「夜が私を待っている」 入江甚儀&秋元才加&演出・河原雅彦 インタビュー

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英国人作家により1935年に書かれた
心理サスペンス劇の決定版!
いよいよ10/15(土)東京公演が開幕!

 

 気難しい老婦人が若くおとなしい姪と暮らす館を舞台に、ある事件を巡って複雑に絡まり合う人間関係を描いた心理サスペンス劇『夜が私を待っている』。英国の劇作家エムリン・ウィリアムズによるこの傑作戯曲が、入江甚儀、秋元才加、前田美波里ら魅力的なキャストを集めて日本初上演される。演出を担当するのは自らも個性派俳優でありながら、2006年に『父帰る/屋上の狂人』で第14回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞するなど、演出家としても高く評価されている河原雅彦。河原とはこれが初顔合わせとなる入江と秋元にも加わってもらい、稽古の手応えや作品への想いなどを聞いた。

 

――80年も前に書かれた作品だそうですが、読まれた時の感想としてはいかがでしたか。

河原 当時の時代設定や価値観は脚本から読み取れましたが、古さがどうというよりもとにかく「よくしゃべるなー」って思いました(笑)。翻訳劇の場合は毎回思うことなんですけど、やっぱり相変わらず80年前からたっぷりしゃべるんだなあ、と。あと、各登場人物がすごく魅力的に描かれていますので、それぞれを追いかけるだけでも面白く思っていただけるようにしたいなと思いましたね。タイプとしては昔の横溝正史シリーズみたいな感じで、つまりだいたい犯人はゲストの女優さんなんだろうなと、犯人をわかった上で楽しむものだというか。つまり犯人探しがこのお芝居の肝ではなく、おそらく物語の運び方とか、登場人物たちが作り出す空気のほうが重要になるんです。だけど本当に、今回は登場人物のキャラクターが立っていて面白いので、きっと楽しく観られる作品になるんじゃないかと思いますよ。

 

――お客さまには、どんな風に観ていただきたいとお考えですか。

河原 実際に観ていただいたら、もう一目瞭然なんですけどね。芝居が始まってすぐに犯人はわかっちゃうと思うんです。心理サスペンス劇だと「犯人はこの人なのかなあ」って思わせるミスリードがあったりもするんですが、これは犯人がわかった上で物語を進めていくので。だからこそ、その時々の駆け引きを興味深く観ていただけるよう、全編それで引っ張るしかない。そしてもう、今回はとにかく入江くんにかかっているので! もしも入江くんがコケたら、みんなコケるしかないので!(笑)

入江 僕も自分にかかっているなということは、稽古が始まる前からわかっていました(苦笑)。僕がこの一家を手のひらで転がしていって、次々にプチプチッてしながら攻略していくわけなので……。

秋元 プチプチッて……(笑)。

入江 僕としては、そういうダンの危うさや、生まれたての狂気みたいなところも楽しんでもらいたいです。パーフェクトに犯行を進めていくわけではなくて、どこかに若さや脆さが出てきてしまう。そこにある種の可愛さが見えたりしても、それはそれで面白いのかなって思いますしね。

 

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――ダンって“絶対的な魅力”がないと成り立たない役ですよね。

入江 そうですね。

河原 ぜひ、それがないと成立しない難しい役だって書いておいてください(笑)。

 

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――(笑)、でも秋元さんがやられるオリヴィアというのも複雑な役ですよね。

秋元 台本を読んだ時も難しいなと思ったんですけれど、稽古をするにつれて、やればやるほどいろいろな自分がぶわーっと出てきてしまって。いったん混乱はしそうですが本番に向けてまとめていくしかないですね。最終的に「やりがいのある役でした!」と言えるようにがんばりたいなと思っています。

 

――演出はどんな感じにする予定ですか。戯曲には、ものすごく細かく指示が書かれていましたが。

河原 ああ、いろいろ命令してきますよね(笑)。稽古中は、そこまで細かく台本をチェックしながらやっているわけではないんです、俳優さんがやっている姿のほうを見ているから。親切なト書きも多いので効果的なものはもちろん生かしますが、でもあまりト書きにはとらわれ過ぎずにやっていきたいです。

 

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――やりにくくはないですか。

河原 だってこれは80年前の戯曲ですから。僕自身はあまり考えないようにしています。現代を生きている人間たちでやるのでどうしてもスピード感は違ってくるし、だいたい当時とは観客層も違うだろうし。でも逆にその当時書かれたことを正確にやったら、意外と新鮮に映るかもしれないですよね。だから現代的にスピーディーにやるよりも、これはクラシカルなものなんだと意識してやったほうがいいのかなとも思い始めています。ま、確かに無視したくなるト書きや“間”もいっぱいあるんですけど(笑)、やっていくうちにその“間”はいる、いらないというのもわかってくるだろうし。なにしろ、心理サスペンス劇ですから。その“間”の余白でお客さんがいろいろと考えるわけなので、その余白にこそ見どころがあるのかもしれませんからね。だけどつい稽古ではみんな“間”を飛ばして、スッスッと進んじゃうんですよ。

秋元 “間”を待つことに耐えられなくなっちゃうんです。特にダンと私の場面とか、「ちょっと聞いてくれよ」みたいな雰囲気でしゃべりだすことが多いので、それまでの会話劇としての“間”と、どっちの速さに合わせたほうがいいのか、悩んでしまって。

入江 ああ、確かにスピードが全然違いますよね。

秋元 語り手みたいになったり、会話劇みたいになったり。だからすごくハイブリッドというか、「混ざってる!」っていう面白い感覚ですね。

河原 僕、秋元さんが途中でさらっと「ここにいる私たちみんな、平凡なイギリス人ですわ」と言う場面が、めっちゃ面白くて仕方がないんですよ。秋元さんのセリフだからまだ良かったけど、もしこれを岡部(たかし)さんが言っていたとしたら。

入江秋元 アハハハハ!

河原 それだけで笑える場面になっちゃうよ。こういう翻訳劇って日本人がやるのは、やっぱりねえ。秋元さんならオリヴィア的な感じもあるけど、入江くんが演じるダンなんか、巷ではベイビーフェイスって呼ばれてるし(笑)。美波里さんは確かにブラムソン夫人、って感じだけど。

入江 うんうん、ピッタリですよね。

河原 人によっては嘘だろ?って人も。

秋元 岡部さんはヒューバートというより、やっぱり岡部さん!って感じ(笑)。

河原 久ケ沢(徹)さんもスコットランド・ヤードにはいそうもないし。でもまあ、ちゃんとイギリスの、クラシカルな翻訳劇の空気になるようにみんながんばってくれるはずですから。とりあえず主要キャストだけはなんとかイギリス人ぽいですから、新鮮に楽しんでいただけると思いますよ!

入江 そう見えるように、精一杯がんばります(笑)。

 

 

【公演情報】

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心理サスペンス劇
夜が私を待っている
NIGHT MUST FALL

日程・会場:
2016/10/15(土)~30(日) 東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
2016/11/12(土) 宮城・仙台電力ホール

★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!