本場トップクラスの作り手が手がける日本語版『PIPPIN』の製作発表会見で城田優らが楽曲披露!

2019年初夏、日本にいながらにしてブロードウェイの傑作ミュージカルが堪能できるチャンス到来! それが『PIPPIN』日本語版だ。演出を手がけるのは、この舞台を新演出したことでトニー賞最優秀演出賞を獲得したダイアン・パウルス、そして振付をチェット・ウォーカー、サーカス・クリエーションをジプシー・シュナイダーが担当するなど、本場のクリエイター が今作には多数参加することになっている。キャストは城田優、Crystal Kay(クリスタル・ケイ)らが務め、セリフはもちろん日本語であるため字幕を追うストレスもゼロで楽しめる貴重な機会となる。

その『PIPPIN』日本語版の製作発表会見が2月末、都内 で行われた。各キャストのコメント等も含めつつ、その様子をレポートする。会見場のフロアに入ると前方にはサーカス風の装飾が施されたステージが用意されていて、まさに『PIPPIN』の世界観にピッタリの雰囲気づくりがされていた。今回は既にチケットを購入したお客様の中から抽選で当選した約20名も参加するスペシャルな会見。キャストは本番さながらの舞台衣裳とメイクで登場し、楽曲も披露するとあって場内はすっかりワクワク感に満たされている。ちなみに日本語歌詞(作詞:小田島恒志)での楽曲披露はこの日が初めてとのことで、期待は高まる一方だ。

MCを務めるフジテレビの西山喜久恵アナウンサーにより作品の紹介がなされると、そこはもう『PIPPIN』の世界。まずは本番と同じようにオープニングナンバーから楽曲が披露された。物語を牽引する存在でもあるリーディングプレイヤーを演じるCrystal Kay(以下クリスタル)が、会場の後方からゆっくりと登場。ステージに上がり、この作品を代表する1曲でもある『Magic To Do』を、フォッシースタイルを彷彿とさせる振付も交えつつ堂々と歌いあげた。続いて登場したのは主人公ピピンの祖母であるバーサを今回Wキャストで務める、中尾ミエと前田美波里。悩める孫の背中を押す、実にポジティブな1曲『No Time At All』をパワフルにデュエットした。そして最後を締めたのはもちろんピピンに扮した城田優で、自身のアルバムにも収録されているという思い入れのある1曲『Corner of the Sky』を熱唱。場内は拍手喝采に包まれた。 そして、まずはMCの西山アナがキャスト4人へ役どころや歌った楽曲などについてインタビューを行った。各キャストの返答は、以下の通り。

城田「僕が演じるピピンは、何不自由なく育った王子なんですけれども。自分がどこに行くべきなのか何をするべきなのかというのは、誰もが人生で一度や二度は経験する岐路でもありますが、そこでクリスタル・ケイさん演じるリーディングプレイヤーが僕を先導してくれる、ということになるわけです。今、歌った曲は“猫には窓辺、子供には雪、それぞれに場所があるけど、じゃあ僕はどこに行けばいいんだろうか”というような、ピピンが心情を吐露する歌です」クリスタル「私が演じさせていただくリーディングプレイヤーは普通の人間ではなさそうな、ちょっとフェアリー的な存在で。自分の世界を見つけたいというピピンをいろいろな世界にいざないます。力強く世界のすべてを仕切っているかのような、パワフルで男らしいところもあれば女性らしいところもあったりします。『Magic To Do』はオープニングナンバーで“これからマジカルな世界をみなさんに見せてあげるよ”という、ちょっとミステリアスで楽しい曲です」中尾「バーサ役のバーサンです(笑)。私、実はこの『PIPPIN』という作品には過去に2回出ているのですが、今回の演出のバージョンは初めてで、しかも今までやった中で一番大変です(笑)。美波里さんもそうですが、私たちはこの1曲の場面にしか出ませんので、ぜひともお見逃しのないようにしてください。1曲の間だけですが一番大変なことをやらされるので、美波里さんとは二人いて良かった、気分が楽だねと言っています。今歌ったこの歌は自分の心情をそのまま歌ったような歌なので、私はとても歌いやすいです。お客さんと一緒に歌っていただく曲でもあるので、みなさんなるべく劇場で一緒に歌ってくださいね」前田「私も同じくバーサの役をやらせていただきます。今日歌わせていただいたこの曲は、王子である城田さんを“導く”というよりは“わからせる”ための歌ですね。“人生を謳歌しなさい、そうでなきゃだめよ、もっともっといろいろなことが起こるだろうから”というね。私も今、70歳でこれまでずいぶんいろいろなことがありましたけど(笑)。“あなた自身が自分で選んで進んでいかないと人生は楽しくなんかないよ”というようなことを歌っているんですよね。ミエさんは“お見逃しなく”とおっしゃったけれど、この曲はきっとみなさん見逃しませんよ。1曲だけど意外に長いですし。それに、この場面を観ないで帰っちゃダメ!って感じです」続いて、演出のダイアン・パウルスからのビデオメッセージが紹介されるとキャスト4人は興味津々で映像に注目。「日本で、この日本語キャストで上演できることは大変な喜びです。このサーカスやアクロバットが見事に融合した作品をお楽しみください」と言いながら微笑むダイアンからのコメントに対して、城田は「僕自身、(ダイアンが新演出したバージョンの)『PIPPIN』はNY、ブロードウェイで観させていただいていて、本当にすごーい!って単純に子供みたいな気持ちになれた作品だったんです。その舞台がそのまま日本に来るということなので。今、ダイアンがおっしゃったように、日本のみなさんにもあの日の僕の感動を感じていただきたい。まあ、それを演じるのが我々なわけなので、そういう意味ではプレッシャーがすごいんですが(笑)。だけどブロードウェイで観られるものがそのまま日本でできるなんて、めったにないことですからね。キャスト、スタッフ一同、力を合わせて本場のミュージカルを越えて日本語版のほうが良かったんじゃないかって思えちゃうくらい、むしろダイアンさんに日本語版のカンパニーは素晴らしい!と言ってもらえるように、これから日々努力していきたいと思っている所存でございます!」と、ここで力強く宣言。

そして実はこれがミュージカル初挑戦となるクリスタルも「本当に緊張し過ぎて、初日どうなっちゃうのかなって感じなんですけど」と打ち明けつつも「あの1曲目でリーディングプレイヤーはこういう存在なんだという印象を、お客様に瞬間的に感じてもらわなきゃいけないんですよね。すごく重要な役でもありますし、大事なナンバーでもあります。私も実は2014年にNYでこの舞台を観ているんですが、たまたま黒い服を着ていたせいか終演後にその日リーディングプレイヤーを演じていたパティーナ(・ミラー  2013年『PIPPIN』リーディングプレイヤー役でトニー賞ミュージカル女優賞を受賞)さんに間違えられちゃったんですよ。だけどまさか自分がこうして5年後にその同じ役をやることになるなんて、ご縁だなと思いますね。私も一生懸命やって、オリジナルを越えたんじゃないかと言われるくらいのリーディングプレイヤーを演じたいと思います」と意気込みを語り、目を輝かせる。そして、歌うのは1曲だけだとはいえ、かなりアクロバティックな要素のある演技に初挑戦することが分かっているのが中尾と前田だ。

中尾「私はビデオで作品を拝見した時に、こんなとんでもないこと私たちはやらないのよね?と確認したんですよ。そうしたら、いややりますよというんで、えーっ!って驚きました(笑)。とりあえず懸垂を10回くらいはできるようにしておいてくださいって言われました、私、ただぶら下がるだけでも10数えられないくらいだったのに。今のところまだできませんけど、あと数カ月でやらなきゃいけませんね。だけど舞台の仕事をやっている時はいつも、これ客席から観たい~!って思っていたんですけれども、今回は美波里さんの回を私は客席から観られるのでそれがうれしいです。お客さんと同じ気分で楽しみにしています」前田「私は今回と同じ劇場、シアターオーブでやったブロードウェイ版を観ているんですが。ミュージカルの仕事に携わっていますと、この舞台に自分の出られそうな役ってあるかしらって思ったりするんですね。それで最初に今回クリスタルさんが演じる役が出て来るので、わーカッコイイ、若かったらこの役やりたかった!って思いながら観ていくうちに、あれ、このおばあさんの役やれるかも?って一瞬なったんですが、途中でやっぱりこれは無理だわって思っていたんですよ。だから今回は本当にミエさんがいてくれて良かった、ひとりじゃ、とても無理よ(笑)。だけど城田さんのやる役も、なんて大変なんだろうと思いましたよ。最初から、ものすごい登場の仕方でしたしね。きっとお客様はみなさん、目でも楽しめ、耳でも楽しめ、そしてパフォーマンスも自分たちだってやりたくなるくらい盛り上がれると思います」続く、囲み会見でも改めて意気込みを語った4人は、本格的な稽古が始まる前にも関わらずもうすっかり息がピッタリで早くも楽しげな様子だった。

城田「今回は、ブロードウェイミュージカルがそのままのバージョンで日本にやって来るということになりますから、いわば来日公演みたいなものなのですが。キャストだけは我々がやらせていただくということになるので、非常に画期的です。世界のトップエンターテインメントが日本で観られるこういう機会はなかなかないので、自分がこの作品に出演していなかったとしてもきっと観に行っていたと思いますね。そのくらいNYで観た時、この作品は人の心を動かす力がめちゃくちゃ大きいと思ったので。ですから、絶対に観に来て損はさせません。意気込みとしては、どうしてもスケールが壮大な作品ではあるのでそこに、ここは日本人キャストとあえて言わせていただきますが、我々日本人キャストがしっかりと食らいつき、この作品をよりひとりでも多くの方に観ていただきたい。そしてみなさんに元気と勇気、やる気や、夢と希望をたくさん分け与えられるようなプロダクションにしたいと思っております」クリスタル「全部、言われちゃいました(笑)。とにかく私の場合はミュージカルというものに出させていただくのはこれが初めてですので。しかも世界トップのエンターテインメントである、ブロードウェイミュージカル。本当にこんなに素晴らしいチャンスをいただけたことにすごく感謝していますし、その新しいチャレンジに、友人でもある城田さんと一緒に挑めるということもすごくうれしい。そして私、実は今年がデビュー20周年なんですが、これまでの自分のキャリアの中でもこの作品が今までで一番のチャレンジだと思うんですよ。ですからとにかく必死で、オリジナルより良かった!と言ってもらえるように一生懸命がんばりたいと思います」中尾「クリスタル・ケイちゃんはデビュー20年だそうですが、私は50年以上です(笑)。それなのに、今回これが初めての挑戦になるという、大変な役をやるんですから。まさか本当に70歳過ぎでこんなことをやるとは、夢にも思っていませんでした。これが最後のがんばりになるんじゃないかと思っております。ひょっとしたら私、人生で今が一番筋肉がついているんじゃないかしら。この筋肉が、どこかで役に立てればいいんですけれども。毎朝、近くの公園に行き、ウンテイにぶら下がっているんです。もう、近所中のおばさん、おじさんの間で噂になっていて「もう今日はぶら下がったんですか」なんて言われている毎日ですよ(笑)」


前田
「あっという間の人生、自分で何かやらなければつまらない人生になっちゃうんだから、しっかり謳歌しなくちゃダメだという、この素敵な歌をいただきまして。今、ミエさんがおっしゃったように、自分の肉体もしっかり動かさなければいけないわけです(笑)。まあ、昔から動くことは大好きでしたが、こんな年齢になるまでやるとはね。ミュージカルというのは、若い頃にはいろいろな役が来るんですね。それが徐々に減ってきまして、もう新しい挑戦なんてないんだろうなと思っていたら、こんなすごいのが来てしまった(笑)。だけど人生は楽しまなくちゃ!ということを、まさに自分の身体でぶち当たって表現したいなというのが今の気持ちです」さらにこの日、会見には登場しなかった4名のキャストからもコメントが寄せられたので、ここでご紹介。


今井清隆(ピピンの父・チャールズ役)

「今回の演出ではアクロバティックな動きや技術が必要になってきますし、今から練習をして果たして初日に間に合うのだろうか?と不安でもあります。が!とにかく今の自分の持てる限りの技術と経験を活かして、劇場に足を運んでくださったお客様に楽しんで帰っていただきたいという気持ちでいっぱいです。精一杯がんばります」


霧矢大夢(ピピンの義母・ファストラーダ役)

「ファストラーダというのはチャールズ王の2番目の妃で、自分の息子であるルイスを王に就かせようとする野望を持った、絵に描いたようなしたたかな継母です。そんなファストラーダを滑稽に、パワフルに演じたいと思っています。城田優さん始め日本が誇るキャストの皆様と共にきらびやかな『PIPPIN』の世界の一員になれることを、お客様に負けないくらい私も楽しみにしています」


宮澤エマ(キャサリン役)

「キャサリンは、自分探しの道で迷うピピンにとって生きる意味を与える重要なキーパーソンとなっていくキャラクターでもあります。面白くてチャーミングで愛さずにはいられないような、魅力的な日本版キャサリンを、国際色豊かな最高のチームと共に創り上げていくのが楽しみです」


岡田亮輔(ルイス役)

「僕が演じるルイスは、チャールズと後妻ファストラーダとの間に生まれた王位継承順位第2位! ナルシストで戦好き、でもちょっとおバカで母親が大好きな、ピピンの異母兄弟です。お客様に喜んで頂けるよう、ルイス役をカンパニーの皆様と共に作っていきたいと思います!」

ミュージカル好きだけでなく、舞台全般に馴染みのない方も含め、国境も年齢も関係なく幅広い層が夢中になって楽しめ、そして共感もできると思われる『PIPPIN』の物語。華麗でありつつダークでもあり、切なさもコミカルな要素もあるというこの作品でしか味わえない、魔法のような世界の扉が開くまであともう少し。6/10(月)の初日開幕が、待ち遠しい。

取材・文/田中里津子
撮影/ローソンチケット