じく世界平和を目指していますが、どちらの夢も追いかけながら、70歳からまた新たなスタートを切れたらいいなと、このコンサートにはそんな思いも込めています。
このお祭りで皆さんをとにかく笑顔にしたい。「70歳、まだまだこれから」を合言葉に、お祭りなのでお客さんも好きに参加して、おしゃべりも楽しみながら、皆でワイワイとやりたいですね。お祭りは戦時中は禁止されていました。平和だからこそできるのがお祭りです。なので、老若男女、年齢も世代も超えて一緒にお祭りを楽しみましょう。

取材・文/双海しお