世田谷パブリックシアター開場 20 周年記念公演『子午線の祀り』 野村萬斎による新演出、新キャストにより、今夏、あらたな幕を開ける !

子午線の祀り画像

「見るべき程のことは見つ。今は自害せん」
「平家物語」に題材をとった木下順二の不朽の名作が、世田谷パブリックシアター芸術監督・野村萬斎による新演出、新キャストにより、今夏、あらたな幕を開ける !

 

『子午線の祀り』は、「平家物語」を題材に「天」の視点から人間たちの葛藤を描き、平知盛や源義経を始めとする源平合戦にかかわった登場人物たちを躍動感をもって浮き彫りにし、心理描写も巧みな壮大な歴史絵巻に仕立て上げました。また日本語の「語り」の美しさと荘厳な響きを引き出す「群読」という独特な朗誦スタイルが随所に用いられ、演劇史に確固たる地位を築いてきた傑作です。(78 年度読売文学賞受賞)
能・狂言、歌舞伎、現代演劇で活躍する俳優、スタッフがジャンルを越えて創り上げ、日本演劇史をひとつの作品で体現する唯一無二の舞台として、高く評価されてきました。
その伝説的な舞台が、芸術監督・野村萬斎の新演出により、今夏あらたなステージへ踏み出します。

 

各ジャンルから、総勢 31 名が集結
新中納言知盛は、1999  年の新国立劇場公演より、これが三演目となる野村萬斎です。享年  34 の悲劇の武将・知盛を 1999 年当時 32 歳で演じた萬斎の、古典芸能の朗誦術に裏打ちされた圧巻の台詞運びと、ひ ときわ輝く鮮烈な存在感が高く評価され、2000 年の第 7 回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞するなど大きな 話題をさらい、04 年での再登板につながりました。今年、世田谷パブリックシアター開場記念日の 4 月 5  日に 51 歳となった萬斎は、更に知盛像を深めるとともに「見るべき程のことは見つ。今は自害せん」という知盛の 最期の台詞に、新たな響きをもたらすに違いありません。

そして今回の注目すべき配役の一つと言えるのが、九郎判官義経役を成河が演じることにあります。初演は萬斎の父で狂言師の野村万作が演じ、その後市川右近(当時/現在は市川右團次)など歌舞伎俳優が 演じた古典芸能の俳優の役どころを、今回初めて小劇場出身の成河が演じることになりました。当劇場の代 表作のひとつ『春琴』(08 年初演)への出演のほか大劇場から小劇場、台詞劇からミュージカル、パフォーミン グアーツにまでまたがる現在の成河の活躍ぶりからしてみれば当然の流れかもしれませんが、まさに現代演劇 界の人気実力を兼ね備えた俳優・成河が演じる義経は 2017 年版『子午線の祀り』を象徴する役どころとなる でしょう。必見です。

さらに知盛の兄・宗盛役には前進座歌舞伎より河原崎國太郎を迎えます。今後前進座を支えていく若手歌舞伎俳優、松浦海之介、嵐市太郎の二人が出演することも今作の期待値を高めます。さらに、梶原平三景時を文学座所属の実力派俳優、今井朋彦が演じます。源頼朝の命を受けて義経を監視する源氏方のいわば高級官僚役を知的な鋭敏さが際立つ今井がいかに演じるのか楽しみです。また初演時には名優・滝沢修が演じた阿波民部重能には村田雄浩が扮します。地方豪族の荒々しさ、知盛をそそのかし世界征服を夢見るような豪快なふてぶてしさを、村田ならではの存在感・演技力で発揮するこ とでしょう。

そして影身の内侍を演じるのは、昨年 10 月のリーディング公演に続き、若村麻由美です。今回、演出も兼ねる萬斎は、影身役を宇宙の中心、時空を超える存在ともとらえています。その視座の中に、知盛も義経も存 在することになるのです。その全宇宙と時空の中心にしっかりと在る影身を演じられる女優は若村しか思い当 たらないという萬斎たってのキャスティングが実現しました。また第一期公演から本作に名を連ね、本作でも『子午線の祀り』のイズムを伝える佐々木梅治、観世葉子 などの俳優陣のほか、岩崎正寛以下 13 名は、萬斎自らの厳しいワークショップ&オーディションを経て選ば れた、今後の現代日本演劇界を支えていくであろう新鋭の俳優陣です。彼らの力強い群読にもご注目くださ い。

 

作品の歩み
初演は今を遡ること 38 年前の 1979 年。演出には総合演出者・宇野重吉のほか、観世榮夫、酒井誠、高瀬精一郎、木下順二ら多様なジャンルの重鎮が名を連ねました。また平知盛を嵐圭史、源義経を萬斎の師父である野村万作、阿波民部重能を滝沢修、影身の内侍を山本安英が演じています。
その後も上演を重ね、1999 年・新国立劇場公演、2004 年・世田谷パブリックシアター公演では野村萬斎が平知盛役を務めました。
そして今回は、満を持して萬斎自ら演出にも挑みます。

 

野村萬斎  コメント  (演出・出演)
『子午線の祀り』は、演劇の原体験

昭和最大の戯曲と言われている『子午線の祀り』。私の父(野村万作)が 1979 年の初演 に源義経役で出演していたので、中学生の時に初演を観ています。いわば、私の演劇の原 体験です。その後、私は 1999 年と 2004 年に平知盛を演じ、またこの度、初めて演出も務め させていただくことになりました。
作者の木下順二さんは、英文学者でもありご自身でシェイクスピア作品を翻訳されていま したが、シェイクスピアもギリシャ悲劇も集約して日本の「平家物語」という物語の中に落とし込 まれました。そのようにして生まれた『子午線の祀り』を世田谷パブリックシアター開場 20 周年 に上演することが叶い、“運命”というものを感じます。私は狂言の家に生まれ伝統芸能の継承 者として自分の運命について常に自問してきました。また「平家物語」を語る、というのは能・ 狂言師の朗誦術を生かすことができます。そして現代演劇においてもギリシャ悲劇の登場人 物を演じたり、シェイクスピア作品の出演・演出を手掛けるなどさまざまな経験をさせていただ きました。そうして培った私の“運命論”“宇宙観”というものは、今の私の大事な創作のテーマ になっていますが、思い返せば、この『子午線の祀り』に原点があるのです。
新しいキャストの方々をお迎えして上演する 2017 年版『子午線の祀り』は、登場人物たち の魅力的な内面性と、すべての人間の運命を包み込む宇宙の壮大なスケール……ミクロと マクロを舞台上に描き出したいと思っています。タイトルにある“子午線”とは、自分の立ってい る場所の天頂と北極の地軸の延長線上を結ぶ線をあらわす天文用語であり、宇宙における 自身の座標軸との延長線にあるともいえます。まさに客席にいながらにして、宇宙の中にいる ような感覚、“子午線”を感じていただけるような作品にしたいと存じます。ぜひご期待ください。

 

今回の上演に向けて/16 年 10 月リーディング公演
世田谷パブリックシアターでは、リーディング形式での試演を通して、本公演の上演へ発展させるという試みを行っています。
本作でも 7 月の本公演を見据え、野村萬斎演出・出演、若村麻由美などを迎えて 2016 年 10 月にシアタートラムにて「戯曲リーディング『子午線の祀り』を読む」を上演しました。『子午線の祀り』の見どころのひとつである、独誦から複数の俳優による合誦を組み合わせつつ朗読する「群読」シーンを中心に、名場面を抜粋した戯曲リーディングからは、本公演へとつながる新たな発見を得ました。
そしていよいよ 2017 年 7 月、芸術監督・野村萬斎の新演出、新キャストによりあらたな幕が開きます。

 

物語
歴史上名高い源平の合戦。次第に平家の旗色は悪くなるばかり。兄・平宗盛(むねもり)(河原崎國太郎)に代わり平家軍を指揮する平知(とも)盛(もり)(野村萬斎)は、一の谷の合戦で、源義経(成河)の奇襲を受け、海へ追い落とされる。
以来、武将となって初めて自分に疑いをもちつつ、知盛は舞姫・影身(かげみ)の内侍(ないし)(若村麻由美)を和平のため京へ遣わそうとする。
平家を支える四国の豪族・民部重能阿波(あわのみんぶしげよし)(村田雄浩)は、三種の神器を楯に主戦論を唱え、知盛を立てて新しい日本国の存立を画策しようとする。知盛は平家滅亡を予感しながらも、後白河法皇の過酷な要求を拒絶し、徹底抗戦の道を選ぶのだった。
一方、源義経は、兄頼朝から目付役として遣わされた時梶原景(かじわらかげとき)(今井朋彦)と対立しながらも、源氏方の先頭に立って慣れぬ海戦も乗り越えますます勢いづいていく。
そしてついに両軍は壇の浦の決戦の日を迎える――。

 

【公演概要】
世田谷パブリックシアター開場 20 周年記念公演
『子午線の祀り』

日程:2017/7/1(土)~23(日) 
    *プレビュー公演 7/1 (土)~3(月)
      *本公演 7/5(水)~23(日)
会場:世田谷パブリックシアター

作:木下順二

演出:野村萬斎
音楽:武満徹

出演:

野村萬斎/成河/河原崎國太郎/今井朋彦/村田雄浩/若村麻由美
佐々木梅治/観世葉子/小嶋尚樹/星智也/月崎晴夫/金子あい/円地晶子/篠本賢一/内田潤一郎/時田光洋/松浦海之介/嵐市太郎
岩崎正寛/浦野真介/駒井健介/西原康彰/神保良介/武田桂/遠山悠介/三原玄也/森永友基/宇田川はるか/香織/田村彩絵/吉川依吹

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