左:村上虹郎 右:森崎ウィン
【トニー役 村上虹郎(Wキャスト)】
都内のとあるスペースで、Season2のトニー役をWキャストで演じる村上虹郎のビジュアル撮影が行われていた。前髪を上げ、青いジャケットに身を包んだ村上。我々がいつも目にする「俳優・村上虹郎」とは少し違う印象ではあるが、独特の雰囲気を持った“トニー”がカメラの前に立っていた。ミュージカル初挑戦という村上だが、若干の緊張感が伺える。ひとつひとつのポーズを撮影しながら、写真が映し出されるモニターを確認していく。稽古もこれから本格化していくというタイミングでもあり、撮影スタッフと綿密に話し合いながら自身の中にトニーという人物像を作り上げていくようにも感じられた。撮影が進むにつれ、次第に村上の放つ独特なオーラが現場を包み込んでいく。劇中のトニーが持つ純粋さやまっすぐな眼差し、そして青年時代独特の危うさを体現しているかのような佇まいに、その場にいた全員が村上の“演技”を見つめていた。撮影の後半では談笑しながら撮影に臨む様子も見られ、そのあどけない笑顔にマリアと話している時のトニーの姿が見えた。撮影を終えた村上に話を聞いた。
――撮影を終えてみて、いかがですか?
村上「正直まだ自分の中のトニーがちゃんと見つけられていないことがわかって逆に良かったかなと思います。この劇場で演じるということと、この作品がまだ自分にとって遠い場所にあるんじゃないかと思いました。自分がトニーを演じるのではなく自分の中にいるトニーを見つけないといけないのかなと感じました。まだまだ距離があるので、これからです。」
――「ウエスト・サイド・ストーリー」という作品にどういうイメージをお持ちですか?
村上「“歴史”です。本場ブロードウェイでは見たことはないですが、この劇場で来日版と宮野真守さんたちが出演されているSeason1の公演を観て、やっぱりすごいパワーですよね。当時のほうが日本もアメリカもどの国も、今よりもう少しシンプルに対立が生まれやすかったのかなと思っていて。現代のほうがもっと複雑で入り乱れていると思います。でも多分こう言っている僕が想像できないものがそこにはあるはず。日本は島国ですよね。この狭い国で外の国と関わるのもすごく他の国より遅かったと思うので、そういう国民性の部分が日本人である自分にもあると思うんです。だからあれだけ広い国でどういう精神性で生きているのか、まだ掴めていないです。これから演じていく上で、そういう部分は楽しみです。」
――今回の出演にあたって、意気込みとしてはいかがですか?
村上「とにかく頑張るしかないです。舞台は何度か経験していますがミュージカルは初ですし、この劇場で劇団☆新感線の作品も観ていますが、ここまで広い劇場でやることの実感がないどころか、こんなこと滅多にないんですけど自分がそこで演じているっていう想像がまったくつかないんです。今までない経験なので、壁なのか山なのかわからないですけど、登りがいがありますし、突っ走りがいがあります。」
――ミュージカルが初めてということですが、緊張されますか?
村上「まだ実感がないので、逆にそんなに緊張はしていないんです。直前に緊張してそれをみんなにバレないようにして、本番始まって5分くらいはめちゃくちゃ緊張しているけど、その後からはすごく楽しむ、っていうタイプなんです(笑)緊張は伝わりにくいかもしれないですね。」
――「Wキャスト」については、いかがですか?
村上「本当に初めてで、Wキャストというものを経験したことがないんです。稽古も一緒にすると聞いたんですが、それもどういう感じになるのか未知数ですね。」
――最後に、意気込み含めご覧になる方々に向けてメッセージをお願いします。
村上「とにかく「ウエスト・サイド・ストーリー」という作品の魅力を、まず僕が堪能させていただいて、それを最大限みなさんにお届けできるように努めていきたいと思います。ぜひ劇場でお楽しみください!」
【トニー役 森崎ウィン(Wキャスト)】
続いて、主役のトニーをWキャストで務める森崎ウィンのビジュアル撮影。ラフな青のジャケットにジーンズという格好で登場した森崎は、緊張しつつもこの日を楽しみにしていたような明るい笑顔で登場した。まだ稽古が始まってはいないものの、『早くトニーを演じたい』といった雰囲気が感じられる表情でカメラの前に立つ。嬉しそうな顔から悲しげな面持ちまで、海外にも活躍の場を広げている森崎だからこそ見せることのできる感情の濃淡。時折見せるあどけない表情も、少年から青年へ変わろうとしているトニーが今まさにそこに現れたかのように思えるほど。動きをつけた全身のカットも、表情にクローズアップしたカットも、カメラマンや撮影スタッフのリクエストにも難なく応え、予定していた時間よりも早く撮り終えた。しかし森崎はまだまだ物足りない様子で、少しでも長く、そして少しでも早くトニーを演じたい気持ちに溢れているようだった。撮影後の森崎に話を聞いた。
――衣裳を着てみての感想をお願いします。
森崎「ようやくこの日が来たなというかちょっとずつ実感が湧き始めました。稽古がこれからなので、同時に緊張も高まってきていますが、でも今日はすごく楽しめました。」
――「ウエスト・サイド・ストーリー」という作品の印象は、いかがですか?
森崎「歴史ある作品の中で、単純に楽しいだけのミュージカルではなく、当時の背景や僕が生きていない時代をストーリーを通して知ることのできる瞬間でもあり、なおかつ情熱的なラブストーリーっていうイメージが強いです。実際に来日版キャストの公演を観させていただいて、あっという間に引き込まれました。その作品に携わってその世界に飛び込むっていうのはなかなかできる経験ではないので、とてもありがたいなと思っています。」
――トニーという役柄の印象はいかがですか?
森崎「最初に観たときに感じたのは、すごく熱はあるんだけど素朴なイメージ。これから台本を読んでいく中で変わっていくとは思うんですが、純粋で素朴で、いろんな環境が取り巻く中で、自分が動きたいように動けないという葛藤があるけど、でも本当に心の綺麗な人なんだなと思います。」
――演じる上で、苦労しそうだなという点はありますか?
森崎「全体的にです(笑)ミュージカルで、こんなに大きな舞台に出させていただくのは、初めてに近いんですよ。しかもWキャストで稽古も一緒にするという…すごい事ですよね。自分の前で違うトニーがやっていて、それが褒められたりして、でも自分の時はめちゃめちゃダメ出しが来たりして…。ミュージカルで表現する、舞台の上で表現するということは本当に未知ですが、今後も舞台に立っていきたいですし、歌手としてもやっていきたいと思っているので、それに繋がるように、いろんな表現を身につけられるように貪欲な気持ちで食らいついていきたいです。」――共演するマリアのお二人(宮澤エマさん、田村芽実さん)はどんな印象ですか?
森崎「まだ2回くらいしかお会いしていないんですけど、この作品に対する熱量は言葉がなくてもすごく伝わってくるので、そこは自分も足を引っ張らず、いち役者としてみなさんと一緒にいい作品を作れるように精いっぱい自分の力を出していきたいです。そう思えるような共演者のみなさんと出会えて、お稽古が楽しみでしょうがないです。」
――このIHIステージアラウンド東京という劇場については、いかがですか?
森崎「とにかく、すごいですよ!映像の世界だと、時代はVRのようにお客さんがエンターテインメントの世界の中に入り込むようになっていると感じていて、表現する側と見る側がどんどん一体化されていると思うんです。舞台の世界のことはあまりわからないですけど、「じゃあ舞台はなんだろう」って思った時に、この劇場があったんです。しかも初めて観たのがこの作品で、自分も「ウエスト・サイド・ストーリー」の中のいち通行人というか、その場で起こっていることを、1950年代後半に生きていて見ているような感覚に陥るくらいすごいなと感じました。この劇場はバイクも登場するので、歩いていたら横をバイクが実際に走っていったように感じられるのは、この舞台の特権なのかなと思います。」
――最後に、意気込みをお聞かせください。
森崎「今回こんな素敵な作品に出させていただくということで、感謝の気持ちでいっぱいです。表現者として、一皮も二皮も剥けるように日々精進していきたいと思います。観に来ていただくお客さまに素晴らしいものをお届けできるように、劇場でお待ちしております。」