舞台『ガラスの仮面』
貫地谷しほり インタビュー

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連載開始から40年、総発行部数5000万部を超える人気少女マンガを原作に、G2の演出で2014年に上演した伝説の舞台『ガラスの仮面』が、脚本と演出を一新しバージョンアップして再降臨する。見た目は地味で平凡なのに演劇に関してだけは天賦の才能を持つ少女・北島マヤに貫地谷しほり、そのライバルで演劇界のサラブレッド・姫川亜弓にマイコが扮するほか、メインキャストは2年前とそのままに、今回は劇中劇の『ふたりの王女』の場面をじっくりと、マヤと周囲の人々との人間関係をたっぷりと、そして物語の鍵を握る演目『紅天女』に関する重要な場面も増えるニューバージョンとなる。劇場が変わったことで、演出もかなり印象が違うものになりそうだ。東京での稽古を終え、大阪公演初日に臨む直前の貫地谷に、稽古の手応えや作品への想いなどを語ってもらった。

――劇場が変わって、今回は花道もある空間になりますが。

前回は青山劇場で、今回は大阪松竹座と新橋演舞場になるんですが、去年の夏にちょうど私が新橋演舞場でお芝居をやっていた時にG2さんが観に来てくださって、『ガラスの仮面』では花道をどう使おうかっていう話もしたんです。その時に演舞場でやっていたお芝居では私は花道を通る場面がなかったので、今回は初めて花道を歩けることも楽しみのひとつになっています。

 

――今回いよいよ叶う!という感じなんですね。

そうなんです(笑)。昨年、大阪松竹座と新橋演舞場で、お芝居の最中に拍手をいただけるという体験も初めて経験させていただきました。今年は『ガラスの仮面』という作品なのでお客様がどう反応していただけるのかはまったく想像できませんが、花道を歩くからにはきっと何かあるんじゃないかって。そんなこと期待してはいけないんですけど、ついつい期待しちゃうんですよね。
私、ちょっとお調子者のところがあるので、やり過ぎて芝居がブレないように気をつけなければ!と思っています(笑)。

 

――前回は原作者の美内すずえ先生も、この舞台化に大変喜んでいらしたそうですね。先生から言われて嬉しかった言葉などありますか。

原作者で誰よりも物語も人物像もわかっている美内先生が毎日のように観に来てくださって、「今日も泣いちゃったー、あの場面とあの場面で!」って言ってくださるのは本当にありがたかったです。私、前回は28歳で今回は30歳なんですが、マヤの年齢設定は一応10代、いってても20歳くらいなので、私で大丈夫かな?と心配していたんですけれど、美内先生には「小学5年生くらいに見えたわよ」とおっしゃっていただけて。それはいいことなのかなあって思いながらも、すごく嬉しかったのを覚えています(笑)。

 

――天才・北島マヤを演じることに関しては、ご自身としてはどう受け止めていますか。

このような物語は“受けの芝居”にかかってくると思うんです。周りの人たちが「ウッッ……!」とか「おそろしい子……!!」って言ってくれるおかげで、浮きたってくるものなのかなと。そういう意味では、私自身は当たり前のことしかしていない気がしますね。もちろん自分の中では「ハードルが高いな」と、お芝居に入る前は思っていますが、いざ芝居に入るとそんなことも忘れてワーッとテンションが上がってしまうタイプなので、今回もマヤの天才ぶりは周りのみなさんのセリフにかかっています(笑)。

 

――メインキャストは前回とまったく同じ座組ですが、貫地谷さんの目から見た、一路さんの月影先生、マイコさんの姫川亜弓はいかがですか。

一路さんは宝塚歌劇団でずっとトップをはられていて、その後も舞台の世界で大活躍されている大先輩の女優さん。本当にカッコイイ方なのですが、いざ一昨年稽古場に入ってみたら意外にも、箸が転んでも可笑しくなっちゃうような方で、何かあると最初に笑ってくれるのが一路さんなんですね。いつも現場のあたたかな空気を作ってくださって、本当にありがたいです。
マイコさんは亜弓やマヤと一緒で、すごくストイック。前回は、一幕は序盤しか出番がなかったはずなのに、一幕が終わった時に誰よりも汗をかいているのがマイコさんだったんです。聞くと、二幕で踊るバレエのシーンのためにずっと袖で練習されていて。そんな姿を目の当たりにすると、私も「ああ、がんばらなくちゃ!」と自然に思えますし、「ライバルってこういうものなのかな」とも思います。

 

――そういう意味では、舞台上のマヤと亜弓の関係とも似てきますね。

そうかもしれないですね。でもふだんはマイコさんも一路さんとタイプが似ていて、ふわーっと柔らかい雰囲気なんですよ。

 

――小西遼生さんの速水真澄、浜中文一さんの桜小路優、東風万智子さんの水城冴子についてはいかがでしょう。

小西さんは本当に紫のバラの人みたい……な感じではなくて(笑)。あんな“冷血仕事虫”というより、みんなでごはんに行く時も自らどんどん仕切ってくださってひとつにまとめてくれるので、すごくありがたいです。
浜中さんは、ものすごく人見知りなんですよ。私毎年、舞台でご一緒しているのに、時間がたつとなぜか最初の状態にリセットされている感じなので「あれ? あんなに仲良くなってたはずなのに…」って。男子チームとはいつも和気藹々とやっているので、どうやら女子と話すのが苦手みたいです(笑)。だけど毎日稽古をしていると、自らいろいろなことにチャレンジして私のお芝居も引き出してくれるし、すごくいい存在だなと思っています。
東風さんは、前回いろいろお話した中ですごく印象的だったのが「女優としてというよりも女性として」ということ。この世界で生きていると仕事を通じて自分の存在を考えることはあっても、女性として、一人間として考えることを忘れてしまいがちなのですが、改めて自分のことを考え直す時間が持てて嬉しかったです。すごくハートがある方で、大好きです。

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――原作ファンも大勢いらっしゃると思いますが、原作を知らない人にはどう観ていただきたいですか?

芸能や演劇の世界って大勢の方が一度は憧れたりする世界だと思いますが、実はすごく泥臭いところでもあって。華やかなステージに上がるまでは、いろいろな苦労がある。そんな演劇の世界というものに触れられることも、この作品の魅力なんじゃないかなと思います。私たち自身もこの舞台を作る上ではすごく楽しんでやっていますし、きっとそんな思いもこれを観たら伝わると思いますので、とにかくワクワクしていただきたいです。それにしても、ビジュアル的にはみんなそれぞれ本当によく似ていると思いませんか?

 

――原作マンガの再現度がものすごく高いです(笑)。

特に衣裳やメイクは、ほとんど原作通りにしています。私が着ているTシャツもちゃんとりんごのマークが付いていたり、病院に月影先生を訪ねていく場面での亜弓さんはマンガとまったく同じです。「よくあの服を着こなせるな、マイコさん!」って感動しますよ。それぞれの衣裳やメイクには、ぜひとも注目してもらいたいです。それと今回G2さんはマンガ『ガラスの仮面』のセリフをとにかく全部書き起こして、それを組み立てて脚本になさったそうなんです。つまり原作とまったく同じセリフがたくさん出てきて、きっと読み込まれているコアなファンの方ほど「キターーー!」ってなると思いますので、その点も注目して観ていただけたら嬉しいです!

 

インタビュー・文/田中里津子

 

【プロフィール】

貫地谷しほり

カンジヤシホリ ’85年、東京都出身。’04年の映画『スウィングガールズ』で一躍脚光を浴び、’07年NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』で主演。’13年の初主演映画『くちづけ』ではブルーリボン賞主演女優賞を受賞。演技力には定評があり、映像、舞台、ナレーションなどジャンルを越えて幅広く活躍中。

 

【公演情報】

舞台『ガラスの仮面』

日程・会場:
2016/9/1(木)~11(日) 大阪松竹座

2016/9/16(金)~26(月) 新橋演舞場