ハイバイ『ヒッキー・ソトニデテミターノ』 岩井秀人 インタビュー

岩井
岩井秀人の“私演劇”が5年ぶりに再演

岩井秀人の『ヒッキー・ソトニデテミターノ』は、岸田國士受賞作『ある女』と同じ2012年に初演された。ハイバイの旗揚げ作『ヒッキー・カンクーントルネード』の続編にあたり、高校時代から数年にわたり引きこもっていた岩井自身を投影させた主人公・登美男を軸に、家族や社会を描いた衝撃作だ。

岩井「劇作家としては“引きこもりでした”ってことを書いてスタートしたので、“その後”をちゃんと考えてみようという思いがずっとありました。そして引きこもりを外に出す“レンタルお兄さん”の事務局や、引きこもりの仮住まいのための寮へ取材に行ったんですが、僕も引きこもりから出る際に少しでも違う選択をしていたらここでお世話になってたんだなって感じがものすごくあって。ただ、僕はたまたま何かの事故が重なって外に出たけど、『出て良かったね、すごいね』と言われると、よくわからない。出たってことだけにクラッカーを鳴らすの、ちょっとやめてくれませんかと思っていて(笑)」 

 

そんな岩井の思いは、『~カンクーントルネード』のラストが上演のたびに変わることにも表れている。

岩井「出て良かったのかどうか、どっちにでも受け取れるように書いたのに、どうしてもみんな“出られて良かった”って受け取りたがるんですよね。だから両方の可能性を残したくて『〜ソトニデテミターノ』ができたんだと思います」

 

5年ぶりの再演となる今回は、初演で吹越満が演じた登美男役を岩井自身が演じる。

岩井「どんどんシンプルにしていこうと思っていて。“私演劇”っていうか、自分が登美男を演じるとドキュメンタリーにもなりますから。やることの意味しかない。シンプルです(笑)」 

 

なお今回は東京のほか、新潟・三重・兵庫公演、そして初のパリ公演も行われる。活動の場がどんどん広がる岩井だが、“根っこ”は昔と何も変わっていないと言う。

岩井「隠すのが上手くなっただけで、人の目線や沈黙は今でも怖い。ただ僕、あるとき『自分の欲望のためだけに生きていいと仮定しよう』と思って、大いにキャラ変して出てきたんです(笑)。みんなに好かれるようにはできないし、結局自分が思うようにやるしかないですから」

 

そう語る岩井の言葉は強く、迷いはなかった。

 

インタビュー・文/凜
Photo/平岩享

 

※構成/月刊ローチケHMV編集部 11月15日号より転載
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掲載誌面:月刊ローチケHMVは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布

 

【プロフィール】
岩井秀人
■イワイ ヒデト ’74年、東京都出身。’03年にハイバイを結成。’13年ハイバイ「ある女」で岸田國士戯曲賞を受賞。

 

【公演概要】
ハイバイ「ヒッキー・ソトニデテミターノ」

日程・会場:
’18/2/9(金)~22(木) 東京芸術劇場 シアターイースト
2/25(日)14:00/18:00 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
3/3(土)・4(日) 三重県文化会館 小ホール
3/8(木)~10(土) 兵庫・AI・HALL

作・演出:岩井秀人
出演:
岩井秀人、平原テツ、田村健太郎、チャン・リーメイ、
能島瑞穂、高橋周平、藤谷理子、猪股俊明/古舘寛治