熱海五郎一座 熱闘老舗旅館『ヒミツの仲居と曲者たち』 三宅裕司&松下由樹 インタビュー

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“笑い”を知り尽くした
喜劇人たちの本気の軽演劇

 

 言うまでもないが、双方、大人である。それぞれが、それぞれのフィールドで、それぞれのキャリアを重ねてきた。そんなふたりがタッグを組めば、見たことのない化学反応が起きるに決まっているのだ。三宅裕司を筆頭に、渡辺正行、ラサール石井、春風亭昇太ら、笑いをライフワークにする男たちによる「熱海五郎一座」。3回目となる新橋演舞場への登場に、松下由樹はヒロインとしてゲスト出演する。

三宅「松下さんは、シリアスとコメディーを自在に行き来されますからね。しかも、その移行の間とスピード感が、僕らの好きな笑いに非常に合っている」

松下「シリアスかコメディーか、ということを意識することはあまりないです。『笑わせるぞ!』なんて思ってしまうと、ろくなことがないので(笑)。三宅さんとはテレビのコント番組でご一緒したのですが、本当の喜劇がどういうものなのかということを考えさせられました。登場人物が懸命であるゆえに出てしまう面白さ、というのがあるんですよね。だから私は、与えられたものをそのまま、懸命に素直に演じるのみだと思っています」

 

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 そう、「熱海五郎一座」の舞台の面白みはそこだ。設定があって、登場人物がいて、物語はどんどんおかしな方向へ進んでいく。そのなかで、ただただ汗をかいて必死なオジサンたちを観ていると、なんというか、彼らが急にいとおしくなるのだ。なんだかんだ言いながら、みんな大真面目なものだから。

松下「三宅さんとご一緒したコント番組で、私はただただ必死だったんですが、そのうちに、自分で思いもよらなかった一線を、ポンと越えてしまっていた感覚があったんです。自分には思惑もプランもないんだけれど、自分でその線を越えるようになっているというか。そうやって思ってもみない何かが生まれたりするんですね」

三宅「それはとても大事なこと。自分の力だけを信じて『明日はこのセリフでもっと笑わせてやるぞ!』なんて思っていると、次の日は笑いが減ったりしますから。でも、本番が1カ月近くあるわけですからね。日によってお客さんの反応が違うことがわかってきたら、今度は笑いが大きくなった瞬間を覚えておいて、その喜びをひとつひとつ集めていって、千秋楽までどんどん生まれ変わらせていくんです。それはこのうえない喜びですよ」

 

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 そう語るときの三宅裕司は、なんだかまなざしが優しいのである。

三宅「もちろん、怖い気持ちもありますよ。調子に乗りすぎてスベってしまうと、客席全体が黒くて四角いカタマリに見えてくる。だから根っこは謙虚でいないと。お客様を味方につけて、お客様と一緒に楽しむこと。そうすれば、お客様が僕らに正解の笑いを教えてくださるんですよ」

松下「だとしたら少し安心できます。コメディーものって、自分ひとりで楽しみすぎてしまうと、それが観る方のところまで届かなかったりするんですよね。間とか演じ方だけではなく、センスとかキャラクターとか、あらゆるものが総合的に優れていないと、笑っていただくことはできないのかなあと思ったりします」

三宅「経験を積んで年を重ねてくると、にじみ出るおかしみってあるんですよね。ナベ(渡辺正行)も春風亭昇太も、そこにいるだけですでにおかしいじゃないですか(笑)。僕らがそういうのを出そうとすると、やっぱり、芝居自体がちゃんとできていなくちゃいけない。その点、松下さんは何の心配もないですよ。何かあれば、みんなで一緒に考えますからね」

 

 稽古場の様子が目に浮かぶ。きっと、みんな笑顔である。けれど、底無しに真剣。テレビのにぎやかバラエティーに食傷気味の方は、ぜひ新橋演舞場へ。

 

インタビュー・文/小川志津子
Photo/加藤夏子
構成/月刊ローソンチケット編集部 4月15日号より転載

 

【プロフィール】

三宅裕司
■ミヤケ ユウジ ’51年、東京都出身。’79年に劇団スーパー・エキセントリック・シアターを旗揚げし、超人気劇団へと成長させる。東京の喜劇人としての舞台活動をライフワークとしている。

松下由樹
■マツシタ ユキ ’68年、名古屋出身。数々のドラマで鮮烈な印象を残す一方、’01年にはコント番組「ココリコミラクルタイプ」でコメディエンヌとして開眼。幅広い演技力を発揮している。

 

【公演情報】

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熱海五郎一座 熱闘老舗旅館『ヒミツの仲居と曲者たち』

日程:2016/6/3[金]~27[月]
会場:東京・新橋演舞場

★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!