『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』鈴木拡樹・三浦宏規 取材会レポート

左:鈴木拡樹 右:三浦宏規

映画『リトルマーメイド』『美女と野獣』『アラジン』などの音楽を手掛ける名コンビ、ハワード・アシュマン(脚本・歌詞)とアラン・メンケン(音楽)が1960年の同名映画をミュージカル化した『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』。1984年の日本初演以降も再演を重ねられてきた大ヒット作が2020年、上田一豪を演出に迎えて上演される。

今回の上演版では地味で冴えない青年・シーモアを鈴木拡樹と三浦宏規の“Wヒロキ”がWキャストで演じる。2.5次元舞台で人気を博し、活躍の場を広げる2人が本作に寄せる思いとは。先日行われた取材会の模様を余すことなくレポートする。――まずお2人からご挨拶をお願いします。

鈴木「シーモア役を担当しますWヒロキの鈴木の方のヒロキです。本作は“楽しく”をテーマに演じていきたいと思いますので、本日も本番同様に“楽しく”、皆様に注目のポイントなどを伝えられたらと思います」

三浦「三浦のほうのヒロキです。想像していた取材会の雰囲気とちょっと違っていたので少々緊張しておりますが…(苦笑)本日はよろしくお願いいたします」


――早速ですが質疑応答に移ります。日本でも長く愛されている本作ですが、お2人は作品のどのようなところに魅力を感じていらっしゃいますか?

鈴木「やはりタイトルに“ホラー”って付いているから、「怖い作品なのかな?」って第一印象では思うじゃないですか。でもそれがうまく裏切られるんですよね。まずそこが面白いと思います。あとは、シーモアの純粋さ。自分が演じるキャラクターで恐縮ですけれども。彼は見ていてもとても心地良いなぁと思いましたので、そんな人柄に惹かれる方も多いんじゃないかなと思います」

三浦「とにかく楽曲が素敵ですよね。1回聴いただけで胸に残って、気づいたら口ずさんでしまうような素敵な曲がたくさんあるので。あとは、登場人物の個性があまりにも強いこと!それぞれキャラクター性がすごく際立っていて、本当に面白いので、そこが長く愛される理由なのかなと思います」

鈴木「映画を何度か繰り返し見たんですけど、オリンの登場シーンとかすごいですよね!強烈なインパクトで(笑)」


――たしかに(笑)。ぜひ今回の上演版でも期待したいところです。
演じられるシーモアは冴えない青年ということで、今までの出演舞台ではかっこよく自転車に乗っていたり、テニスラケットを振っていたりされていたお2人にとっては珍しいタイプの役柄になるかと思いますが、現時点での役作りのプランがありましたら是非お聞かせください。

鈴木「あ、自転車に乗っていた方のヒロキです(笑)。確かに自分の中で珍しい役ではあるんですが、“かっこいいイメージを作らなくていい”という点では気持ちがラクですね。結構シーモアって周りに振り回されたりすることも多いと思うんですけど、僕も割と人の言うことをすぐ受け入れちゃうタイプなので、そこは共感できるかなぁと思います。僕の考えですが、シーモアは噛みしめて味わって頂きたいキャラクター。ですので、何度も咀しゃくして観て頂けるような役作りをしたいなと思っています」

三浦「ラケットを振っていた方のヒロキなんですけれども(笑)。これまでの舞台ではすごいキメキメの俺様キャラとかが多かったので、僕にとっては初めての役どころになりますね、頼りがいがなくて情けないメガネの青年っていうのは。でも普段の僕は決してキメキメなわけではなく、情けない人間なので…(苦笑)、シーモアの方が素の僕に近い気がします。今はとにかく、“初めて挑戦する役どころでいかに新しい自分を発見できるか”というところを頑張りたいです」—―お2人は実は今日がほぼ初対面ということですが、お互いシーモアっぽさを感じる部分は…

鈴木「どうでしょう…稽古に入ってきたら「あー、シーモアだ」って思うこと増えると思うんですけれども、今はただただかっこいいっていうか…」

三浦「同じくです。鈴木さんはかっこよすぎて、全く(シーモアっぽさを)感じません(笑)」


—―鈴木さんは今回本格的ミュージカルは初挑戦とのことで、出演が決まったときの率直なお気持ちをお聞かせください。

鈴木「初めて挑戦することへの不安はもちろんありましたが、事務所の人間や企画制作して頂いている皆さんから「全力でサポートするよ」ってことも事前に言って頂けたので、その中で戦えるのであれば僕も精一杯やらせて頂こうと。「やるぞ!」って気持ちで受けさせて頂きました。ある意味“戦う”つもりでここに立っている部分もあるんですけれども、先ほども言った通りこの作品は“楽しい”をテーマにしたいと思っております。なので今は構えてしまっていますが、本番は“楽しい”という気持ちだけで立てるように臨みたいですね」――三浦さんは今回シアタークリエで初めて主演を務められます。

三浦「まさか自分が主演という形で立てるとは思っていませんでしたが、こうして素敵な作品でシアタークリエに立てる機会を頂けたのは本当にうれしいことです。プレッシャーもありますが、鈴木さんの背中を見て精一杯頑張っていきたいと思っています」

鈴木「多分今回は僕がすごく見ていると思います。三浦くんの背中を(笑)」


――鈴木さんは映画で山本耕史さんと、三浦さんは『レ・ミゼラブル』で相葉裕樹さんと共演されていましたが、お2人とも過去にシーモアを演じられた先輩です。何かコメントなどありましたか?

鈴木「発表された直後に山本さんとお食事に行かせて頂いたんですが、その時に僕から言うよりも先に「出るんだって?」って言ってくれたんです。それがすごく嬉しくて。「この作品は山本さんにも誇らしく“やり切りました!”と言えるような作品にしなきゃ」と思いましたね」

三浦「この発表があったときは『レミゼ』で相葉さんと一緒にツアーを回っている最中だったので「ヒロキ出るんだー」みたいな感じですごく嬉しそうにニヤニヤしながら言ってくれました(笑)。で、「大変でしたか?」って質問したら「ここのシーンがちょっと大変かなー」とかって細かく教えてくれて。身近な先輩がそう言って下さるのはありがたいですよね」――共演者の印象と、シーモア以外で気になるキャラクターがいらっしゃいましたら。

三浦「共演者の方はほぼ初めましてですが、数々の舞台を経験している皆さんの中で自分が真ん中をやるということで、覚悟をもって挑んでいかないとなと…身が引き締まる思いです」

鈴木「同じく僕も初めましての方ばかりなので、どういう人なのかって想像するだけでも楽しいですね。気になるキャラクターはやっぱりオードリーⅡかなぁ。今作でオードリーⅡがどういう表現で、視覚的にどういうもので登場するかは本当に楽しみです。またデーモン閣下がオードリーⅡの声を担当されるので、声でのご出演とは言えまさかご一緒にお芝居させて頂けるなんて!っていう(笑)。本当に貴重な作品になると思いますので、ぜひそういう視点でも楽しんで頂けたら嬉しいです」

三浦「あ、気になるキャラクターは僕もやっぱりオードリーⅡですね。どうなるか全然聞かされていないし、皆さんもきっと気になっているんじゃないでしょうか」――本作は映画『アラジン』等の作詞・作曲コンビでもお馴染み、ハワード・アシュマン&アラン・メンケンが音楽を手掛けています。

鈴木「三浦くんも言っていましたが、一度聴くと耳から離れなくて、すごく歌の力を持ってる作品だと感じています。その中でも「♪グロー・フォー・ミー」という曲は特に好き。シーモアが育てている植物・オードリーⅡがどうやったら大きく成長していってくれるのかな?って考えているのが歌になった曲なんですけれども、とても楽しい感じではあるけど、歌詞を深く聴くことでシーモアの苦悩もわかってくるのかなって思います。僕のおすすめはこれですね」

三浦「楽曲に関しては僕がどうこう言うのがおこがましいくらい、当然のように素敵なので、その世界の中で自分が歌えることが幸せだなと思っています。好きな楽曲ですと、オードリーⅡとシーモアが掛けあう「♪サパータイム」ですかね。植物と人間の歌の掛け合いってやっぱり面白いし、曲自体もすごく耳に残っていい曲だなと。最後のハモリも素敵なので、ぜひ聴いて頂きたいです」


――つまりデーモン閣下とのデュエットということですね

三浦「閣下とハモれるっていう(笑)」


――どうですか、負けない自信は?

鈴木「いや、もうぶつかっていくしかないです…。でも本当に見どころになるなと思いますね」


――その他にもヒロイン・オードリーとのデュエットで「♪サドゥンリー・シーモア」というビッグナンバーがありますが。

三浦「とにかく名曲ですよね、“うわぁ~”ってなる!」

鈴木「そうですね。すごく印象深い曲だと思うんですけど、今はまだこの曲に入る前に構えちゃう癖がありまして…「あ、きたっ」って(苦笑)。そういう感覚なく歌えるようにならないとなとは思っていますが、それぐらい重要なビッグナンバーでもありますね」


――鈴木さんはもう歌稽古を少し始めていらっしゃるのですね。

鈴木「はい。僕は少し先行して歌の稽古をさせて頂いています。まだ意識の問題なんですけれども、歌うことが最近すごく楽しくなってきまして、稽古に突入するにあたっては自分で思い描いていた一番良い状況に持っていけたかなと思います。あとはやっぱり、ミュージカルの第一線でやっていらっしゃる皆さんとご一緒できますので、現場でたくさん吸収できたらなと。“楽しむ”と並行して、いかに吸収していけるかっていうのが勝負になってくるのかなと思っていますね」――ポスター撮影時のエピソードはありますか?

鈴木「素敵な衣装を着させて頂いてから突然、「今からオードリーⅡが服を引っ張るので、引っ張られてください」っていう指示があって(笑)。急だったので最初は動揺したんですけれども。いろんな動きで撮影して頂いたのを覚えています」

三浦「まずシーモアってことでベストの丈が短いんですね。普段そういう衣装ってあんまり着ないじゃないですか?で、「あー丈がみじかーい」と思いながら、撮影に入って。この撮影は意外と苦戦して、自分的にはすごく情けない表情のつもりでも「いや、あんま情けなくないんだよね…」っていうのをすごく言われながら撮って頂きました。僕もたくさん撮ったので、その中の一枚という感じですかね」


――日本上演は8年振りになるという本作ですが、ここだけは過去の上演版に負けないようにしたいというポイントは

三浦「今回演出も全然違ってくるんですよね。なので、難しいですが…でも普段の僕はだらしないのが取り柄…取り柄ではないな(笑)、でもやっぱり僕はシーモアに近い部分があると思っているので、そこを上手く出せたらないいかな…。あと昔からおっちょこちょいだねって言われて育ってきたんですよ。だからたぶん花瓶を割るシーンとかうまく出来るんじゃないかなと思います。おっちょこちょいを生かして、はい(笑)」

鈴木「テーマも“楽しい”ですので、僕はもう全力で劇場をその“楽しい”に満ち溢れた空間にしたいなと思ってます。で、その目標の後なんですけれども、観劇後の時間をどう過ごしてもらえるかっていうのも一つポイントにこの作品を届けたいんですよね。ミュージカルって贅沢な時間の余韻があるのかなっていう、勝手な意見なんですけれども。僕自体は手探りの作業にはなりますが、でもそういう人間だからこそ作れる余韻と言いますか、パワーと言いますか…観劇後も皆さんに楽しんで頂けるような作品にするぞっていう意気込みと目標を持っています」――Wキャスト同士、お互い今までどんな印象をお持ちでしたか?また舞台上でお2人揃った姿は見られないですが、稽古期間中に何かお2人でなさってみたいことがありましたら。

鈴木「まさに『レミゼ』とか、三浦君は僕が体験してこなかったミュージカルというステージを踏んでいるので、先輩後輩とかは関係なく現場で自分が疑問に思ったことは彼に聞こうと思っています。そういうコミュニケーションが間柄を良くしてくれたりもするのかなと思うので。Wキャストではあるんですけど、お互いが個々に別作品をやってるというより、切磋琢磨しながら一緒に作り上げていきたい、2つの力で1つの作品を、という風にできたらいいですね。三浦君にたくさん質問をすると思いますし、何か質問をしてもらえるような先輩でもありたいなとは思います」

三浦「鈴木さんとは直接の面識がなかったんですけれども、周りから「(鈴木さんは)本当に仏だよ」っていうことを常々言われていて。今回のWキャストが決まった後も、誰に聞いても「仏だよ」って返ってくるし、聞いていなくても「仏だよ」って言われるんですね(笑)。先ほどの鈴木さんの言葉を受けて「あー仏なんだー」っていうの実感しましたし、鈴木さんにそう言って頂けると僕も後輩としてすごく気持ちがラクになります。一緒にお仕事できることがまず嬉しいので、精一杯頑張っていきたいですね」――ありがとうございます。それでは最後に締めのご挨拶を。

三浦「まだ本番は少し先ですけれども、初めてシアタークリエに立てる、そしてWキャストで主演をやらせてもらうということで、覚悟を決めて挑まなければいけないなとも思います。この素敵な作品に携われることが何より幸せですし、とにかくこの“楽しい”作品を皆様にお届けできるように頑張っていきたいと思っておりますので、応援のほどよろしくお願いいします」

鈴木「既にたくさんのファンがついている作品なので、前作・前々作を知っている方にも観に来て頂いて、どう感じて頂けるのかというところを僕自身すごく興味深く思ってます。また、ミュージカルに触れたことのない方や、ミュージカル行ってみたいと思っていたんだけれどその一歩が踏み出せなかったという方。僕も今皆さんと近い立ち位置にいるのかもしれないです。そんな僕だからこそ呼び掛けられる言葉もあるのかなと思いますので、「ミュージカルはなかなか敷居が高そうで踏み出せなかった…」という方に“一緒に踏み出してみませんか?”ということをご提案したいですし、ぜひぜひ楽しんで頂けたらと思っています。劇場でお待ちしております」

 

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