「星回帰線」 向井理 インタビュー

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向井自身が蓬莱にラブコールして実現した舞台
何気ない会話が思いもよらない展開に

 

 モダンスイマーズの蓬莱竜太が作・演出を手掛けるパルコ・プロデュース公演「星回帰線」。主人公の三島を演じるのは、3年ぶりの舞台作品となる向井理だ。実は「暇さえあれば劇場に行く」というほど舞台好きの向井。そんな彼が蓬莱にラブコールを送ったことで、今回の意外な顔合わせが実現したという。

向井「蓬莱さんとは、飲みの席でずっと〝いつか一緒にやろう〟と言っていました。だから今回実現して嬉しいんですけど、なんだか変な感じでもありますね(笑)。以前、僕が出演した映画の原作を書かれていたのが蓬莱さんで、間接的に知り合ったのがきっかけです。それ以来、モダンスイマーズの作品はほとんど見るようになって。登場人物たちの何気ない会話がいつしか言い合いになり、売り言葉に買い言葉を繰り返すうちに驚くべき真実が明らかになっていく――。自分が出る側の人間なので、観客として劇場にいても脚本の構成が気になってしまうんですが、とにかく展開が面白くて。蓬莱さんがどこに伏線のタネを撒いてくるかわからないから、いつも集中して観ています」

 

 今回の物語の舞台は、とある架空の地方都市。社会生活の中で問題を抱えた人たちがスローライフな共同生活を送るコミュニティに、主人公の三島がやってくる。彼の登場までは平和に見えた共同体も、次第に不協和音を奏で始めて――。

向井「特殊な環境設定ではありますが、そこに生きているのは〝普通の人〟たちです。非日常のなかの日常を演じることで出てくる違和感が、きっと大切なメッセージになっているんだと思います。あまり力んでやるとすべってしまうかもしれないので、自然体で演じられたらいいなと」

 

 舞台ではあえて「わかりやすくない芝居」を心掛けているという向井。

向井「映像作品では、テロップやCGなどを多用して、とにかくわかりやすくするのが今の主流だと思っています。それもひとつの表現だと思うのですが、〝わかりやすい芝居〟ばかりを強いられるのは、役者である自分にとっては苦痛なこと。舞台は見る側もきちんと頭を使って考えないと面白くなくなるし、考えさせられるものこそがいい作品だと思っています。舞台ではお客さん自身がディレクターだと思うので、どこに注目したいのかというカット割りができるのもいいところですよね。テレビや映画なら画面からはみ出てしまう所にいる役者にも注目できるから。演じる側も、客席の緊張感を常に感じながらお芝居をしています」

 

 そんな向井にとって、久しぶりの舞台となる今作。「映画よりも舞台を見に行くほうが多い」と語る演劇青年の向井は、〝舞台〟に対してどんな思いを抱くのか――。

向井「最低でも1年に1度はやりたいと思っているんです。〝やりたい〟というか〝やらなきゃいけない〟というか、感覚としては修行に近いかもしれません。そもそも人前に立つことが好きではないので(笑)、毎回初日の幕が上がる直前、開演ブザーが鳴る時には、本当に後悔するんです。〝もう絶対二度とやらない〟と誓うほど怖くなる。でも、千秋楽が終わるとまたやりたくなってしまうんですよね。こういう自分の行動を客観的に見ると、やっぱり舞台が好きなんだと思います。中毒かもしれません」

 

 さらにこう続ける。

向井「映像だと、台本を読んでいる時間は長くても、本番は一瞬で終わってしまいます。忙しい時期に作品が重なったりすると、覚えた台詞をどんどん捨てているような感覚になることがあって。台詞を垂れ流している気がしてもったいないと思ったんです。もちろん映像の良さもありますけど、舞台では稽古も含めると、何百回と膨大な回数同じ台詞を話せます。台詞を大切にしたい。だからこそ、舞台をやりたいんです」

 

 そんな向井が挑む今回の作品には、どんな挑戦が待っているのか。

向井「今回は武器がないんですよね。特殊な設定とか、目立つ小道具とか、なにもない。自分の言葉と体だけで勝負するしかないので、ごまかしが効かないのは怖くもあります。蓬莱さんの作品には、日常の延長線上にいる人たちの様子を覗き穴から見ているような面白さがあるんですが、そういう作品のほうが見ているお客さんがより〝傷つく〟のではないかなと。爪痕を残すというか、お客さんの心に余韻を残せる作品にしたい。笑えるシーンもいっぱいあるはずですし、それも含めてエンターテインメントとしてのバランスがすごくとれた作品になると思います。僕の念願が叶った蓬莱さんとの舞台、きっと払った金額以上のものを持って帰っていただけるはずです」

 

【プロフィール】

向井理
■82年、神奈川県出身。映画やドラマで活躍するいっぽう、意欲的に舞台に出演を続ける。11年に「ザ・シェイプ・オブ・シングス~モノノカタチ~」で初舞台を踏み、12年に「悼む人」、13年にはリーディングドラマ「Re:」~Session3~、「小野寺の弟・小野寺の姉」の2本に出演。今回3年ぶりとなる作品で蓬莱竜太とタッグを組む。

 

取材・文 まつざきみわこ

 

【公演情報】

パルコ・プロデュース「星回帰線」

日程・会場:
2016/10/1(土)~30(日) 東京芸術劇場 シアターウエスト
2016/11/2(水)・3(木) 愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT
2016/11/11(金)・12(土) 新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
2016/11/22(火)・23(水) 広島・JMSアステールプラザ 中ホール
2016/11/26(土)・27(日) 北九州芸術劇場 中劇場
2016/11/30(水)・12/1(木) 鹿児島市民文化ホール第二
ほか札幌、京都公演あり

★プレリクエスト抽選先行
東京公演 2016/8/3(水)12:00~8(月)23:59
愛知公演 2016/8/15(月)13:00~22(月)23:59