『blast ブラスト!』|石川直 インタビュー

ドラム・コーとマーチングバンドをショーアップした、躍動感あふれるパフォーマンスを繰り広げる『blast ブラスト!』が、2026年夏に来日ツアーを敢行する。今回のツアーでは、ファンから復活の声が多く寄せられていた「クラプキ巡査」が17年ぶりに演奏されることが決定。2001年のブロードウェイ進出から25周年を記念し、さまざまなスペシャル企画も予定されているという。2000年に日本人初の団員となり、長年パフォーマンスを牽引してきた石川直は、今回のツアーにどのように臨むのか。話を聞いた。

――この夏も『blast ブラスト!』の来日ツアーが始まります。今回はブロードウェイ進出25周年という記念すべき年ですが、今の率直な意気込みをお聞かせください。

今回は短い期間で駆け抜けるツアーになっているので、これまで以上にハードに、そして情熱的にやっていきたいという気持ちが強いです。新しく入ってくる楽しみなメンバーもいますし、25年という節目にふさわしい、最高の状態に仕上げて皆さんにお会いしたいと思っています。高校生、中学生、小学生など若い世代の方々、『blast ブラスト!』の歴史をまだそんなに知らない方々も多くいらっしゃると思うので、ぜひ「こんな音楽があるんだ!」っていうものをお見せしたいです。音楽表現というものはここまでやっていいんだよ、というパフォーマンスを見ていただきたいですね。

――今回は伝説のナンバー「クラプキ巡査」が17年ぶりに復活すると聞きました。石川さんはこの曲についてどのような想いをお持ちですか。

「クラプキ巡査」はこの音楽をどれだけ楽しむことができるのかという、『blast ブラスト!』が『blast ブラスト!』であることを体現したようなシーンになっています。そんなナンバーがカムバックするということは非常に大きな出来事だと私も感じていますし、今まさに制作中なんですが、とても楽しみですね。

――2000年の入団から実に四半世紀以上、ブラスト!メンバーとして活躍されていますが、変化を感じているところはありますか?

健康管理に関しての感覚は、少し上がりましたね。昔は、公演の後とかリハーサルの後には仲間のみんなで飲みに行くことが多くて、やっぱり大好きな仲間たちですし、オンステージとオフステージの両方の楽しい時間を含めて『blast ブラスト!』だという感覚だったんです。もちろん、今でもそういうオフの場が好きではあるんですが、控えるようになりました。やっぱりなるべく長くこの活動をやっていきたいと思っているので、健康管理の面でスイッチが変わりました。

あとは、若い世代の成長が著しいですよ。ものすごいスピードで成長していて、技術に関しては申し分ない若い世代がたくさん出てきています。そんな人たちが若い世代にたくさん出てきた今だからこそ、また別の可能性も今後は見えてくるような気がしています。そういう環境は、私が初めて『blast ブラスト!』で日本公演をしたころと比べると、大きく変わったように思います。

――逆に、変化していない部分はありますか?

『blast ブラスト!』ならではのフレンドリーさ、コミュニケーションの部分は変わらない、コアの部分ですね。アメリカはエンターテインメントがすごく生活に馴染んでいる文化です。日本は、仕事とエンタメを切り替えるのが上手い文化だと思うんですけど、アメリカはそこを混ぜるのが上手い。そういうおおらかさ、ラフさはアメリカが持っている特殊な感覚だと思います。

技術が高いのはもちろんですが、音楽で心がつながる感覚――技術は“道具”でしかなく、伝えたいのはハートだ、ということをメンバーみんなが理解しているんですよ。『blast ブラスト!』のまるでお祭りのような感覚、やっぱりお祭りっていつ行っても楽しいよね、って感覚は、変わらずずっと続いていますね。

――今回のツアーでは、石川さんだけでなく、トランペットの米所裕夢さん、渋田華暖さんも日本人キャストとして出演が決定しています。石川さんから見た2人の印象は?

米所に関しては、ベテランになりましたね。彼が入ってきた、まだ19歳の時のこともすごく覚えているんですが、それが今では『blast ブラスト!』の曲をアレンジして高校生たちに教えたり、仕切ったりしています。彼がいるといないとでは、やっぱりそのカンパニーに与える波長が全く違うものなので、本当に『blast ブラスト!』になくてはならないキーパーソンになりました。

(渋田)華暖は、昔から『blast ブラスト!』に憧れ、何年間もその夢に向かって目標を見失わずに突っ走って、入ってきました。周りのキャストからもすごく親しまれている、とっても面白い子です。そして芯がすごく強い。もちろん演奏技術もすごく高いですし、根性も据わっています。彼女もまた、本当に『blast ブラスト!』になくてはならないキャラクターになっています。

――先日開催された『blastブラスト!』 presents SPRING CONCERT 2026では、高校生との合同演奏にも参加されていましたね。どのような手ごたえでしたか?

高校生の演奏も、年々進化していると思いました。上手い子たちがものすごく増えているので、将来の音楽パフォーマンスシーンがまた楽しみになりますね。演奏していた曲も簡単ではないんですが、学業もしている忙しい中で、これだけまとめられていることも、すごいですよ。

ただ、やっぱりパフォーマンスをする上での心の開き方は、まだもっと開拓できる余地はあるんじゃないかな。技術の高さは本当にすごく上がっていますが、先ほどもお話したように技術はあくまで“道具”。技術に加えて、ハートやパッション、エモーションが乗っかることで技術が生きるということ、そしてお客さんと繋がるっていうところは、我々『blast ブラスト!』のキャストが得意としている部分です。素晴らしい技術を持っている若い子たちだからこそ、そこを感じ取ってもらえたらと思いますね。

ご一緒した高校生のみなさんも、普段は大会に向けて練習をされているのだと思います。もちろん、大会に向けた真面目さ、そういう世界の美しさがあることも知っています。でも、音楽はそれだけではありません。音楽の本質的なところはシェアできること。共有や共鳴という部分は、きっと感じていただけたんじゃないかな。

――石川さん自身は、『blast ブラスト!』をはじめとするアメリカでの演奏活動を通して、どのようなものを得られたと思いますか。

何かが変わったというよりも、“らしさ”を出せるようになったように思います。日本だと抑えたり、控えたりすることが美徳という文化があって、それが人に譲ること、自分を出しすぎないようにすることにつながっています。それも素晴らしい美学ですが、アメリカではそうじゃなくてもいい、ということを学びました。

自分らしさを出したときに、それがお客さんに伝わって、喜んでいただくことができる。それは、『blast ブラスト!』を通して経験し、知り得たことです。これでいいんだよ、とフィードバックをもらえると、もっと自分を出してみようと思える。そういうフィードバックをもらえる機会がもっと増えると、もっと良くすることができるんじゃないかな。

――時代が変化して、自分らしさを出すこと、自己肯定感を高めるということも大事に考えられるようになっていますね。

幸福感や多幸感が、人生の充実度につながっているということが、広まっているように思います。だからこそ、より『blast ブラスト!』のようなパフォーマンスがみなさんに受け入れられているのかもしれません。

私たちは、統一美という側面もあるんですが、みんなが個々でそれぞれにやりたいようにやっています。そこは究極的な、きわどいバランスで作り上げているんですよ。集団生活やリハーサルを繰り返して、だからこそ作れる化学反応です。ずれているけど、ずれていない。揃っているけど、個々のカラーを出している。それを体感できるのが、『blast ブラスト!』なんです。

――入団されたころやブロードウェイのステージを振り返ると、どんな日々でしたか?

この業界の方にはすごく失礼に聞こえてしまうかもしれないんですが…、私はブロードウェイを目指さずにブロードウェイに立った、数少ない人間だと思います。ブロードウェイに行ったのは、私が入団してから1年後くらい。学生時代にドラムにはまり、マーチングバンドにはまり、どんどんのめりこんでパフォーマンスの場を求めていたら、ブロードウェイに立つことができていたんですね。ただ、エンターテインメントの世界に入ったんだから、理屈というか、行きつく先がブロードウェイというのは理解できるので、来ちゃったんだな、と思ったことはよく覚えています。

ニューヨークでの生活も、とても新鮮でした。私はいろいろなところを転々としながら生活していましたが、ニューヨークは短い期間ながら、とてもインパクトが大きかったですね。厳密にはニュージャージー州から船でハドソン川を渡って、街の中を歩いてブロードウェイをどんどん進んで、ブロードウェイ・シアターに通っていました。とても由緒ある劇場でやらせてもらえて、本当に誇らしい気持ちでした。

――『blast ブラスト!』での初ステージのことは覚えていますか?

私が初めて『blast ブラスト!』としてお客さんの前に立ったのは、ボストンでした。そのステージに立つまでのリハーサルがとても大変で、廃校になったボロボロの小学校を借り切って、壊れた二段ベッドでキャストのみんなと寝泊まりしながら、缶詰になって練習しました。苦労の末、お客さんの前で披露できたので、やっとリリースできた、解き放てたような感覚でした。そのボストンでのリアクションがとてもよかったので、それに病みつきになってしまいましたね。

今は東北の温泉街に泊まらせていただいて、大きな木造の素晴らしいホールで練習をしています。すごく恵まれた環境でやらせていただいていますね。

――日本での初公演の思い出はありますか?

日本での初演は、すごく意外だったんですよ。やっぱりアメリカ人からすると、日本の客層はすごくおとなしいイメージで、私自身もそういう認識でした。だから、オープニングショーの前にステージマネージャーが全員を集めて「日本のお客さんはアメリカのようにガツガツしていない。きっと静かに観てくれるけど、それはショーが面白くないということじゃない。そういう文化なんだ」と話していました。メンバーも、リアクションが無くてもいつも通り頑張ろう、なんて話していたんです。

でも、幕を開けたらこれまでに無いほどの大きな盛り上がりで、アメリカでも見たことがないほどでした。本当に、待ってました!という感じで、聞いていた話と全然違うじゃないか!と(笑)。嬉しい誤算ですね。

ロビーでのパフォーマンスも、予定していた場所に行くまでにもみくちゃになるくらいの熱量で…。一生、忘れられないですね。

――日本のオーディエンスがこれほど『blast ブラスト!』と相性が良かったのは、どのような要因があると考えていらっしゃいますか?

日本には、コアな方がたくさんいらっしゃるんですよ。ニッチと言われている、吹奏楽やマーチングの経験者がかなりの人数いるんですよね。昔、実はやっていました、という“隠れ”吹奏楽、マーチング人口の方々が見に来てくださっているというのが、1つの要素だと思います。

そして、『blast ブラスト!』のような音楽を許容してくださる環境が日本にはあるんですよ。スポーツ観戦のような感覚で観てくださっていて、まさにマーチングの大会が歓声を上げながら見たりする文化があるので、そこも相まって、いわゆる演劇作品などを見るようなオーディエンスとも違ったリアクションをとってくださっているんじゃないでしょうか。

――今回のツアーも楽しみにしている日本のオーディエンスがたくさんいるかと思います。見どころを含めて、メッセージをいただければと思います。

今はスマホひとつで、いろんなエンターテインメントが完結してしまっている世の中ですが、やっぱり生の空間で、自分たちとは全然違うところで育ってきた人たちと触れ合えたり、その空気感を、震えるようなあの空気感を全身で体感できるっていう場所は、本当に貴重なものだと思っています。この『blast ブラスト!』という一つの、お祭りのような空間、パーティーのようなエンターテインメントを、ぜひ会場で味わってください!

2024年公演写真

©︎キョードー東京

撮影/taro
取材・文/宮崎新之