元五輪代表フィギュアスケーター鈴木明子が梅棒 8th SHOW「Shuttered Guy」の稽古場見学!その模様をインタビュー&リポート
3月末より全国4都市5会場でのツアー公演を敢行する梅棒 8th SHOW「Shuttered Guy」。稽古にも熱が入る3月中旬、梅棒の大ファンだという元オリンピック日本代表で現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する鈴木明子さんが稽古場を訪問した。
梅棒は“踊りは気持ちだ!”をコンセプトに、ストーリー性のある世界観をジャズダンスとJ-POPでステージを彩るダンス集団。今作は、梅棒リーダーで作・総合演出の伊藤今人によるオリジナル描きおろし作品で、梅棒メンバー10人に加え多彩な実力派ゲスト11人が集結しノンバーバルパフォーマンスで会場を笑いと熱量であふれさせる。
忙しいスケジュールを縫って稽古場に現れた鈴木を、キャスト陣が大きな拍手で出迎えた。そして伊藤が前回の公演を観劇した際に、よほど気に入ってしまったのか使用されていた楽曲で鈴木が踊っているムービーが送られてきたことが明かされ、メンバーらは大盛り上がり。鈴木が見守る中、リラックスしたムードで稽古が再開された。
この時に稽古で行われていたのは、冒頭部分の楽曲で、アップテンポな女性ボーカルのナンバー。やや早めのテンポに合わせ、キャストが入れ代わり立ち代わりステージ中央で交差する。全体の動きを確認しながらも、移動のタイミングや揃える部分のキメ方、網羅されている伏線のような振りなどを細かくチェックし、微調整が行われていく。ともすれば勢いで踊ってしまえそうなノリノリの楽曲だが、実は緻密に構成されていることがわかる。
そして、振りの表現においても「もっとパンっと弾けた感じにしたい」「この部分はちゃんと客席にアピールできるように」と、曲のスピード感の中で細かくストーリーが観客に伝わるように調整されていった。
見つめる鈴木の表情は真剣だが、やはり大好きな梅棒の稽古を間近で見ることができたうれしさからか、頬はほころびを隠せない様子。終始笑顔で稽古を見守った。そして見学後の鈴木に、その感想と梅棒の魅力について存分に語ってもらった。
――今回、稽古場をご覧になってみていかがでしたか?
鈴木「もともと、梅棒さんの公演が大好きで、もう趣味というか(笑)。なのでこうやって稽古を見ることができるとは思わなかったので、来る前からドキドキしていました。私もショーなどで演技をする側として、作り上げる過程をお見せすることはなかなかないこと。今回稽古を見て、梅棒の公演がこうやって出来ていくんだな、というのがよくわかりました」
――どんなところが印象に残りましたか?
鈴木「すごく細かいんですよね。出演者があんなにたくさんいるのに、いろんな人たちのストーリーがいろいろなところに散りばめられている。毎回、公演を観るたびに目が足りない!って思うんですよ(笑)。ここでこう繋がるのか、というところがいっぱいあるので。でも、どこを切り取ってもキャラクターが出ていて魅力的なんです。全編を観るのが楽しみになりました。オープニングからまばたきできないくらいいろいろ詰まっているので、注目してほしいですね」
――今回の公演も期待十分といった感じですね。
鈴木「いつも梅棒さんのSNSを見て、次の公演はどんなのが来るのかな?と想像を膨らませているんですけど、“通し稽古の時点で一番面白い”というのを見ていたんですよ。私、今までの公演でも過呼吸になるくらい笑っていたのに(笑)、どうなっちゃうんだろうって。あれを超すなんて、トレーニングしてから行かないと、って思って(笑)。でも、ただ面白いだけじゃなくて、それぞれに活躍されている方たちなので個性的できちんとした振りを見ることができる。難しいんですよね。同じ振りなんだけどキャラクターの個性を出す、でも揃えろ、みたいな。それがすごく緻密。ただ単にアドリブで笑いを取っていくんじゃなく、計算されたものがあるというのを稽古で感じることができました。そのうえで、本番でもっとノッてくるんだと思います」
――鈴木さんご自身も本番で何か変化を感じることはありますか?
鈴木「ありますね。もちろんお稽古で完成させていくんですけど、最後のピースはお客さん。お客さんの前に出て初めて完成されるんです。自分が見せたいものをを作り上げていって、お客さんによって相乗効果で良くなっていくんです。梅棒さんも今まさに、その見せたいものを作っているところなんだと思います」
――梅棒を知ったきっかけは何だったんでしょうか?
鈴木「私はミュージカルも好きで『エリザベート』を観に行ったときに、梅棒の楢木和也さんがトートダンサーで出演されていて。トートダンサーは何人もいらっしゃるんですが、私は楢木さんの動きに目が留まって。私は、歌が響いたな、ダンスがスゴイな、とか自分がいいと思ったものは、調べてどんどん行くようにしています。梅棒もそれがきっかけで知りました。共通の知り合いもいて、それで観に行ったんですが、初めて観たときは“何で今まで知らなかったんだろう!”ってなりましたね。それで周りにも“観に行きなよ!”と勧めて。今はその人たちも自ら観に行ってます(笑)」
――『エリザベート』からだと、かなりギャップがありますよね(笑)
鈴木「それはもう、かなり(笑)。そもそも世の中に、ダンスを観て大笑いできるものって無くないですか? ほぼJ-POPで、ほぼセリフがなくてダンスを見て大笑いできるものって、他にない。それまでは、キレイだなとか、美しいなとか、そういうダンスしか知識が無かったので。でも笑いでずっと人を惹きつけることってすごく難しいと思うんです。表現の中で、キレイや迫力がある、ということよりもハードルが高いんじゃないか。緩急をつけて笑いをストーリーにしていくことができるのが梅棒の魅力だと思います。そこにゲストの方が加わって、いろいろな化学反応が起こることも楽しみですね。以前、大貫(勇輔)さんが出演されていた時に、一人だけめっちゃ足が上がっているのとかが個人的にツボでした(笑)」
――以前から毎回観劇されているとのことですが、毎回観ていて思うことはありますか?
鈴木「最高に面白かった!と思ったところをまた超えてきてくれるので、観ている側としては楽しみなんですけど、やっぱり私も表現する側なので、その難しさもわかるんです。良いものをやった後の、その次って、観ている人のハードルも上がるし、普通のものでは絶対に満足してもらえないというプレッシャーって相当のものなんです。それを常に更新していくことができるって、それだけ新しいマインドが入ってこないとできないし、変えない芯の部分も必要だし。純粋に、表現者として尊敬します。伊藤さんの頭はの中はどうなってるんだろう…」
――なんだか結果を出したらまたその次、ってアスリートみたいですね
鈴木「表現の部分って、限りがない。でも、おそらく今回もまた更新しているぞ、というのは稽古ですごく感じました」
――鈴木さんは振付師としてもご活躍ですが、振り付けについてはどのように感じられますか?
鈴木「今日、拝見したのはワンシーンだけですが、タイミングにすごくこだわりを感じました。何に今、観客を集中させて、その次に何を見せたいか。わかりやすく伝えるという点で、揃わないと伝わらない。やっぱり揃っていないと、観る側が散ってしまうので。あれだけ人数がいるからこそ、全員が理解していないといけないんだなと思いました。私はソロで滑っていましたが、プロになってからはショーになるとやっぱり合わせないといけないところもあるので。そういう合わせていく点が本当に細かいな、と。ジャンルの違うダンサーさんだからこそ、共有することでダンスだけでなく、ストーリーを感じさせることができるのかなと思います」
――そのほかにも梅棒の公演の注目ポイントはあったりしますか?
鈴木「例えば、前回の公演だと、私は花子さんが好きだったんですよ。それで、ラストでお手洗いのマークが普通のものから花子さんの衣装のカラーに変わるんです! そういう細かい演出が本当に好きなんですよ。圧倒されるようなダンスやストーリーも大好きなんですけど、そういう小ネタも大好き(笑)。そういうところも観たいから1回観るだけじゃイヤなんです」
――リピーターも多いですからね。最後に、初めて梅棒を観劇される方も中にはいると思いますので、そういった方にもメッセージをお願いします!
鈴木「とにかく声を出して笑えるので、純粋に目の前にあるものを楽しんでいれば入ってきます! 楽曲もJ-POPなどの懐かしかったりするようなものばかりなので、身を委ねていれば、存分に楽しめると思います!」
コメントからは梅棒への愛があふれ、取材後も「ただの梅棒オタクみたいになってませんか? 大丈夫かな…」と心配するほど、梅棒への想いを語っていた鈴木。名残惜しそうにしながら、稽古場を後にした。
鈴木が帰った後も稽古は続けられた。クールにキメるナンバーでは、そのかっこいい振りを踊りたいメンバーが「絶対俺を入れるべきだ!」と冗談半分、もしかしたら半分本気で直訴したり、過酷な早替えシーンを何とかうまく仕上げようと移動や衣装の変更などを試行錯誤したりと、細かく着実に積み上げながらも笑顔が絶えることはない。笑顔を失わない稽古場だからこそ、観る側がおもわず笑いがこみあげてくるステージを作り上げることができるのだろう。“前回をさらに超えてくるのは確実”と鈴木が太鼓判を押す『Shuttered Guy』。その全貌が明らかになる初日が待ち遠しい限りだ。
稽古場写真/(C)飯野高拓
鈴木明子さん稽古場訪問・インタビュー時写真/(C)赤坂久美
インタビュー・文/宮崎新之
【公演概要】
梅棒 8th SHOW「Shuttered Guy」
日程・会場:
3/28(水)・3/29(木) 東京・THEATRE1010
3/31(土)・4/1(日) 愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
4/6(金)~4/8(日) 大阪・シアター・ドラマシティ
4/12(木)・4/13(金) 福岡・福岡国際会議場 メインホール
4/18(水)~4/26(木) 東京・世田谷パブリックシアター
作・総合演出:伊藤今人
出演:
【梅棒】
伊藤今人 ※、梅澤裕介、鶴野輝一、遠山晶司、遠藤誠、櫻井竜彦、塩野拓矢、楢木和也、天野一輝、 野田裕貴
【ゲスト】
大久保 祥太郎
佃井 皆美
まちゃあき(エグスプロージョン)
YOU
RYO(Beat Buddy Boi)
泰智(KoRocK/ENcounter ENgravers)
古川 小夏(アップアップガールズ(仮))
一色 洋平
田中 穂先(柿喰う客)
東 理紗(ピヨピヨレボリューション/東東東東東)
ひこひこ ※
※はWキャスト