【観劇レポート】宝塚歌劇 星組公演 ミュージカル・フルコース『GOD OF STARS-食聖-』/スペース・レビュー・ファンタジア『Éclair Brillant(エクレール ブリアン)』

7/12(金)兵庫県・宝塚大劇場で宝塚歌劇 星組公演 ミュージカル・フルコース『GOD OF STARS-食聖-』/スペース・レビュー・ファンタジア『Éclair Brillant(エクレール ブリアン)』が開幕した。第一幕、『GOD OF STARS-食聖』は、上海、マカオ、シンガポール等のゴージャスでスタイリッシュな現代のアジアを舞台に華やかに描き上げる、アジアン・クッキング・コメディー。上海の総合料理チェーン“大金星グループ”の天才料理人として世界にその名を馳せるホン(紅ゆずる)は、世界一の料理人を決める“食聖コンテスト”に出場するが、己の傲慢さが仇となり、いわれのない罪を着せられて失墜、ホンの仕事は弟子のリー(礼真琴)に引き継がれることとなる。今まで築き上げて来たものすべてを奪われ行き倒れていたホンは、パラダイス・マーケットで行方不明の父親に代わって自ら食堂を切り盛りするアイリーン(綺咲愛里)とその仲間たちに助けられ、自分を陥れた者たちへの復讐のため、アイリーンが先祖から受け継ぐホーカーズ(屋台街)の再建に力を貸すことになる。高慢なホンと気の強いアイリーンは反発し合いながらも、料理に情熱を燃やす者同士、心を通わせ店を大繁盛させていく。やがてホンは自身の名誉を回復するため、3ヵ月後に再び行われる”食聖コンテスト”でリーに勝負を挑むと宣言する。ホンとリーが作る料理は、秘伝の“満漢全席(フルコース)”、そしてホンが負ければパラダイス・マーケットの所有権はリーに渡るという条件が挙げられた。復活を懸けた戦いに挑むホンと彼を迎え討つリー。勝負の行方は―。本作は、星組トップコンビ紅ゆずる・綺咲愛里の退団公演。
紅演じるホンは、強気で傲慢な態度で一度は全てを失うが、料理に向き合う誠実で情熱的な姿から、周囲の人々に慕われ、再び世間の注目を集めていく。真摯に芸事に向き合い、組子にも慕われる紅の人柄を感じさせる役どころを得意のアドリブを交えながら自由にのびのびと表現している。

 

綺咲演じるアイリーンは、勝気だが家族想いで情が深い役どころ。「ただ黙って守られるのではなく、毅然と戦う強さを持った現代的なプリンセス」と演出家の小柳奈穂子がその魅力を語るように、芯の通った強さを持つ彼女の持ち味を存分に活かした素直で自然な表現で、強気な発言の中に見え隠れするホンへの心情の移り変わりが細やかに描き出される。

 

次期星組トップスターである礼が演じるリーは、おどおどしたへなちょこ男のようでいて、ひとたび憧れの女性を目の前にすると虚勢をはって別人のように堂々としてみせるコミカルな役どころ。高い表現力で強烈なキャラクターを見事に演じ上げる礼と、星組の次期トップ娘役である舞空瞳の掛け合いには、新しいトップコンビへのエールを感じさせる台詞も含まれているなど、本作は、紅・綺咲コンビの集大成であると共に、これからの星組への期待も織り込まれた星組愛に溢れる作品となっている。第二幕、『Éclair Brillant』は、宇宙から地球に舞い降りた青年(紅ゆずる)が、世界各地を舞台に歌い踊る姿を描いた煌めく閃光のような輝きに満ちたゴージャスなレビュー。クラシカルなレビューに現代的な要素を取り入れた、エネルギッシュな展開で繰り広げられる本作は、上妻宏光氏が演奏する千住明氏の楽曲「風林火山~月冴ゆ夜~」にのせたクラシカルな黒燕尾での群舞や、様々な場面に盛り込まれたトップコンビのデュエットなど、まさに紅・綺咲コンビの集大成といえるレビューとなっている。兵庫公演は8/19(月)まで兵庫県・宝塚大劇場にて上演中。東京公演は9/6(金)~10/13(日)東京宝塚劇場にて上演される。