大人気コミック&アニメを大胆かつスタイリッシュな演出で見せていく舞台『黒子のバスケ』シリーズ。最新作となる舞台「黒子のバスケ』 IGNITE-ZONEでは、主人公・黒子テツヤとその相棒・火神大我ら誠凛高校バスケ部のメンバーが、ウインターカップで全国制覇を目指す姿が描かれる。そこに立ちふさがる強力なライバルが、鮎川太陽演じる紫原敦だ。
マンガやアニメから抜け出してきたような8頭身のビジュアルと存在感を武器に、『最遊記歌劇伝』シリーズの沙悟浄や、ミュージカル『魔界王子 devils and realist』の悪魔・ダンタリオンといった人ならぬ存在、『プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE』シリーズの一匹狼部員・久我恭介など、謎めいたキャラクターを好演してきた鮎川。本作で「キセキの世代」と呼ばれるバスケの天才の1人であり、鉄壁のディフェンス力を持つ“怪物”紫原というキャラクターにどう挑んでいくのだろうか。
――稽古に入られてからまだ日が浅いとのことですが、現状の「くろステ」のカンパニーの雰囲気はいかがですか?
鮎川「キャストの半数以上は他の作品でも共演していまして、すでに和気あいあいとやらせてもらっています。むっくん(紫原)のいる陽泉高校のメンバーとは初めましてになるのですが、僕らは第1弾公演「THE ENCOUTER』から出ている誠凛高校や、青峰大輝(小沼将太)のいる桐皇学園のメンバーとは違って、今回の公演からの参加になるんですよ。なのでメンバー同士がお互いをよく知って、他のチームを超える団結力でこの作品に臨んでいこう! という気持ちがみんな強いと思います」
――原作のマンガやアニメはお好きだったんですか?
鮎川「もちろん!『黒子のバスケ』の連載がスタートした最初の頃に読んで、実写化や舞台化の機会があったら出てみたい! とも思っていたんです。やっぱり、身長が高いなら(笑)、それを強みとして活かせる作品に出てみたいという思いもありました。だから第1弾公演の舞台化のキャスティングが決まったときには「ああ、僕、出れないんだ……」とショックを受けたくらいでした。実はカラオケのアフレコ機能を使って黒バスキャラクターのセリフを入れて遊ぶのにハマっていたこともあるので、まさか自分が紫原敦を演じることになるとは予想してなかったんですが、決まったときにはホントに嬉しかったです」
――紫原はプレイヤーとしても人物としてもかなり個性的なキャラクターだと思いますが、その人物像をどう分析されていますか?
鮎川「しゃべるのも行動も基本はゆっくりですし、基本的に他人をナメてるから(笑)、いつでも全力というわけではないけれど、一度スイッチが入ると最強のパワーを発揮するタイプですよね。今回のウインターカップのストーリーでは、これまで負けなしで立ち止まって考えることのなかったむっくんが、誠凛チームとの戦いを経てプレイスタイルやチームへの考え方をだんだん変えていくわけですが……フワフワしてるとこはあるけど、内に秘めている情熱やバスケへの思いは誰よりも熱いヤツなんじゃないかと思ってます」
――誠凛チームから見るとヒールっぽい描かれ方をされているけれども、根っから悪い人ではなくて。
鮎川「単純に、これまでのバスケ人生ですごいと思える人に出会えなかったからだと思います。例えば同じ中学出身の「キセキの世代」のメンバーでも、青峰に憧れてバスケをやってきた黄瀬涼太みたいな感じだったら、まったく状況は違っていたと思いますし。いろんな人と出会うことで、彼もバスケというスポーツやチームのあり方について気付かされる様子が、今回のストーリーにも描かれています」
――役作りに関してもいろいろと固めていっている最中かと思いますが、「くろステ」の現場ならではの苦労はありますか?
鮎川「例えば誰かにパスを回しながらセリフを言って、戻ってきたパスを受け取るだとか、キャラクター同士のやり取りが緻密に積み重ねられてできているステージなので、流れが複雑かつスピーディなんですよ。第一回から出ているメンバーはどんな流れにも対応が早いんですが、今はそれに追いつくのにまだ必死です(笑)」
――2.5次元以外の作品も含めて、年間でかなりの本数の作品に出演されている鮎川さんでもそんなに苦労されているとは驚きです。
鮎川「舞台を観に来られる方でも『黒子のバスケ』のマンガかアニメのどちらかにしかなじみがなかったり、逆に全部の作品を網羅していたり、いろんなパターンが考えられますよね。どのファンの方にも「『黒子のバスケ』のむっくんだ!」と感じてもらうためには、すべてのコンテンツを熟知していないとダメだと思うんです。僕自身が好きなマンガやアニメの実写化なり舞台化に、ちょっと抵抗を感じるタイプなんですよ。自分がそうだからこそ、原作のバックグラウンドをきちんと理解して役作りをしなくてはという責任感のような気持ちは忘れずにいたいし、本番までにしっかりとキャラクターに向き合っていきたいと思っています」
――紫原を演じるにあたって、気をつけて表現したいポイントはありますか?
鮎川「演出の中屋敷(法仁)さんとも話したんですが、むっくんには陽泉の一員としての顔もありつつ、「キセキの世代」の一翼を担っている人物でもあるんですよね。「キセキの世代」のメンバーとのシーンや、陽泉のWエースといえるむろちん(斉藤秀翼が演じる氷室辰也)とのシーンなど、一緒に演じるメンバーやシーンによって演技にもメリハリをつけつつ、それぞれのドラマをしっかり見せていけたらと思います。原作を読んでいても、短い一言に込められたいろんな感情に、泣きそうになってしまうことがあって……舞台の稽古では何回も同じことを繰り返すんですが、そのたびにいろんなことに気付かされるし、9回目、10回目の稽古では見えなくても11回目に見えてくるものもあるので、改めて舞台って面白いなと思いますね」
――これまでかなりの本数の2.5次元作品に出られていますが、いつもどんな風に演じるキャラクターにアプローチしていくんでしょうか?
鮎川「演じるキャラクターを大好きになることですかね。というか、演じるうちに自然と好きになっちゃうんですけど(笑)。最初は主人公が好きでも、自分が演じるとなると、深く原作を読み込んでいくうちにそいつの気持ちがわかってきて、結果、絶対そのキャラクターが一番好きになりますし。それで、自分がそのキャラクターなら、どう感じてどう動くかをじっくり考えるタイプですね。そのキャラクターと自分との共通点を考えたりすることはあまりないんですよ。自分とキャラクターの人生を近づけて考えると、そいつになれない、というか……例えば原作でよくむっくんがお菓子を食べている場面がありますけど、彼はポテトチップスとかしょっぱいものが好きなイメージ。僕もお菓子は大好きですけど食べるのはチョコレートとか甘いものだから、そこは相容れないなと思ってしまったり(笑)。そういうちょっとした違いを見つけていくのも、役作りの楽しみではありますね」
――なるほど。ステージでは黒子役の小野賢章さん、火神役の安里勇哉さんとの絡みも多そうですが、傍で見ていて役作りなどはいかがですか?
鮎川「賢章くんとは約5年ぶりの共演になるんですけども、やっぱりアニメの声もやっているのでセリフを発するだけでも「黒子がいる!」という印象が強いですね。彼が演じることで、黒子のしゃべり方はもちろん目の動きや表情にも説得力が出ますし、キャラクターの見せ方にも新しい発見があって、勉強になることが多いです。「意外とまばたきが多くてかわいいな?」と思ったりもしますね、彼のほうが年上なんですけど(笑)。カンパニーのメンバーともワイワイするところはワイワイしつつ、引き締めるところはきちんと引き締める。力強く引っ張っていくというよりも、稽古場の雰囲気を明るくしつつ、みんなをあるべき方向にきちんと引っ張ってくれる座長だなと思います。安里くんは個人的にずっと前から知っているんですけど、共演するのは初めてなんですよ。初めて同じシーンをやった時、「ここの描写がこうだから、芝居はこういう風になると思うんだけど」って、マンガを持ってきて話したりして、すごく意欲的なんですよね。本番までにそういうディスカッションをする場面も増えると思うし、一緒にやれるのは嬉しいですね」
――まだ作品作りの真っ最中ですが、現時点でいえる舞台「黒子のバスケ』 IGNITE-ZONEの注目ポイントはどういうところでしょうか?
鮎川「いろいろありますけど、まず劇場に入って最初に見るステージセットが、間違いなくインパクトあるものだと思うんですよ。始まり方も原作の世界観を最大限に活かしたものになっていますし、スピード感のある構成も、すべてが面白いしワクワクできると思うんですよ。僕自身も今はまだ覚えなければいけないことが多いんですが、しっかり役と向き合って、他のメンバーと目を合わせてセリフを掛け合えるようになったら、いい意味で相当ヤバいものができるぞ!という手応えがあります。本番終わって幕が下りたらお客さんが「ねえ! 凄くなかった!?」ってザワザワしちゃうような(笑)」
――その「ねえ!」は、原作の中から切り取られるシーンが、ファンにとってはたまらないチョイスだからということでしょうか?
鮎川「そうですね、ファンの方にとっては気持ちがアガるシーンやセリフが目一杯詰め込まれていると思います。マンガでいうと7~8冊分のストーリーを2時間に収めている形になるので、もちろんすべてのエピソードを表現できるわけではないですけど、それを踏まえて1つのコンテンツとして楽しんでいただけたらいいなと。僕自身も本番がどうなるのか、すごく楽しみですから」
――そこは原作の面白さはもちろん、演出の中屋敷さんマジックな部分でもあるんでしょうか。
鮎川「中屋敷さんとはつかこうへい劇団の『ロマンス2015』以来で3年ぶりのお仕事になりますが、今回の稽古場でお会いしていても改めて、熱い演出家さんだなと感じます。稽古が始まる前から「こういう作品にしていきたい」という意思を僕らにもしっかり話してくださったし、稽古場でも役者一人一人やチームごとの足並みをよく見てアドバイスをくださるんですよ。作品に対しても役者に対しても、すごく愛のある方なので、『黒子のバスケ』ファンの方にも安心して見ていただけるのではないかと思います」
――それぞれのプレイヤーの“必殺技”の演出も含めて、楽しみにしています。
鮎川「そうですね、原作を読んでいる方にはおなじみの必殺技はほぼ出てきますから、それが舞台上でどう表現されるのかは楽しみにしていただきたいです。『黒子のバスケ』といえば「週刊少年ジャンプ』の代表的な作品の一つで読者層も幅が広いので、普段舞台を観ないような男性の方も含めて、いろんな方に観ていただきたいと思っているんですよ。上演期間もゴールデンウィークを挟んでいますし、友達とでもカップルででも、ぜひ一度、足を運んでいただきたいです」
取材・文/古知屋ジュン
【プロフィール】
鮎川太陽
■アユカワタイヨウ ’91年、東京都出身。’11年の『タンブリング』より舞台作品を中心に活躍中。『最遊記歌劇伝』シリーズ(’14年~)の沙悟浄や『プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE』シリーズ(’16年)の久我恭介など、2.5次元作品でも幅広い役どころを好演。6月20日~24日の『鬼切丸伝』(全労済ホールスペースゼロ)、7月20日~の『ダンガンロンパ3 THE STAGE 2018 ~The End of 希望ヶ峰学園~』(サンシャイン劇場ほか)などの出演作も控えている。
【公演概要】
© 藤巻忠俊/集英社・舞台「黒子のバスケ」IGNITE-ZONE製作委員会
舞台「黒子のバスケ」 IGNITE-ZONE
日程・会場:
4/6(金)~22(日) 東京・サンシャイン劇場
5/1(火)~6(日) 大阪・森ノ宮ピロティホール
5/11(金)~13(日) 東京凱旋・日本青年館ホール
原作:藤巻忠俊「黒子のバスケ」(集英社 ジャンプ コミックス刊)
演出:中屋敷法仁
脚本:竜崎だいち
出演:
≪誠凛高校≫
小野賢章(黒子テツヤ 役)
安里勇哉(火神大我 役)
牧田哲也(日向順平 役)
松井勇歩(伊月 俊 役)
河合龍之介(木吉鉄平 役)
鍛治本大樹(土田聡史 役)
田野アサミ(相田リコ 役)
≪秀徳高校≫
畠山 遼(緑間真太郎 役)
山田ジェームス武(高尾和成 役)
≪桐皇学園高校≫
小沼将太(青峰大輝 役)
林 明寛(今吉翔一 役)
和成(若松孝輔 役)
加藤ひろたか(桜井 良 役)
杉 ありさ(桃井さつき 役)
≪陽泉高校≫
鮎川太陽(紫原 敦 役)
斉藤秀翼(氷室辰也 役)
丸川敬之(岡村建一 役)
倉冨尚人(福井健介 役)
≪洛山高校≫
糸川耀士郎(赤司征十郎 役)