“ギンギラ太陽’s”大塚ムネトד劇団ショーマンシップ”仲谷一志
=スペシャルインタビュー=
福岡市を活動の拠点とする劇団ギンギラ太陽’s。彼らの舞台に“人間”は一切登場せず、役者が“かぶりモノ”を着けてビルや乗り物に扮し、“モノ”を擬人化することで物語を綴っていく。そんなギンギラ太陽’sの代表作として知られているのが『天神開拓史』。昭和20年6月19日に起きた福岡大空襲を背景に、福岡・博多の街を描いた代表作が、戦後70年を迎える今年、福岡大空襲と同日となる6月19日から22日まで、福岡・西鉄ホールで上演される。
ギンギラ太陽’sのスタイル“かぶりモノ”=コメディと思われがちだが、地元密着にこだわり、流通・交通・お菓子などの業界を徹底取材し、忠実ありきの物語とした作品創りを続け、笑いと共にそこで明らかとなる史実は客席に感動をもたらしてくれる。それはもはやヒューマンドラマとさえいえる。
そんなギンギラ太陽’sと同じく福岡を拠点に、こちらは“人間”が描く福岡にちなんだ歴史を描く劇団ショーマンシップ。彼らは地元福岡市内の“甘棠館Show劇場”を拠点に活動を続け、ギンギラ太陽’sと同じく地元密着の劇団として知られている。
今回、この二つの劇団の主宰者、大塚ムネト(ギンギラ太陽’s)氏と仲谷一志(劇団ショーマンシップ)氏が、ギンギラ太陽’sの『天神開拓史』で初共演を果たす。そんな二人がお互いのこと、共演や意気込みなどを語ってくれた。
― ギンギラ太陽’sの作品にゲスト出演をすることになったきっかけは?
仲谷「出会いは去年ですね。うちの劇団が広田弘毅(昭和時代に活躍した福岡出身の外交官であり政治家)をテーマに『沈黙は語る』という芝居をやった時、初めてショーマンシップのお芝居に大塚さんに出てもらったんです。それまでもちろんお互いに存在は知っていましたし、機会があれば・・・という話はしていたんですが、なかなかそういう機会に恵まれず、何度かオファーしても丁重にお断りされ(笑)」
大塚「いやいや(笑)。ギンギラの活動で手一杯だったんです。おかげさまで、ギンギラでやりたい事は一通り実現して、『さあ今度は、自分だけでは出来ない事に挑戦したい』と思っていたところに出演依頼があって」
仲谷「ところが、その公演の時、会場によっては僕のスケジュールの調整がつかない部分が出て来たこともあって、大塚さんにはWキャストとして出ていただいたんです。だから、一緒の舞台に立つことはなかったんですが、稽古場では僕が演出をする時に大塚さんの芝居を見て、僕が演じている時は逆に大塚さんが僕の芝居や僕が見れない全体のことを見てくれて。まさに演出助手的な仕事を一緒にやってくださって、それは物を作る空気としてはとても心地よかったんです。で、お互いに来年何をやるの?という話をした時に、大塚さんからは、戦後70年というのを意識した舞台を天神開拓史でやる・・・と聞いていて、僕らは戦後の博多にあった福岡民間検閲局を舞台にした物語『奪われた手紙』という公演をやりたいと思っていた頃で、お互いに同じようなことをやりたいんだなぁと。それだったら・・・という流れで、まずは僕と原岡といううちの役者がギンギラ太陽’sの6月公演『天神開拓史』でギンギラ太陽’sの世界を思う存分に経験させて頂き、8月はタイトルに『ギンギラ太陽’s by劇団ショーマンシップ』と入れているように、うちの芝居でガッツリ一緒に創造をして、演出も大塚さんと僕とでやっていくということになったんです」
大塚「僕はギンギラ太陽’sの芝居を作る際、徹底的に取材をして物語を作りあげていくんですが、『他の劇団は、どんな風に地域に根ざした物語の作り方をしていくのか?』と興味があったんです。ショーマンシップも、徹底的な取材に基づいていて、限りなく事実をふまえた上で、ちゃんと『ショーマンシップのエンターテイメント』に出来上がっているんですね。それに舞台装置もすごくて。あの小劇場の空間に、盆(舞台が回転する部分)を3つも作って、それをグルグル回して転換するんです。まるで映画のカット割りのようで、凝りまくった劇空間に感動しました」
― 今回の『天神開拓史』で二人が演じる役どころは?
大塚「僕は、決死の覚悟で天神に開店した岩田屋を演じます。その時に天神に君臨していた“最大のライバル”、庶民派の安売り王として人気だった福岡松屋を仲谷さんに演じて頂きます!岩田屋が開店した日にお客さんはたくさん来場したけど、見物だけの人が多く『結局、買い物はみんな松屋だった』と言われているくらいに、松屋は人気のお店だったんです。岩田屋が安くしたら、松屋はさらに安くするし、営業時間の延長合戦までしたそうで。火花を散らして商売合戦をする役どころを2人で演じるのが楽しみです」
― 仲谷氏に“松屋”を配役したのはなぜ?
大塚「前回、僕がショーマンシップの舞台に出させて頂いた時はWキャストでの共演でしたので、一緒には舞台に立っていないんですよ。同じようにずっと福岡で演劇をやってきていて、せっかくこうやって接点が出来た訳だし、台詞をぶつけ合ってにらみ合えるような役をやりたいというのがあったから、僕が演じる岩田屋の“最大のライバル”松屋の役をお願いしました」
仲谷「あぁ、でもそうねぇ、安売り・庶民派!みたいなイメージが僕にあるのかもしれないですねぇ(笑)」
大塚「座長のその親しみやすい感じが魅力だし、愛される庶民派の役が座長にあっているな~と思って、最初から『この役をやって欲しい!』ってお願いしたんですよ?(笑)」
仲谷「だそうです(笑)」
↑ショーマンシップ拠点の地、福岡市内の唐人町商店街で 一枚☆
― 福岡演劇界で人気の2つの劇団。今度の舞台ではライバル的存在の役を演じる二人だが、お互いの印象は?
仲谷「存在は知っていても、今まで直接そんなにお仕事をしたことはなかったんです。でも、いろんな人からいろんな“大塚ムネト”像を聞いていると、小難しい感じは受けていたので(笑)、去年出てもらった舞台の時に、きちんと説明しないと演じてくれないんだろうな~と思っていたら・・・逆にやたら演出に従順で! 自分たちは演出家もやっているからでしょうか?お互いにものすごく相手の言うことを受け止めあう・・・という、とても良好な関係で稽古も進行して(笑)。それがお芝居にもいい影響を与えたと感じましたね」
大塚「去年の1月、ショーマンシップの舞台に、『一役者として、どうにでもしてくれ!』という覚悟で参加しました(笑)。その時に仲谷座長も、劇団代表で演出という立場もありながら『役者として、どうにでもしてくれ!』って、同じような覚悟を持っているのを感じて、『あっ、この人も役者が一番好きなんだ』とわかったんですね。僕も役者が一番好きで演出もしているので、両方を手がける苦労も共有できて、本当に有意義な客演でした。去年、僕がショーマンシップの舞台をお先に体験させて頂いて、6月はギンギラ太陽’sに仲谷さんたちに出て頂くことで、これでお互いがお互いの劇団をガッツリ体験するわけです。きっと8月は、お互いの魅力をあわせた作品が生まれるだろうと思います。本当に楽しみです」
仲谷「そうですねぇ。仮に “福岡の演劇界”というようなものがあるとするならば、僕らがコラボすることで、福岡で演劇をやっている人たちに刺激を受けてもらえる部分もあるかな?と、少しおこがましい期待もあったりしています。これを僕らだけで止めることなく、将来はギンギラ太陽’s・ショーマンシップ以外の人にも声をかけてやっていけたらいいなとも思いますね」
― 今後の展開がとても気になるが、このコラボ企画はこれが最後ではない?
大塚「ここから何かが始まるような、それも含めてワクワクしていますね」
仲谷「これをきっかけに、『大塚ムネト×仲谷一志』という“個”でやることがあるかもしれないしね。劇団単位で言うと、うちの役者たちはずっと僕の演出を受けているので、絶対に他の演出家とも出会いたいはずなんです。だから、8月は大塚さんに演出家としても参加してもらうので、彼の演出を受けるということにドキドキしてくれていると思いますよ。違う演出家から違うアプローチを受けることが、仮に同じことを言われていたとしても、インプットの仕方は違うでしょうから、皆にもいい刺激になるはずです。今後は、劇団としてそういうこともやっていけたらなと思います」
大塚「そうですね。僕の書いた物語を、ショーマンシップでやってもらったり、その逆もあったり。いろんなことをやっていった方が楽しいですしね。自分たちも刺激になっているんです」
福岡で活躍する2つの劇団によるこのコラボ企画公演は、福岡演劇界にプラスとなる影響を与えてくれることだろう。まずは6月公演のギンギラ太陽’s『天神開拓史』から、そして8月公演の劇団ショーマンシップ『福岡民間検閲局』の公演まで、福岡演劇界の新たな歴史の一ページをその目で是非見届けて欲しい。
取材/ローチケ演劇部(延)
取材・文/ローチケ演劇部(シ)
【公演情報】
ギンギラ太陽’s『天神開拓史』
公演期間:6/19[金]~22[月] <全6ステージ>
会 場:福岡・西鉄ホール
料 金:指定席 3,500円
Lコード:84782
※公演日時の詳細・チケットのお買い求めは、下記URLをご確認ください
http://l-tike.com/d1/AA02G03F1.do?DBNID=3&ALCD=1&PGCD=253281
★コラボ公演第2弾、8月公演は6/26[土]発売決定!★
ギンギラ太陽’s×劇団ショーマンシップ『奪われた手紙』
公演期間:8/4[火]~30[日] <全31ステージ>
会 場:甘棠館Show劇場(福岡市中央区唐人町商店街内)
料 金:自由席 一般3,000円/学生2,000円/マチネ(昼公演)2,500円
Lコード:86109
※公演日時の詳細は決まり次第、 ローチケ.com『演劇』ページにてご案内致します