ミュージカル『るろうに剣心 京都編』 黒羽麻璃央 インタビュー

©和月伸宏/集英社

俳優として覇権を狙いたいから。志々雄を怪演してみせます


2020年11月より、IHIステージアラウンド東京で上演されるミュージカル『るろうに剣心 京都編』。主人公・緋村剣心の宿敵・志々雄真実には、数多くの舞台で活躍する黒羽麻璃央が抜擢された。脚本・演出を務める小池修一郎の期待を背負う黒羽が、初の360度回転劇場で、新たな勝負に挑む。

 

「『黒羽麻璃央、志々雄役か』と驚かせたい」。そう言って嬉しそうに笑った黒羽麻璃央。この秋、IHIステージアラウンド東京で上演される新作ミュージカル『るろうに剣心 京都編』で、小池徹平演じる主人公・緋村剣心の宿敵・志々雄真実役に挑む。

黒羽「話したいことがいっぱいある作品なんですよ(笑)。まず『るろうに剣心』は、漫画もアニメも子供の頃から一番好きで。漫画を読んでない年はないと思う。何度も読んでいます。そんな作品に、しかも志々雄という役で出演できることが非常に嬉しいです」


志々雄と言えば、悪のカリスマというキャラクター。役者としては演じ甲斐のある役だが、子供の頃はどう見えていたのか。

黒羽「見た目は怖かったですが、嫌いにはなれなかったですね。原作の和月伸宏先生も『志々雄は悪の美学の集大成』ということをおっしゃっているくらいで、悪役だけど言ってることは的を射ていた。剣心には剣心の信念や正義があるように、志々雄には志々雄の信念や正義があることを感じていました。でもやっぱり大人になるほど惹かれるキャラクターだと思います。カリスマ性があってカッコいい。僕、この公演が終わる時に志々雄ロスになりそうな気がしてますから(笑)」


黒羽と言えば爽やかな役柄を演じることも多かったが、最近は志々雄のようなダークな役も演じるようになった。

黒羽「小池先生と出会ってからそういう役が増えてきたと思います。コロナで上演中止になってしまいましたが『エリザベート』(’20)のルキーニも、『ロミオ&ジュリエット』(’19/共に演出 小池修一郎)のマーキューシオも、白か黒かで言えば黒のような役でした。ただそれは僕自身もやりたいなと思っていた役柄なので。そこに小池先生が引き寄せてくださったと思います」


長く2.5次元舞台を中心に活躍してきたが、ここ数年は立て続けに小池演出のミュージカル作品に出演している黒羽。担う役割も大きくなっており、信頼されているのでは?と尋ねると
「いやいや!」と慌てつつ「信頼より、期待だと思います」と語る。

黒羽「呼んでいただけることが嬉しいです。小池先生の作品の中で必要なピースとして求められていることが、俳優として嬉しい。僕は『ロミオ&ジュリエット』に出演したときに、ミュージカルの素晴らしさに感動したし、もっと出たいと思わせていただきました。稽古場ではたくさんダメ出しを受けますが(笑)、僕を成長させてくれる方なので。なんとしても期待に応えたいなと思っています」


これまでにも小池は、’16年の宝塚歌劇団版・浪漫活劇『るろうに剣心』、’18年の早霧せいな主演版・浪漫活劇『るろうに剣心』の脚本・演出を手掛けたが、今回は主演に小池徹平を迎えての完全新作となる。

黒羽「どんな作品になるか現時点ではわからないのですが、志々雄は発火するからそれをどう演出されるかも気になるし、楽曲もすごく楽しみです。小池徹平さんとはデュエットもあるんでしょうかね?恐れ多い……。足を引っ張らないように頑張ります!」


360度回転する円形の客席を劇場中央に配し、その周囲をステージとスクリーンがぐるりと取り囲むIHIステージアラウンド東京で上演されることも見どころのひとつ。

黒羽「同時にいくつものセットを建てることができるので、客席が回転するだけで場面が鮮やかに変わる。それによってより一層その世界観に入り込めるので、すごく贅沢な劇場だと思います。出る側としては、体力勝負になるでしょうね(笑)。殺陣も多い作品ですし。360度の劇場も立ったことないですし、包帯を巻く衣装も初めてだし、どうなるんだろう」


全身やけどを負い包帯グルグル巻きの志々雄。美しいビジュアルが隠れるのはもったいない気もするが。

黒羽「いえ、自分で言うのもなんですが(笑)、そこはいいなと思っています。芝居だけの勝負ができるので」


剣心と比類する剣術を持ち、頭の回転も速く、焼き殺されそうになった過去を持つピカレスク。黒羽も
「力がある人じゃないと演じられない役だと思う」と語る役柄だ。「芝居だけの勝負」を覚悟するその姿勢が頼もしい。

黒羽「命懸けで演じることになると思います。本音を言えば、志々雄の気持ちを知るために、死の淵に立ってみたいし、やけどの痛みを感じてみたい。やりませんけど!」


そしてふと
「きっとこの作品をやっているときの僕はいい人じゃないんだろうな」と呟いた黒羽。それほどに没頭するつもりでいるということだろう。

黒羽「でも楽しみ。僕を知ってくれている方を驚かせたいです。『志々雄みたいな役もできるんだ!』って裏切りたい。原作に『天下の覇権を狙ってみるのが“男”ってもんだろ』という志々雄の台詞がありますが、僕も俳優として覇権を狙いたいから。志々雄を怪演してみせます」

 

インタビュー・文/中川實穗

 

※構成/月刊ローチケ編集部 8月15日号より転載

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【プロフィール】
黒羽麻璃央
■クロバ マリオ ’93年7月6日、宮城県生まれ。第23回JUNON SUPERBOY CONTEST準グランプリ受賞。最近の主な出演作品にミュージカル『ロミオ&ジュリエット』、ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS)など