ミュージカル『Romale』 花總まりインタビュー

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今まで誰も見たことのないカルメンをお見せしたい

 

19世紀に描かれたメリメ原作「カルメン」をベースに、ロマ族としてカルメンがどのように生き抜いたのかを、演出・振付の謝 珠栄の視点で描くミュージカル『Romale~ロマを生き抜いた女 カルメン~』。2008年に上演された『Calli~炎の女カルメン~』をもとに、台本・音楽を一新して、これまでの小説やオペラなどでは表現されなかった部分をより強く舞台上に具現化していく。本作でカルメンを演じることになったのは、宝塚歌劇団在団時にもカルメンを演じたことがある花總まり。久しぶりにカルメン役に挑む彼女に、その意気込みを聞いた。

――カルメンは宝塚歌劇団で娘役トップスターだったときにも演じていらっしゃいます。カルメンという女性にどのような印象をお持ちでしょうか。

花總 「やはり皆さん、なんとも言えない魅力の持ち主だと感じていらっしゃいますよね。だからこそ興味を持ちますし、惹かれてしまう。以前に私がカルメンを演じたときは、野性的で自由に生きる女性というイメージがありました。それが一般的なものだと考えていましたし、そのイメージをもとに取り組んでいたのです。けれど、今回はもう少し深く演じてみたいですね。カルメンの中に流れる血、ロマ族として生まれ育ったからこそ持つ強さや悲しさ、そういう様々な感情を彼女は抱えている。そこからホセとの出会いによって、さらに苦しいほどに切ない思いというのが生まれてくる…。もちろん、前回のときも一生懸命深めようとしていたのですが、今回はそこを謝先生と深くお話をして作っていけたらいいなと思います」

 

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――カルメンの魅力とは、どのようなところにあると思いますか?

花總 「これまで私が演じさせていただいた役の中でも、生きるエネルギーを持った女性はたくさんいると思うんです。けれど、カルメンはそのエネルギーに加えて、カルメン以外の誰も持っていないような燃えたぎる情熱がある。そこが、ちょっと他の役とは違う印象です。ロマ族として生まれながらにして持っているもの、持たざるを得なかったもの。そういういろんなものを背負って、必死に生きて、必死に愛を知って生きている。それが妖しくもあって。そういう彼女しかないものを周りから見たときに、すごく痛かったり、でも魅力的に輝いていたり。何かとてつもないものを持っている気がするんです。だから、本当に演じるのが楽しみです」

 

――演出などはまったく違う形になりますが、同じ役をまた演じられることについてはどのように感じていらっしゃいますか?

花總 「カルメンを再び演じることが決まってから『カルメンが好きだった』、『もう一度、観たい役でした』というお声を皆さんからいただいて。ある意味プレッシャーでもあるのですが、そこは今の私ならではのカルメン像を作っていければと思っています。いい意味で期待を裏切りたいですね。最近はカルメンのような女性の役からは離れていたので、私自身もすごく新鮮。私じゃない人が演じているような、という言い方も変ですけど、皆さんの想像を超えていきたいですね」

 

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――ビジュアルイメージは目が非常に印象的なものとなっています。衣裳などはまだこれからと聞いていますが、現時点でのイメージは湧いていますか?

花總 「宝塚歌劇団のときは、黒塗りで肌を黒くしたのですが、今回どのようにするかはまだ決まっていません。でもイメージビジュアルを撮影するときにいくつかパターンを撮影した中で、謝先生が“目をアップで撮りたい”とおっしゃって。やはり、カルメンは目が“効く”のでしょうね(笑)。目が勝負、と感じています。実際に舞台でも、目がものを言うじゃないですけど、目を効かせていきたい。カルメンを演じるうえで、そういう目の持ち主でありたいと思います」

 

――今回の演出は、宝塚歌劇団のころから長くお付き合いのある謝 珠栄さんですが、謝先生の演出についての印象は?

花總 「謝先生は本当にパワフルな方。きっとお稽古もすさまじいものになるのではないかと。納得いかないことは、笑いながらも謝先生の想いをバンバンぶつけてくださるんですね。それに負けまいと自分もついていくのですけど、笑いながらも悔しくて力が湧いてくる。時間を忘れてお稽古に没頭することができるんです。きっと、私のまた新しい扉や引き出しを見つけてくださると思います。たぶん、すごいエネルギーで接してくださると思いますから(笑)。私のよいところも悪いところも、苦手なところも全部ご存じで、私自身すべてをさらけ出していけるから、きっとよい作品が生まれると思います」

 

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――役作りは普段どのようにしてらっしゃいますか?今回のカルメンという役は、花總さんご本人のイメージからするとかなり違う女性像だと思いますが。

花總 「わかりませんよ(笑)。でもまさに今、話ながらもどんどん思いついていくというか。もちろん役によって、原作があったり、実在の方であれば資料があったり、いろんな資料が残っていたりしますが、私は、最終的には台本。台本の中には、その人物が喋っている言葉があるじゃないですか。なぜその言葉を発したのか、その裏じゃないですけど、そこから想像を膨らませていくことが大切だと思っています。もちろん演出家の方とお稽古やお話をしながら作っていく部分もありますが、セリフから読み取るのが好きですね」

 

――カルメンに魅了されてしまう男・ホセ役は松下優也さんが演じられますが、彼の印象は?

花總 「実は、ビジュアル撮影の際に入れ違いになって、そのときに一瞬お会いして、ご挨拶しただけなんです。『よろしくお願いします』以外の言葉を交わしていないので、まだあまり存じ上げていなくて。ただ、私の中ではクールな印象があるのですけど、テレビで拝見したときに関西弁でお話しされていて、そこにギャップを感じました。いったいどんなホセを魅せてくれるのか。初共演ですし、どんな化学反応が起こるのかとても楽しみです」

 

――ちなみに、ホセがカルメンにハマってしまうくらい、花總さん自身がハマってしまっていることはありますか?

花總 「どうでしょう。ホセほどハマり込むことはなかなかないですよね(笑)。でも、やはり演じることには我を忘れるくらいハマります。役を引きずることはあまりないですけど、公演中は何をしていても役のことが浮かんできますし、夢の中にまで出てきますから」

 

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――今年は大河ドラマに出演され、映像作品での活躍も今後期待されるところですが、映像作品と舞台との両方を経験してみて、それぞれの魅力や違いなどは感じられましたか?

花總 「映像作品については、まだ本当に少ししか経験がないのですけど、“演じる”という点については一緒なのだなと思いました。ただ、映像は役者の皆さんの瞬発力がすごかったですね。一方で舞台は持続力。始まったら3時間、持続する力が必要だと思うんですけど、映像はその一瞬一瞬で、流れと違っても演じていく。そこが難しいところではあるのかなと思います。あとやはり、舞台は生なので。生の緊張感、生の良さは舞台ならではですね。作品にもよりますが、お客様の様子や空気感は伝わってくるんです。それを受けて、カーテンコールのときには会場の皆さんのお顔が見られるので、喜んでくださっている姿を見ると頑張ってよかったなと思いますね。直に感じられる舞台の大好きなところです」

 

――最後に、公演を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

花總 「改めてカルメンを演じられる嬉しさもありますが、今までにないカルメンをお見せしたいとも思っています。謝先生をはじめとして、素晴らしいスタッフ、キャストの方々が集結しているので、必ず見応えのある作品になるはず。一致団結して頑張りたいと思います」

 

インタビュー・文/宮崎新之
ヘアメイク/鈴木麻衣子
スタイリスト/滝沢真奈
衣裳協力(ドレス、ピアス、靴)/CH CAROLINA HERRERA 銀座店 03-6274-6957

 

【プロフィール】

花總まり

■ハナフサ・マリ 1991年に宝塚歌劇団に入団し、’94年に雪組トップスターに就任。’96年日本初演「エリザベート」のエリザベート役をはじめ、「激情-ホセとカルメン-」、「ベルサイユのばら」など、数々の大作でヒロインを演じた。’98年に新設された宙組へ組替え。歴代最長となる12年3ヵ月もの間娘役トップスターを務めあげ、2006年に退団。以後ミュージカルを中心に活動し、’15年に「エリザベート」で読売演劇優秀女優賞、菊田一夫演劇賞の大賞を受賞。’17年にはNHK大河ドラマ「女城主直虎」に出演、今秋より放送のドラマ「精霊の守り人」への出演も決定している。

 

【公演情報】

演出・振付:謝 珠栄
台本・作詞:高橋知伽江
原作:小手伸也
音楽監督・作曲:玉麻尚一
作曲:斉藤恒芳
出演:
花總まり
松下優也
伊礼彼方、KENTARO、太田基裕
福井晶一
団時朗
一洸、神谷直樹、千田真司、中塚皓平、宮垣祐也

 

日程・会場:
2018/3/23(金)〜4/8(日) 東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2018/4/11(水)〜21(土) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ(大阪府)