ミュージカル『MURDERER』| 橋本祥平×小西成弥インタビュー

韓国発のミュージカル『MURDERER』が3月7日より下北沢・本多劇場にて上演される。極限状態の中、収容所に取り残された6人の子供たちの7日間を描く本作。韓国では2019年に初演され、今回が日本初上演となる。

演出を手掛けるのは松崎史也。出演には橋本祥平、小西成弥、新里宏太、工藤広夢、今拓哉に加え、オーディションを経て抜擢された山本咲希と黒川桃花(Wキャスト)、原周石と田仲ゆら(Wキャスト)が名を連ねる。
韓国ミュージカル界でも異色の作品である本作に出演する、橋本祥平と小西成弥にインタビュー。率直な胸の内を聞いた。

――まずは出演が決まった際の心境をお聞かせください。
橋本:新しい作品と出会えるというのはとても喜ばしいことで、嬉しかったんですけれども、台本をいただいて読み終わった時に、「出演のお返事をする以上、逃げられないな」と。それだけ責任感と覚悟を問われる作品だと、光栄な気持ちとともに怖さもありました。
小西:すごく緊張感のある作品で、子供たちを演じるキャストはほぼずっと舞台上にいる。皆で一つの作品を作り上げる、という感覚がより強い作品になるのかなと楽しみでした。僕自身、初めての韓国ミュージカルで。これまで観劇した韓国の舞台作品はどれも好きだと思うものばかりだったので、本作もさらに楽しみになりました。

――台本を拝見し、テーマはシリアスですが、同時にまっすぐに「生きる」ことへの強さを感じました。読後、お二人の心にはどんな思いが強く残りましたか?

橋本:いやぁ……(しみじみと)いろいろ考えさせられましたね。すごく重くて誠実で、読み終わった後も「この苦しさって何なんだろうな?」とずっと考えていて…。きっと、作品の受け取り手を安全な場所に居させてくれない、という感覚なのかなと。読み手として作品を傍観しているはずなのに、「私だったらどう選択するか?」を常に考え続けていて、受け取るというよりも、一緒にのめり込むような作品だなと感じました。
小西:戦争中の収容所を舞台にした話ですが、現代の日本にも通じる話だと思いました。戦時下で起きたような出来事が、直接今の日本で起きているわけではないですが、子供が大人の犠牲になっている部分ってたくさんあると思っていて。その構図を単に「辛い」という言葉だけでは言い表すことはできない。たくさん考えさせられました。

――現時点でアレン、ピーターをどんな子供だと捉え、どう演じようと考えていますか?
橋本:アレンは正しいことを信じようとする少年なのかなと。ヒーローになりすぎない、でも正しいことを信じる、というところの塩梅を模索しながらやっています。闇に飲み込まれそうになるけれども、それでも最後まで自分を信じる、という部分を大切に作っていきたいですね。
小西:ピーターはすごく正直で素直な子だなと思います。理性的に行動する子もいれば、恐怖や空腹に対して素直に行動する子もいて。そんな中でピーターをどう演じようか、今の自分に照らし合わせて考えてもみたのですが、それよりもその場で生きるということが、何より大切にすべきことかなと感じています。

――12歳前後の子供を演じるという点に関してはいかがですか?
橋本:そこは難しいよね(苦笑)。
小西:難しいですね(苦笑)。
橋本:この作品は、子供が大人たちの行動に影響を受けて、子供から大人へと変わっていく瞬間が描かれています。大人の中で繰り広げられているはずの残酷な出来事に、子供も巻き込まれて、子供もいつしか周りの大人のようになっていく。そしてそれを、大人である僕らが演じるという多重構造がめちゃくちゃ面白いなと。だから、子供っぽく作り込むというより、それぞれ己の中の純粋さを剥き出しでやっていくのがいいんじゃないのかなと思っています。
小西:僕も同じような感覚です。見た目が大人なのは、それはもうどうしようもないことなので(笑)。
橋本:そうだね(笑)。
小西:大人のガワの部分より、内面的な部分でピーターという少年が何を感じて、何を考えているのか、掘り下げていけたらなと思います。

――カンパニーについてはいかがでしょうか。共演者の顔ぶれをご覧になっての感想をお聞かせください。
小西:共演したことある方いますか?
橋本:いないんだよね。成弥くんとも、ガッツリお芝居をやったことはないもんね。
小西:ですよね。僕も皆さん初共演なんです。
橋本:新鮮で刺激がありそうですね。ただ、今回は(松崎)史也さんという天才演出家がいてくださるので、皆さんといっぱい話し合いながら作っていけています。
小西:僕は松崎さんとは朗読劇でご一緒したのですが、稽古が約1日だったので、あまりちゃんとお話ができていなくて。ずっと舞台作品でご一緒したいと思っていたので、このタイミングで、しかもこの作品でご一緒できることが嬉しいです。
橋本:史也さんって熱意があるのはもちろんのこと、言語化がめちゃくちゃうまいんですよね。役者にしっかり伝えたいことを伝えてくれるし、役者が出した答えも大事にしてくれる方。本当に毎回素敵な現場を作ってくださるので、久しぶりにご一緒できるのがとても楽しみです。

――では最後に、公演を楽しみにしているお客さまへのメッセージをお願いします!
小西:物語自体がすごく難しいというわけではないのですが、真実の部分に目を向けていることもあり、楽しくハッピーになれるような作品ではありません。でも、こういう作品に触れていただいて、何かを受け取っていただけたら嬉しいなと思います。それに韓国ミュージカルをこうして日本で上演できることが嬉しいので、そういった点でも皆さんに楽しんでもらいたいです。
橋本:どういった作品なのか、というのは観てからのお楽しみではあるのですが、一つ覚悟として持っていてほしいなと思うのは、「それなりに食らいます」ということです。
小西:(大きく頷く)
橋本:生身の人間が演じるからこそ感じる残酷さもあると思います。役者としていろいろな時代の作品をやってきましたが、その中で大切にしているのが、その時代の背景や出来事から目を背けず、お客様にも共有できたらいいな、という思いです。この作品においても、僕らは戦争に巻き込まれた子供たちから逃げずに立ち向かうので、皆様にも正面から受け取ってもらえたら嬉しく思います。

取材・文:双海しお
撮影:交泰