
NHK Eテレ「にほんごであそぼ」のはーな役としてもおなじみ、ドラマに舞台にと活躍中の南野巴那。透明感ある佇まいと、バレエで培った実力で今後が期待される女優だ。昨年は日生劇場ファミリーフェスティヴァル2024 音楽劇『あらしのよるに』のヤギのメイ役でW主演を務めた彼女が、今年も日生劇場ファミリーフェスティヴァルに登場!作品は「NHKみんなのうたミュージカル『リトル・ゾンビガール』~ノノとショウと秘密の森~」。2022年に初演された本作は、懐かしいNHK「みんなのうた」の名曲が散りばめられた傑作ミュージカル。ゾンビと人間が分断されて暮らす世界で、新米ゾンビの小さな女の子・ノノと人間の男の子・ショウの友情が、二つの世界を共存へと導いていく可愛らしい物語だ。南野はこの作品のショウ役をオーディションで掴み、今回初出演する。南野に本作にかける意気込みを聞いた。
――南野さんはもともとバレエをやっていらして、大学では音楽を学ばれたとお聞きしました
バレエは5歳から13年間やっていて、今は歌の勉強を少しずつしている最中です。お仕事は色々な方面のことをやらせていただいているので、あまりミュージカルの印象はないかもしれませんが、ミュージカルは大好きです! 今回ミュージカルに出演させていただけることになり、とても嬉しいです。
――ミュージカル界が放っておかなそうなご経歴ですが、子どもの頃からミュージカルがお好きなんですか?
小さい頃に宝塚歌劇が好きになって、宝塚きっかけでミュージカルが好きになりました。ただ、ミュージカルは私にとって夢の存在だったので……もちろん目標という意味での“夢”でもありますが……お仕事として考えるというよりは“夢の中”のもの、という意識の方が強かったかもしれません。

――では、そんな南野さんが今回「『リトル・ゾンビガール』~ノノとショウと秘密の森~」に挑戦しようと思われた理由は?
勿論、大好きなミュージカルに出演できることはとても嬉しいことなので、未熟ながらも挑戦していきたいと思いました。同時に「みんなのうたミュージカル」というところにもすごく惹かれました。
『リトル・ゾンビガール』という作品自体は見たことがなかったのですが、「みんなのうた」は小さい頃から聴いて育っていたので、あの「みんなのうた」をミュージカルにしているんだ!それは絶対やりたい!と思って……。少年役は初めてなので、私にとっては挑戦なのですが、いっぱいチャレンジしていきたいし、子どもたちに喜んでもらえるものにしたいと思っています。
――まだお稽古前かと思いますが、「『リトル・ゾンビガール』~ノノとショウと秘密の森~」という物語についてはどんな印象をお持ちでしょう。ゾンビが暮らすファンタジーの世界ですが、ゾンビと人間という二つの種族の間にはかつて戦争があり、今は分断されている、というのは現実社会の写し絵でもあります
知らないことを知る勇気の大切さを描いている作品だな、と感じました。知らないことは、怖いことです。でも「怖い=嫌い」ではないんですよね。“怖い”を“嫌い”にしてしまったら、人同士からちょっとした食べ物まで、色々なものが敵になってしまう。「嫌い」と思った瞬間、人と人がぶつかり、大きなことになってしまう。今の時代、そんな息苦しさが色々なところにあると思うのですが、そうならないためにも、知らないことを素直な気持ちで知ろうとすることが必要。知らないから怖いのであって、知れば怖くないかもしれない。その一歩を踏み出す勇気が必要なんだなと、台本を読みながら思いました。

――その物語の中で、南野さんが演じるのが、人間の男の子・ショウ。新しい街に転校してきたばかり、ちょっとおとなしい男の子です。現時点ではショウはどんな子だと捉えていますか?
ショウは小さい頃からお父さんのお仕事の関係で、転校することが多かった。そのせいか、人の気持ちを考えすぎてしまうところがある子です。それはつまり、心優しく繊細だということ。でも家では一人で溌溂と歌って踊ったりするところもあり、そのギャップが人間らしいなと思っています。台本を読んで、子どもらしい素直さ、繊細さをとても感じたので、私も真っ白な心で素直に演じられたらと思っています。
――ちなみにこの物語の主人公のノノとショウは10歳。南野さんは10歳の頃は何をしていましたか?
バレエ漬けでしたね。学校終わったらすぐバレエのレッスンという日々を、週6・7日のペースで続けていました。それ以外は、お友だちとミュージカルごっこをしたり。教室では授業中にミュージカルの歌詞を書いてこそっと交換したり、帰宅後はその友だちとミュージカルのDVDを見ながら踊ったりしていました(笑)。「世界の王」(ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』)とかを。ノノ役の熊谷彩春さんも、子どもの頃はミュージカルごっこをしていたとおっしゃっていたので、お話が合いそうだなと思っています!

――少し作品から離れて、南野さんご自身のことを伺わせてください。最近ハマっているものは何かありますか?
お茶にハマっています。先日撮影で鹿児島に行って、色々なお茶を自分用のお土産に買いました。その中でも今気に入っているのが「ねじめびわ茶」です。びわの葉のお茶なのですが、ミネラル豊富で、ノンカフェインなので寝る前にも飲める。毎日お茶をいっぱい飲んでいます!
――舞台の楽屋に欠かせない必需品は?
湿布です。大量の湿布をカバンに入れています。どこかが痛くなったらすぐペタッと貼ります(笑)。そうしたら、帰宅したら嘘みたいに治っていたりするんですよ。あとはのど飴と吸入器はいつも持っています。……たぶん、心配症なんです(笑)。
――ショウくんはなかなか友だちが出来ず悩んでいる男の子ですが、南野さんは初めましての人と接する際、どんなことを気を付けていらっしゃいますか?ちょうど新学期になり、新しい環境になじめず悩んでいる人もいるかもしれません。そんな人にアドバイスを贈るとしたら?
うーん、私もすごく緊張するタイプなのでいいアドバイスはできないと思いますが(苦笑)。とりあえず、嫌な感じにはならないように気を付けます。嫌な感じさえ出さなければ、たとえあまり会話が弾まなかったとしてもあとからくよくよすることもないなと、大人になってから思えるようになりました。あとは無理しないこと、ですね。無理するときっとそれは相手に伝わって、逆に気を遣わせてしまうので。
――最後に改めて、意気込みをお願いします
大事なメッセージがたくさん詰まっている作品だと思いますし、そのメッセージはどの世代の方にも響くものだと思います。ですので世代問わず、この作品を観て欲しいです。劇中で歌われる「みんなのうた」の楽曲は、懐かしいなと思う方もたくさんいらっしゃるだろうし、知らない楽曲も「耳に残って仕方ない!」と思ってくださるはず。そんな素敵な音楽いっぱいで届ける物語です。好奇心を全開にして、ぜひ劇場で、私たちや多くの皆さんと同じ空間で、『リトル・ゾンビガール』を味わっていただけたら嬉しいです。
取材・文/平野祥恵
撮影/曳野若菜
ヘアメイク/熊谷美奈子
スタイリング/山田梨乃