『ベター・ハーフ』 片桐 仁 インタビュー

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鴻上尚史の新作は4人芝居の恋愛劇

個性豊かな俳優陣が紡ぐ愛の物語

 

 すでに4人は「チーム」だった。この春に開幕する、鴻上尚史の書き下ろし最新作「ベター・ハーフ」。風間俊介、真野恵里菜、中村 中、片桐 仁。制作発表の席で4人は、丁々発止のやりとりを見せた。

片桐「ワークショップというのをやったんです。ゲームみたいなことから始まって、演じることを『感じる』ことを試してみる。うわぁ、学校みたい!って思いました。今までの僕は、すでにある台本をもとに、そのための稽古に終始していたから、演技するときの心のあり方とか、基礎中の基礎みたいなことを、実はしてこなかったなぁと思って」

 

 鴻上と、個人面談もしたのだという。どういう芝居が好きか、どういう役をやるのが好きか。

片桐「そういうことを、あんまり考えたことがないんですよね。『どうしたらウケるかな』とか『どうやって楽しむか』は考えてきたけど、自分がどうしたいかについてはあんまり感知してこなかった。これは大事な問いだなあと思いました」

 気づけば今年で42歳。この座組でも、キャストのなかでは最年長となる。

片桐「若い人と芝居すると、『ここはもっとこうしてください』みたいなことをあまり言われなくなってきたし、向こうも言いにくいのかなと思ったりするんですよ。僕自身はまだまだ若手のつもりで、昔からなんにも変わってないんですけど、でも、そうか、言えないのか、と。だから稽古場ではもっと積極的に、自分からコミットしていかなくちゃと思うんです。鴻上さんはまずワークショップで、みんなが気後れせずにいられる状況を作ろうとされていた。ここは、飛び込んで行かなくちゃなぁって思うんですよ」

 

 今回4人が紡ぐのは、ばりばりのラブストーリーである。ネットで知り合った異性に、自分の写真を送ることができず、職場にいるイケメン部下の写真を送ってしまう男。それが片桐の役どころだ。

片桐「40を過ぎて、発想が中学生ですよね(笑)。でも僕も、実は相手に告白したことがないんですよ。ラーメンズを始めて、モテて、告白してくれた人と結婚して、今に至りますから」

 

 あなたのことが大好き!という人と共に暮らして、気が付いたことがあるという。

片桐「好きな度合いを折れ線グラフにすると、最初は奥さんのほうがだいぶ上から始まって、少しずつ穏やかになっていくんですけど、僕はその逆で、下のほうから徐々に上がっていくんですね。で、ある時点で交差して、今は僕ばっかりが奥さんを好きな気がする(笑)」

 

 やっぱり告白って大事だな、と思った矢先に、とんでもない事態が起きた。

片桐「小4の息子が、好きな子に告白したんです。廊下ですれ違いざまに告白して、教室で『無理』って言われたらしいんですけど(笑)。しかもそのことを、友だちはみんな知ってる。……お前、すごいな! かっこいいよ!って言いました。宿題をなかなかやらないからよく叱るんだけど、なんか、もう、いいわ!と。やりたいようにやれ!って思いましたね」

 

 息子の姿に、恋愛における男のあり方を学ぶ。片桐 仁は最強の師を得て、この舞台に臨むのだ。

 

インタビュー・文/小川志津子

Photo/倉田貴志

構成/月刊ローソンチケット編集部

 

【プロフィール】

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■片桐 仁(カタギリ ジン)

‘73年、埼玉県出身。大学時代に小林賢太郎と「ラーメンズ」を結成。俳優としても活動し、特に演劇作品には、ほぼ切れ目なく出演。個性と器用さを併せ持った俳優である。