2017年8月10日(木)、日本総合悲劇協会 vol.6『業音』が東京芸術劇場シアターイーストにて開幕した。舞台写真の公開、更に松尾スズキ&平岩紙よりコメントが到着した。
その模様はこちらのレポートにて。
人間の“業”を純粋に真正面から描いた、松尾スズキの傑作舞台が再び!
鬼才・松尾スズキによる伝説的舞台『業音』が15年ぶりに復活した。本公演は大盛況だった東京公演を経て、現在全国を巡演中だ。
松尾スズキはこれまでに、エロスとタナトス(生と死)をテーマにした作品を数多く創出してきた。『業音』はそのひとつの頂点を極めたとも言える、まさに彼にとっての代表作で、当時問題となっていた貧困、介護、宗教観といった時事性を盛り込みつつ、“欲”のままに生きる人間の姿を、毒々しいエッジを利かせながら描いている。
注目はプロデュース公演でありながらも、ほぼ「大人計画」の劇団員で構成された配役だ。初主演を務める平岩紙をはじめ、皆川猿時、池津祥子など、今ではすっかりお茶の間の顔となった面々が、ホームグラウンドならではの雰囲気の中、狂気的な存在感を振りまいている。彼らが表現するのは、己の欲にひたすら真っ直ぐ突き進む“業”まみれの人間たち。例えそれが間違った方向だとしても、彼らは立ち止まることができない――。松尾スズキは、そうしたギリギリに追い詰められた人間たちの、“わかっちゃいるけど、やめられない”という性を剥き出しに描いている。何より素晴らしいのは、洪水のように押し寄せる緻密な言葉(セリフ)で喜劇性と悲劇性を同時に表現し、作品全体をエンターテイメントとして昇華させている点だ。
15年前、演劇界はこの衝撃的な作品の登場に震撼した。そしていま、物語に込められた普遍性に改めて驚かされる。全国公演が終われば、パリでの上演も決定している本作。世界も注目するこの舞台をぜひお見逃しなく!
文:倉田モトキ
撮影:田中亜紀
【あらすじ】
限りなく深い人間の“業”が奏でる物語…。
母の介護をネタに、演歌歌手として再起を目指す落ちぶれた元アイドルの土屋みどり(平岩紙)は、借金を返すために、マネージャー・末井明(皆川猿時)と共に自身が運転する車で目的地に向かっていた。途中、自殺願望を持つ夫・堂本こういち(松尾スズキ)と、夫をこの世につなぎ止める聡明な妻・杏子(伊勢志摩)と遭遇し、不注意から杏子を車ではねてしまう。杏子は脳を損傷し、一生涯植物人間として生きる事に。怒り狂った堂本は責任を迫って、みどりを拉致連行し、 “有罪婚”と称し、二人は結婚。奇妙な共同生活が始まる。
芸能界を夢見て東京に出てきたものの、結局体を売る事でしか生きていくことの出来ない堕落した兄弟・克夫(宮崎吐夢)・ぽんた(池津祥子)、年を偽わってまでも孤児院に入る事に執着する屈折したゲイ・不動丈太郎(村杉蝉之介)、正体不明の老婆・財前とめ(宍戸美和公)らを不幸のループに巻き込み、負の連鎖は更に奇怪にうねってゆく…
やがて、末井とも関係を持つみどりは、父親がわからない子を身ごもり出産するのだが、堂本との時間に執着し、子供の命を引き換えにしてまでも、「10ヶ月の夫婦生活の元を取るため」と、堂本とのわずかな触れ合いを選択するのだった。
“それ”をやらなければ物事は上手く運ぶのに、どうしてもやらずには先に進めない各自の“固執”。その“固執”が“業”を生み、空回りするそれぞれのエネルギーは、不協和音のような音楽を響かせてゆく・・・
【公演概要】
大人計画/日本総合悲劇協会 vol.6「業音」
日程・会場:
東京公演 2017年8月10日(木)〜9月3日(日) 東京芸術劇場 シアターイースト ※公演終了
名古屋公演 2017年9月13日(水)〜14日(木) 青年文化センター アートピアホール
福岡公演 2017年9月16日(土)〜18日(月・祝) 西鉄ホール
大阪公演 2017年9月21日(木)〜24(日) 松下 IMP ホール
松本公演 2017年9月29日(金)〜30日(土)まつもと市民芸術館 実験劇場
パリ公演 2017年10月5日(木)〜7(土) パリ日本文化会館
作・演出:松尾スズキ
出演:
松尾スズキ、平岩紙、池津祥子、伊勢志摩、宍戸美和公、宮崎吐夢、皆川猿時、村杉蝉之介
康本雅子+エリザベス・マリー (ダブルキャスト)
★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!