井上芳雄「日本オリジナルミュージカルの傑作」 ミュージカル『シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ』囲み会見&ゲネプロレポート

ミュージカル『シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ』が1/7(火)、東京・シアタークリエにて開幕した。

1988年に音楽座の旗揚げ公演として産声を上げた本作。今回の上演版では、演出を小林香(ミュージカル「Little Women -若草物語-」、ミュージカル「ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812」ほか)が担当する。

1/6(土)、開幕に先立ち囲み会見とゲネプロが実施された。

会見には井上、咲妃みゆ、畠中洋、吉野圭吾、濱田めぐみ、福井晶一、土居裕子が出席。

左から福井・濱田・咲妃・井上・土居・畠中・吉野

主演の井上は「日本オリジナルミュージカルの傑作で、その素晴らしさに思わずおののく。土居さん、畠中さん、吉野さん、濱田さんたち元音楽座の皆さんも参加してくださって、新しい『シャボン玉』が作れるのは夢のようです」と本作出演への喜びを噛みしめた。「成功しなかったら僕たちのせい(笑)」と“井上節”を効かせつつ、「日本が誇る本作を大切にお届けしたい」と意気込む。咲妃は「(音楽座時代に)土居さんが大切に演じていらっしゃったこの役を務めさせて頂くことは、人生最大のチャレンジ」と本作への並々ならぬ思いを明かす。31年前の『シャボン玉』が舞台デビュー作であった畠中は「この作品の舞台にまた立てるとは想像していなかったので、今は震えが止まらない。言葉では言い尽くせない感動、躍動が全身を駆け巡っています」と、気持ちの昂りを見せた。吉野は19歳の時に『シャボン玉』を観劇し、それを機に役者を目指すようになったそう。「今の気持ちは…“バックバク”(苦笑)。すごい作品を目の前にして気合が入る。新しい『シャボン玉』を皆さまにお届けできるのをとても楽しみにしています」と、思い入れのある本作への緊張と期待を語った。濱田も、音楽座在籍時代に初めてツアーを経験したのが本作ということで、強い思い入れがあるようだ。そんな彼女は「稽古中もキャストが毎日号泣している状態(笑)。昭和の作品でありながら、現代にやることにまた意味があるような気がします」と力強くコメントした。吉野とWキャストの福井も、『シャボン玉』を観てミュージカルの世界を目指すこととなった俳優の一人。「今回出演できることが奇跡。令和の時代に作品のメッセージが響いて、愛に溢れる素敵な作品になると思います。作品を知らない方も、観たことがある方も、新たな『シャボン玉』を楽しみにして頂けたら」と目を輝かせながらメッセージを送る。そして音楽座初演で佳代を演じた土居は、「31年前に下北沢・本多劇場で、小道具や衣装を自分たちで作りながら幕を開けた作品。本日たくさんの方にご取材頂けていることを、31年前の自分たちに教えてあげたい」と感慨深さを露わにした。 続いてゲネプロの模様をお届け。

【あらすじ】
悠介(井上芳雄)はシャイで少し頼りない青年。周りの人々からいつも心配されながらも、作曲家として身を立てるという夢を志して懸命に努力していた。
ある日、悠介はスリを生業としている少女・佳代(咲妃みゆ)と遊園地の迷路で出会う。
身寄りが無くひねくれて生きてきた佳代だったが、「いつの日か夢は叶う」と告げる悠介の姿は、佳代に忘れていた素直な気持ちを思い出させてくれるのだった。
悠介は作曲家として認められ始め、佳代も小さな幸せを大切に過ごしていた。だが、佳代には本人も知らない秘密があった。それは悠介と佳代、そして周りの運命をも大きく動かしていき―。

井上が演じる悠介は、頼りがいはないが大切なものには真っすぐ。感情を吐露する場面、あまりにも自然発生的に彼の目から溢れる涙が印象的だ。また、井上がこれほど踊る作品も中々に貴重である。

同じように、吉野、濱田、上原理生といった日本ミュージカル界を牽引する面々が肩を並べて踊る姿など、他では観ることができない演出にも注目。ミュージカルファンにはこの機会をぜひ見逃さないで欲しい。咲妃は、彼女自身が醸し出す可憐で美しいイメージとは一転、気っ風のよい関西弁の女の子・佳代を熱演して新境地を開拓。歌唱シーンでは持前の伸びやかな歌声を響かせた。闊達な佳代、その明るさの裏に隠された過去とは……。本作の中で現実と向き合い、そして闘いながら成長していくその姿を見届けて頂きたい。 吉野(※福井とWキャスト)と濱田は、悠介を親のように温かく見守る喫茶店経営の夫婦を好演。圧倒的な歌唱力を持つ2人が奏でるハーモニーが会場を優しく包む。物語の鍵を握る宇宙人を演じるのは、土居・畠中・内藤大希、そして上原の4人。最初は地球人の考えを理解できなかった彼らだが、悠介や佳代の健気な姿を見て徐々に歩み寄るように……。宇宙人のコミカルなやり取りには笑いを、彼らの深い思いやりには涙を誘われた。 ちなみに、本作の中で上原はもうひと役を演じ分けているが、そのギャップもまた面白い。現実とSFの世界観が入り混じる本作。ファンタジー要素も強めだが、個性豊かなキャラクターたちに魅了されているうちに、自然とその世界へ引き込まれていった。

そして、井上が会見で触れていた“涙腺崩壊の特別なカーテンコール”だが…詳細は観劇時のお楽しみに。

公演は2/2(日)まで東京・シアタークリエにて。その後、2/7(金)~2/9(日)に福岡市民会館、2/12(水)~2/15(土)に大阪・新歌舞伎座にて上演される。

 

時間と空間を超えた永遠のラブストーリーを、ぜひ劇場で体験して頂きたい。取材・文・写真/ローソンチケット