『ラ・カージュ・オ・フォール ~籠の中の道化たち~』 鹿賀丈史 インタビュー

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“何度演じても、素晴らしい作品です”
日本初演30周年を迎える名作に臨む 

 

 相手に、緊張を強いない人だ。映画「麻雀放浪記」(’84年)やミュージカル「レ・ミゼラブル」(’87年初演)など、ジャンルを超えた活躍ぶりでキャリアの礎を築き、最近ではNHK-BSプレミアム「昨夜のカレー、明日のパン」での好演もきらめいている鹿賀丈史。静かにゆったりと語りだす。

鹿賀「不思議なもので、年齢を重ねてこそできる、貫禄のある演技というものがある一方で、逆のパターンもあるんですよね。実際に年を取ってこそ、若い芝居に挑戦してみたくなる。もちろん、若いころには簡単にできていたことが、年を取ってできなくなることもあるけど、その分、何回も稽古を繰り返すわけです。そのことで増していく味わい、というのもあって」

 

 40年を超える俳優人生を経て、むしろ貪欲な時期を迎えている鹿賀。2月には、日本初演30周年となる人気ミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」への出演が決まっている。ゲイクラブのオーナーであるジョルジュと、看板スターのアルバンの物語。岡田真澄、細川俊之が演じてきたジョルジュ役を、鹿賀が受け継いだのは2008年のことだ。以来3度にわたって、鹿賀ジョルジュは進化を重ねてきた。

鹿賀「毎日同じ芝居ではあるんですけど、でもやっぱり、毎日違いますからね。真面目に真剣に作品と向き合っていれば、新鮮な発見が毎日あるんです。そこがこの仕事の面白さですよね」

 そして相手役のアルバンを演じるのは、40年前、劇団四季に在籍していたころからの盟友・市村正親。

鹿賀「気心の知れたイッちゃんと一緒ですからね。舞台上で見つめ合いながら、お互いに『……老けたねえ……』っていう瞬間があったりして(笑)。イッちゃんはいつも楽しい人なんだけど、でも浮かれていないっていうんですかね。やっぱり、真面目さ、真剣さを感じるんです。だからお互いに、こうしよう、ああしようって打ち合わせしなくても、スッとできちゃうんですよね」

 

 物語は、明快なコメディである。事実上の夫婦として生きてきた、ジョルジュとアルバン。二人が手塩にかけて育てたジョルジュの息子・ジャン(相葉裕樹)が、突然結婚を宣言する。婚約者・アンヌ(愛原実花)の両親(今井清隆・森 公美子)は、保守的なことで知られる政治家とその妻。ゲイのカップルであることを知られないため、二人の七転八倒が始まった――!

鹿賀「ゲイのカップルだからこそ、周りに対して繊細な心遣いを見せるんですよね。人間愛の深さが、より色濃く伝わってくる。しかも、とても明るい作品なんですよ。二人の愛のあり方に、笑いながら涙したというお客様のお声をいただいて、改めて、やりがいのある作品だなあと思っているんです」

 

 ただただ、愛に生きるということ。シンプルなようで一筋縄では行かないその道の歩き方を、この舞台は涙と笑いで教えてくれる。

インタビュー・文/小川志津子

Photo/小暮 誠

 

【プロフィール】

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鹿賀丈史

■カガ タケシ  ’50年、石川県出身。劇団四季在籍中の’73年に「ジーザス・クライスト・スーパースター」で異例の新人主演デビュー。退団後は映画「野獣死すべし」(’80年)などで鮮烈な印象を残す。日本初演30周年となる「ラ・カージュ〜」には’08年から出演中。