「舞台に立つことってほんとに照れるし、何をやっても苦しい」と言う竹中直人がそれでも舞台に立ち続ける理由は、倉持裕という最愛のパートナーの存在が大きい。2011年にスタートした生瀬勝久との“竹生企画”では倉持を作・演出に招き、これまでに2作上演。加えて2013年には別ユニット、その名も“直人と倉持の会”を立ち上げ、彼とのよりコアな演劇作りに励んでいる。
竹中「舞台は『この人』と思ったらその人としかやらない。短い一生ですからね。倉持さんともこれから10年はやっていきたい」
一途な“熱愛”へと至ったきっかけは、倉持作・演出の舞台「まどろみ」(2008年)を観て「痺れちゃった」こと。
竹中「作品の全体的なムードが、観ていてとても興奮するっていうか。『この人が作っていく時間をずっと共有していたいな』と思ったんです。舞台ってほんと苦手なんですけど(苦笑)、この人とならどこか通じ合える何かがあるような」
倉持「実際、現場でも大事にしていただいていますし(笑)助けられています。竹中さんが一番素直に演出家の指示を聞いてくださる。そうすると他の役者もそうなりますし、ヘンな話し合いとかがない(笑)、演出家として理想的な現場になっている感じです」
直人と倉持の会の2作目「磁場」が12月に上演される。映画の脚本執筆のためホテルに缶詰になっている若い作家(渡部豪太)と、その映画の出資者(竹中直人)。男からの多大な期待に応えようと作家は奮闘するが、次第に重圧に押しつぶされ……。この物語の着想も、竹中との交流から生まれたもの。
倉持「よくお食事や映画に誘っていただくんですけど、勧めていただいた『フォックスキャッチャー』という映画がすごく面白くて、『ああいう男の関係っていいですね』と。あと、竹生企画はコメディ色が強いので、こちらではある程度シリアスなものがやりたかった。密室で追い詰められていく、ゾクリとするような心理劇になると思います」
ちなみに「フォックスキャッチャー」は、実在のレスリング選手とパトロンの、殺人事件にまで至った関係を描いた映画。
竹中「『あんな感じが好きなんです』と伝えたら、倉持さんもたまたまお好きだって。でもその先は全部お任せしてます。僕は基本的には現場主義で、稽古しながら感じていくものが積み重なったり、みんなの変化を見るのが楽しみ。“役作り”とかそんな気ないし、結果、『あ、そういう話ですね』っていうか、内容は後からついてくる気がするんです」
タイトルの「磁場」とは、竹中演じる男のイメージだとか。
倉持「結局この男に吸い寄せられるか、弾き飛ばされるか、みたいな話。今回は竹中さんに対して、何か悪意を持った怖い人間の役を書いてみたいと思いました」
ほぼ女優のみの前作「夜更かしの女たち」とは対照的に、今回は紅一点の大空祐飛以外、男性キャストで贈る。
竹中「祐飛さんとはさっき初めてお会いしましたが、お美しい方で。肩を抱いて『ヨロシクな! 宝塚なのかい?』なんてやってみたかったけどそんな風には近づけず、ご挨拶だけでした(笑)。彼女以外もほとんど初めての方ばかりで照れますけど、みんなの顔を見たら個性的で楽しそう。最高のキャストが集まったし、倉持さんの演出を受けたいので早く稽古が始まらないかなと。でも『その前に大地震が来たらどうしよう』って、心配はそれだけですね(笑)」
インタビュー・文/武田吏都
Photo/阿部卓功
構成/月刊ローソンチケット編集部 9月15日号より転載
写真は本誌とは別バージョンです。
【プロフィール】
竹中直人
■タケナカ ナオト 神奈川県出身。’90~’02年には岩松了と組み“竹中直人の会”で舞台作品を発表。俳優のみならず映画監督、声優、コメディアンなど多彩な顔を持つ
倉持裕
■クラモチ ユタカ 神奈川県出身。劇団“ペンギンプルペイルパイルズ”主宰。’04年、岸田國士戯曲賞受賞。現在、作・演出の舞台「家族の基礎~大道寺家の人々~」上演中
【公演情報】
直人と倉持の会 VOL.2 『磁場』
日程・会場:
2016/12/11(日)~25(日) 東京・下北沢 本多劇場
2017/1/15(日) 大阪・サンケイホールブリーゼ
2017/1/17(火) 島根県民会館大ホール
2017/1/19(木) ウインクあいち 大ホール(愛知県産業労働センター)
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