
2025年6月の製作発表記者会見から約2ヶ月半経ったこの日、都内稽古場にてミュージカル「SPY×FAMILY」の公開稽古が実施され、アーニャ役を演じる泉谷星奈、月野未羚、西山瑞桜、村方乃々佳の子役4人の歌唱シーンがお披露目された。本記事では公開稽古の様子、及び4人が登壇したミニ会見の模様をお届けする。
「SPY×FAMILY」は遠藤達哉による漫画。コードネーム〈黄昏〉として暗躍するスパイのロイド、殺し屋のヨル、人の心を読む超能力を持つ少女アーニャが、お互いの正体を隠しながら仮初めの家族・フォージャー家として過ごす姿を描くアクションホームコメディ。ミュージカル版は2023年に初演が上演され、2025年にはファン待望の再演の上演を控えている。
初演でも大きな話題となったのは、作中でも重要人物であるアーニャを演じる子役たちのかわいらしさと、大人顔負けの芝居。この再演に抜てきされた4人の子役たちへの期待も自然と高まる。
公開稽古前半では、ロイド役をWキャストのうち森崎ウィンが担当し、仮初めの親子になったばかりのロイドとアーニャが街に繰り出す際のナンバーを披露した。“ちち”ロイドの心が読めるアーニャは、勝手にちちの心を読んでは悲観して号泣したり、世界平和が自分にかかっていると張り切ったりと大忙し。最後には睡魔に負けて寝てしまうという、アーニャの自由奔放さがギュッと詰まった愛らしいシーンだ。
トップバッターを務めたのは月野。月野は天真爛漫なアーニャを全身で力いっぱい表現し、コロコロと変わる表情で報道陣を魅了した。このナンバーのラストには、眠くなってしまったアーニャを、ロイドがやれやれといった様子でお姫様抱っこするというシーンもある。製作発表で月野は、ワークショップでのこのお姫様抱っこのシーンが嬉しかったと語っていた。ロイドに抱きかかえられ眠る月野のアーニャからは、なんともいえない幸せそうなオーラが漂っていた。

続けて同じナンバーを披露したのは、童謡歌手としても活躍する村方。アーニャ役の中では唯一の小学1年生であり、身長もひときわ小柄な彼女だが、その瞳の輝きは原作漫画の「わくわくっ!」しているアーニャの瞳そのもの。そしてアーニャといえばかわいくも面白い変顔が魅力のひとつ。今回のナンバーでも、アーニャが自分の世界に入って面白い顔を浮かべる瞬間があるのだが、村方はキレのある変顔を披露。本人は会見で「(報道陣の)目やカメラがいっぱいあって緊張しました」と語っていたが、そんなことは感じさせない堂々のパフォーマンスで楽しませてくれた。

セット転換を終えて、公開稽古後半へ。後半ではイーデン校の三者面接のナンバーが披露され、引き続きロイド役を森崎が演じ、ヨル役は唯月ふうかと和希そらがそれぞれ1回ずつ登場した。イーデン校受験はロイドにとっては任務の一貫であり、ヨルもアーニャも利害の一致から家族となっている。三者面接のシーンは、そんな3人の間に見え隠れする本物の絆にグッとくる心温まるシーンのひとつだ。
先に登場したのは泉谷。ドラマでも活躍する彼女は、シーンが始まると同時にスッとアーニャをまとい、ちちとははの代わりに自分が頑張らないと、と面接に緊張しながらも奮闘するアーニャの様子を表現。シーンの緊張感も手伝って、少しお姉さんになろうと背伸びをしているようなアーニャ像が見て取れた。ナンバーの後半では、アーニャのちちとははへの真っ直ぐな思いを歌い上げるパートも。高音が気持ちよく伸びる泉谷の歌声は、もっと聴いていたくなったほど。泉谷は変顔も得意だそう。本番でコミカルなシーンを観られる日が楽しみだ。

最後に登場した西山は、好奇心あふれるアーニャを演じ、楽しませてくれた。印象的だったのはその笑顔。演じられることが嬉しい、そんな喜びがハツラツとした動きからも感じ取れた。会見でも緊張しなかったと笑顔を見せた彼女は「やりたいシーンができて嬉しかったしスッキリしました」とコメント。さらに会見で稽古場でのエピソードを問われると、演出家・G2氏とのやりとりや、ヘンリー・ヘンダーソン役の鈴木壮麻からの差し入れのエピソードを面白おかしく披露し、トーク上手な一面も見せてくれた。そんな持ち前の明るさとトーク力は、物怖じしないアーニャに通じるところがあり、完成形のアーニャへの期待が高まる。

公開稽古後の会見には、アーニャ役の4人が登壇。4人とも充実の表情を見せ、稽古が順調であることが窺えた。司会からの「公開稽古を終えた今の気持ちを漢字1文字で」という、小学生には少し難しい問いかけにも、4人は堂々と答えていた。
泉谷は「“星”です。アーニャがイーデン校で目指すのも星(ステラ)だし、私の名前にも星が入っています。私が星に願って、みんなで怪我なく稽古も本番もできるようにしたいので、“星”にしました」と大人顔負けのコメントで報道陣を唸らせた。月野は「楽しいの“楽”です。ずっとなりたかったアーニャになれて、みんなとお稽古できてとても楽しいからです!」、続く西山も同じ“楽”を選び「今の稽古もすごく楽しいから、本番はもっともっと楽しいんじゃないのかなって思ったからです!」と、キュートな笑顔を見せる。村方は“強”を選び「みんなで力をあわせて、諦めずに頑張っていきたい」と強い決意を語ってくれた。

最後まで4人は元気いっぱいに受け答え、等身大の言葉の中にも舞台への強い意志をにじませていた。4人のアーニャがどんな舞台を見せてくれるのか、大きな期待が高まる。ミュージカル「SPY×FAMILY」は9月20日からの埼玉・ウェスタ川越 大ホールでのプレビュー公演を皮切りに、10月から12月まで、東京、大阪、福岡、山形、静岡、愛知にて上演される。
取材・文:双海しお