ミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」
鹿賀丈史&市村正親 インタビュー

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ミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」で“夫婦”役を演じている鹿賀丈史&市村正親が、コンビ結成10周年を迎える。トニー賞6部門受賞など傑作ミュージカルとして知られている本作は、ミュージカル版は上演され、日本でも同年に初演が行われた人気の演目。2018年3月からの再演に向け、ふたりにその胸中を聞いた。

 

勝手はわかっている間柄でも、毎回新鮮な気持ちになる(鹿賀)
やっぱり45年の歳月はぬぐうことができないもの(市村)

 

――このコンビでの「ラ・カージュ・オ・フォール」は10年を迎えることになります。10年を振り返ってみて、いかがでしょうか。

鹿賀「あっという間の10年でしたけれども、毎回毎回、気を抜けるような芝居でもないものですから、ひとりでもお客さんに楽しんでいただこうという気持ちでやってきました。また新しい気持ちでやっていきたいなと思います」

市村「僕はもう20年くらいこの役をやっているんですけど。僕も丈史も脂の乗ったいい時期ですから。今回はハードゲイでいきますよ。俳優になろうと思った時から、ゲイ(芸)に目覚めていますから。丈史だって、そのケはある(笑)」

鹿賀「役の上で、ですよ(笑)。やっぱり普通の男性の役を演じるのとは少し違うから、やっていて面白いですよ。前の台本にはあんまりジョルジュに女性的な要素はなかったんですよ。でも、そこをいじってゲイの匂いが出るように変えました」

 

――この10年で、お互いに変わったところはどこでしょうか?

鹿賀「いっちゃんはね、変わったというよりもますますパワーアップしたね。あちこち痛いなんかは言っているんですけど(笑)、そんなことを感じさせないエネルギーはやっぱり凄いと思いますね」

市村「心の奥底の想いが深くなった気がしますね。表面的なものよりも、この10年は男性にとっては、色々な想いが…心のひだのようなものが増えてくるんだと思いますよ。そういうものは表には出さなくても、演技の瞬間瞬間に出てくるものだからね」

 

――ご自身でこの10年で変化したことはありますか?

市村「僕にとってはこの10年で2児の父親になったことですよね。まさか僕が父親になるなんて、誰も思ってなかったでしょうから(笑)。親孝行が出来たかなと思います。それに、子どもができたことで、ジャンミッシェルの気持ちも分かるようになったり、屋根の娘たちの気持ちもわかったり…。今までは感じることが出来なかった親心を感じて、演じることができるようになったかな。感謝ですね」

鹿賀「僕は基本的には変わってないと思うんだけれども…。ずっとウォーキングをやっていたんですけど、もうそれじゃ間に合わないのでジムに通い始めたり、これからも人間ドッグに入ったり(笑)。舞台に備えて、やることはやっていこうというふうになりましたよ。やはり舞台で1カ月公演なんかをやるとなると、相当なエネルギーを使うことになりますから」

 

――この2人だからこそできる、強みとはどのような部分にあると思いますか?

市村「やっぱりね、45年間の歳月っていうものはぬぐうことが出来ない。だって凄いことですよ。まだ僕が20代の前半だった頃からの付き合いですから。劇団をやめる頃のことも、それぞれのいろいろなことを知っている。そんな僕らが見つめあうことを、お客さんが見ていること自体がもう凄いことなんです。お客さんの中にも、45年観に来てくださっているような方がたくさんいらっしゃいますから、ありがたいです。そういうものが、僕と丈史の中にはあるんだと思います」

鹿賀「芝居をしていても微妙な間とかね、そういうのが初めて芝居する人とはやっぱり違うんですよ。お互いに、阿吽の呼吸がある。それが劇場全体に広がっていくんじゃないかなと思いますね」

 

――お互いの演技などに対してアドバイスなんかはしたりするんですか?

市村「なんかいつも楽しいことばっかり言い合ってますよ(笑)。僕は下まつげの付け方はどうよ?とか、つけたほうがいいよみたいなアドバイスはしましたね。あとはチーク塗ってみたら?とか。そういう他愛もないことが多いね」

鹿賀「そうだねぇ(笑)。ジョルジュは、男性でありながら、女性の心も持っているという、そういう部分を出していけたらなというのは、公演を追うごとに増えていったような気がします。今回もまた、改めて作り直していきたいですね」

市村「ダンドン一家が来るときに、僕もアルバンおじさんにならなきゃいけないけど、ジョルジュもゲイだから男っぽくしなきゃいけない。ダンドン一家が来るまでの芝居と来てからの芝居の変化が、演出としては丈史とやってからの大きな違いだね」

 

――今回の舞台に向けて、なにか実現したいことやイメージされていることはありますか?

鹿賀「この10年で日本の世の中もずいぶん変わりましたし、情報量も増えました。1公演1公演の感想も、すぐに伝わってきてしまうような時代ですから(笑)。気を抜かずに毎回、一所懸命に面白おかしく真剣にやるということですね」

市村「ザザ、アルバン役は、僕は30代のころから演じていて、最初の旦那は細川(俊之)さん、次が岡田真澄さん。3人目の旦那が丈史で10年もやれています。面白おかしさだけじゃなく、ドラマをもう一回探って、それを今回見つけて表現できたらいいなと思っています。その作業が稽古であって、それを見つけたときに2018年のラ・カージュができるのかな」

鹿賀「この作品はナイトクラブが舞台で、ジョルジュは司会をしたりする役であって、芝居の中で芝居をしているんです。そこが面白いところで、プライベートな2人になったり、ショーアップしている2人になったりとそういう部分が非常に面白いと部分だと思いますね」

 

――そういう舞台、劇場ならではの変化も見どころですね。

市村「僕は劇場人間で、劇場が大好きで。でもそこに小屋があるだけじゃダメで、そこに俳優さんがいてお客さんがいて、照明があって、物語があって…。いろいろなものが集まって一つのものが出来上がっている。作るのも好きだし、観るのも好きだし。そこにひとつの異空間を作れるっていうのは、楽しいこと。その中から何かを学べたり、幸せになれたりすることができたらいいなと思います。こういう作品を通して携わることができて幸せだし、いつまでも携われたらいいですね」

鹿賀「この役を⒑年もやるとは思っていませんでしたし、いっちゃんとも長い付き合いでお互いに勝手もわかっているんだけども、やる度に新鮮な気持ちになる役でもある。今回もまた、稽古をして新しいお芝居を見せれたらなと思います」

 

インタビュー・文/宮崎新之

 

【公演概要】
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ミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」

日程・会場:
3/9(金)~31(土) 東京・日生劇場

4/13(金)~15(日) 静岡・静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
4/20(金)~22(日) 大阪・梅田芸術劇場メインホール

作詞・作曲:ジェリー・ハーマン 
脚本:ハーベイ・ファイアスティン 
原作:ジャン・ポワレ 
翻訳:丹野郁弓 
訳詞:岩谷時子・滝弘太郎・青井陽治 
演出:山田和也 
オリジナル振付:スコット・サーモン

出演:
ジョルジュ 鹿賀丈史
アルバン 市村正親
ジャン・ミッシェル 木村達成
アンヌ 愛原実花
ハンナ 真島茂樹
シャンタル 新納慎也
ジャクリーヌ 香寿たつき
ダンドン 今井清隆
ダンドン夫人 森公美子