鈴木拡樹 演じる冴えない青年が豹変!?『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』ゲネプロレポート《鈴木×井上 ver.》

2020年3月20日、ミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』が東京・シアタークリエにて待望の初日を迎えた。

本作は、映画『リトルマーメイド』『美女と野獣』『アラジン』などの音楽を手掛ける名コンビ、ハワード・アシュマン(脚本・歌詞)とアラン・メンケン(音楽)がディズニーに進出する前に製作し、オフ・ブロードウェーで大ヒットしたB級ホラー・コメディミュージカル。今回の上演版では、地味で冴えないが心優しい青年・シーモアを、を鈴木拡樹と三浦宏規の“Wヒロキ”がWキャストで演じる。

3月某日、本公演のゲネプロが2回行われた。シーモア役と、シーモアが想いを寄せる女性・オードリー役をそれぞれ、三浦×妃海 風/鈴木×井上小百合(乃木坂46)が演じた。本記事では鈴木×井上回のゲネプロの模様をお届けする。

【あらすじ】
さびれた街の小さな花屋で働く冴えない青年シーモアは、店主のムシュニクに怒られてばかり。シーモアは同僚のオードリーに恋をしているが、彼女にはオリンという歯科医のボーイフレンドがいる。

ある日、シーモアは町で奇妙な植物を手に入れる。意中のオードリーにちなんで、“オードリーⅡ”と名付けたその植物を店に置くと、客の来なかった店がなんと突然、大繁盛!

しかし、“オードリーⅡ”には、人びとを魅了する不思議な力がある一方で、あるとんでもない秘密が隠されていた。“オードリーⅡ”によってシーモアの人生は一変し、一躍有名人となるのだが――。

 

シーモアを演じる鈴木は、本作が本格的ミュージカル初出演となる。2.5次元舞台で数多くの主演を務めてきた鈴木だが、今回は前例にないほどに情けない役どころだ。

自分を“なにも持っていない男”と卑下し、仕事も恋もイマイチ。しかしオードリーⅡが人気になった途端、彼は“持っている男”として周囲にもてはやされる有名人に――。劇中でシーモアという青年の人物像は大きく変化していく。

鈴木は持ち前の演技力でシーモアの心の揺らぎを見事に表現した。彼の柔らかで優しい笑顔はもちろん、タカが外れたときの狂気に満ちた表情もまた魅力的で、観る者の目を引き付ける。また本作最大の魅力の一つであるポップな曲の数々も、軽やかな歌声と共に披露した。音符のベースに確固たる芝居が存在しており、表情豊かで丁寧な歌唱に好感触。本格的ミュージカルの堂々たるデビューを飾ったと言えるだろう。 井上は、ちょっぴりおバカなオードリーをキュートに演じる。セクシーな衣装姿や、大胆な変顔など、アイドルの現場では見られない井上の新たな一面が詰まった役に仕上がった。高めの声、そして絶妙なトーンでボケる彼女もまた、本作でコメディエンヌとしての才能を開花させたようだ。 他にも濃ゆいキャラクターが次々と登場する。

岸 祐二と石井一孝は、力強い歌声で作品を引っ張りつつ、かなり強めの個性と抜群のコメディセンスで劇場をたちまち笑いの渦に巻き込んだ。 オードリーⅡの声を務めるのは、なんとミュージシャンのデーモン閣下。ロックな歌声が他とは一線を画しており、その異質感がオードリーⅡという現実離れした存在の味を引き出している。 少人数編成のカンパニーだからこそ、キャスト一人一人が担うピースは重要。まりゑ・清水彩花・塚本 直のグルーヴな歌声や、開演前含め様々な役として登場する榎本成志・高瀬雄史の好演からも目が離せない。 そして開幕早々SNSで話題となっている3Dメガネを使った演出や、オードリーⅡを舞台上でどう生かすかというところだが…

詳細は劇場で確かめて頂きたい。きっと新しい劇体験に驚くことだろう。少しブラックな物語に、たくさんの笑いと愛が溢れている本作。難しいことは考えずに魅力的な音楽に身を委ね、大真面目にコメディを演じるキャストの熱にエキサイトしてみてはいかがだろう。 東京公演は4月1日までシアタークリエにて。その後、山形・愛知・静岡・大阪と4都市で上演予定。

 

取材・文・撮影/ローソンチケット