黒羽麻璃央、甲斐翔真 インタビュー|ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』

偉才・小池修一郎の潤色・演出により、日本オリジナル版として新たに誕生したミュージカル『ロミオ&ジュリエット』。2011年の初演から10年が経ち、再演を重ねるたびに注目を集めているメガヒット作が、新たなキャストで上演される。ロミオ役に挑むのは気鋭の若手、黒羽麻璃央と甲斐翔真の2人。大役に挑むその胸中を、2人に語ってもらった。

 

――ロミオを演じることが決まった時のお気持ちは?

黒羽 純粋にすごく嬉しい気持ちが、最初の感情として自分の中に流れてきました。前回マーキューシオ役で出演させていただいて、その時のロミオ役だった古川雄大さんと大野拓朗さんが本当に素敵だったんです。俳優として、嫉妬できるような素敵さだったので、その位置まで自分も行かなければならないというプレッシャーも、あとから徐々に出て来ました。でも、今はあまりプレッシャーはないです。稽古も始まって、楽しみっていうプラスの気持ちが増えてきました。大人チームには続投されている方もいますが、新しいチームで新しいものを作るという感覚が強い。なので、1から作れることの楽しみが増えています。

甲斐 僕は、とにかくビックリしました。こんな大作の大きな役ですから。これまでにロミオを演じてこられた先輩方は、今、第一線で活躍されている人ばかり。嬉しかったですけど、それと同時に本当に大きな役に挑戦するんだな、というプレッシャーもありました。そこから挑戦していく中で、情熱というか、絶対に良いものにしてやる!という気持ちになっています。

 

――甲斐さんは、過去に作品にかかわったことのある事務所の先輩にアドバイスをもらったりもされていますね。

黒羽 僕もそのYouTube動画見た!

甲斐 そうなんです。事務所の先輩には、ロミオ役もジュリエット役もマーキューシオ役も演じたことのある方がいて、夢のような動画企画でした。本当に、みなさんのお力を借りて「ロミオ&ジュリエット」の世界観を聞き出しました。ジュリエット目線のロミオ、マーキューシオ目線のロミオ、そしてロミオ目線のロミオと、いろんな目線からのお話を聞けたことで、とても勉強になりました。ロミオはロミオだけのものじゃない、と言いますか。皆さんから見たロミオも居るわけで。ジュリエットへの愛や情熱がありつつも、仲間たちから見たら女々しかったり、弱い面もある。そんな多面性があるんですよね。

 

――ロミオってどういう男だと捉えてる?
黒羽 ロミオは、優しさと、ピュアさと、愛情深さ、あと平和主義でできているような男です。清涼飲料水のコマーシャルに出てそうな男ですよね、ざっくりしたイメージで言うと(笑)。水みたいな男で、憎しみみたいな汚いものが流れてきたら、その色に染まるし、氾濫もする。基本的には穏やかなんだけど、純粋だからこそ、染まりやすい感じがしますね。

甲斐 すごく心が純粋な人で心優しいんだけれども、未来を見据えられる人。それがなぜなのかというと、もしかしたら育ちかも知れないし、遺伝子レベルの話なのかもしれない。世界の王だ!と騒いだ後に、僕は怖いんだ、この先に不穏な空気が僕には見えるんだ、と、シックスセンス的な予感や予兆をロミオは感じるんです。未来を予想できる力があるから、ケンカしていてはだめだ、結局不幸を呼ぶんだと分かっている。だから、人にやさしくするし、愛を大事にできる。意外と理性的な人かもしれません。

 

――では、ジュリエットの魅力ってどういうところでしょうか。

黒羽 少なからず、求めているものなど、自分に近しいものがあったんじゃないかな。だからこそあんなに一発で惹かれ合ったと思います。あと、決断力もすごいですよね。出会ってすぐに「早く結婚して!」なんて言えてしまう潔さ。男性の強さとはまた違う、女性の強さをジュリエットには感じます。

甲斐 もう、細胞レベルでの話なのかもしれません。見た瞬間に鳥肌が立って、自分が渇きに渇いて求めていたものが、目の前にフワッと現れて、細胞レベルで反応してしまった、という感じなんだと思います。

黒羽 一目ぼれってしたことある?

甲斐 無いなぁ。する感覚は分かるけど……。一目ぼれが100だとしたら、80くらいなら? それがロミオは多分、300くらい行ったんだと思う。

黒羽 振り切ったね、それは(笑)

甲斐 すぐさま結婚と言い始めるわけですから(笑)。最初は身分も知らないひとりの少女に出会って、恋に落ちたらジュリエットだった、というだけなんですよね。立場や地位は関係なく。でも、大人の事情で崩れ落ちていってしまう。

 

――ちなみに黒羽さんは一目ぼれの経験はある?

黒羽 僕も300とか100はないです(笑)。……過去の恋愛の話は恥ずかしいですけど(笑)、友達かな?みたいなところからだんだん仲良くなって、っていうのは意外とないかも。

 

――その最上級の出会いがロミオとジュリエットかも知れないですね。今回はダブルキャストとなりますが、お互いの印象は初対面から時間を経て変わってきた?

黒羽 僕はもう、最初からゴールデンレトリバーみたいな感じだと思ってます。

甲斐 ずーっと言われてますね(笑)

黒羽 そう。そのイメージは変わらないかな? でも甲斐くん、不器用ですオーラを出してたんだけど、そんなことはない。ダンス稽古とかしていても、すぐ振りを覚えていたし、テストで勉強していない!って言いつつ勉強してくるタイプじゃないかな(笑)

甲斐 僕は、意外なところとかは無かったかな。それこそ、はじめてお会いした時は意外に感じましたけど、お会いしてからはそんなに印象は変わっていないです。お会いする前は、キラキラして歩いてるイメージだったので。

黒羽 どんな奴だよ、それ(笑)

甲斐 (笑)。そう思っていたけど、冷静な方でした。でも、そのスイッチを持っていることが羨ましいです。

 

――ダンスや歌の難易度も高いようですが、今の手ごたえはいかがですか?

甲斐 稽古の初日から、「世界の王」の振り入れだったんですよ。もう、最初からフルスロットルです。

黒羽 そう! ♪~朝から、夜まで~、って本当に朝から夜まででした。ダンサーのみなさんがすごく大変そうでしたね。僕らがダブルキャストなんで、シングルキャストのみなさんは2回やるんですよ。僕らは入れ替わって1回なんで。常にフルパワーな感じで、本当にダンサーのみなさんスゴイな、と思いました。

甲斐 でも大変ですよ。汗かいて、ヒーヒー言いながら頑張っています。

黒羽 でも、すごく明るい雰囲気でしたよ、初日から。

甲斐 味方良介さんが、わりと元気な雰囲気にしてくれますよね。

黒羽 そうだね。だから、これはいい座組になるな、と思いました。まだお会いしていないキャストの方もいますが、初日からいい手ごたえがあったと思います。キャストも若くなって、この世界観ともマッチしているんじゃないかな。若者の暴走みたいなニュアンスがあります。

甲斐 確かに、現場がすごい“青い”ですよね。

黒羽 若さならではのワチャワチャ感とか仲の良さはすごく大事にして、そのまま投影されるくらいがいいんじゃないかな。

 

――演出の小池修一郎さんの印象もお聞かせください。

黒羽 実は、まだ今回の稽古場ではお会いしていないんです。

甲斐 本当に素晴らしい方で観てきたどの作品でもスゴイ、と思わされてきたので、今回どんな作品が出来上がるのかすごくワクワクしています。いろんな噂を耳にしていて、最初は分からないことを言われるけど、あとから意味が分かって来るようなんですね。そういう言葉が早く欲しいです(笑)。僕は何を言われるのかな、って。

黒羽 僕は、ちょっとずつ免疫がついてきました。たまに、まだ追いついていないことはありますけど、言わんとしていることはすごく伝わってきます。期待に応えたいな、と自然に思わせてくれるんですよ。言ってくれる言葉に説得力がないと、こちらも理解できないものだし、納得できない。前回、マーキューシオ役で初めてダブルキャストを経験して、自分と同じ役を別の人が演じているのを客席で観て、小池先生がおっしゃっていたこと、すごく細かい手の動き、足の運び方の意味がすごくわかったんです。なるほど、客席からこう見えるんだ!って。だからこそ、信じてやってみよう!と思わせてくれる。そういう方ですね。

 

――お2人がどのようなロミオを見せてくれるか、楽しみです! 公演を心待ちにしているファンにメッセージをお願いします。

黒羽 宝塚版もありますが、『ロミオ&ジュリエット』は日本オリジナル版の初演から10年という節目の年。そして、令和になってからは初めて上演する『ロミオ&ジュリエット』になります。そんな10年という節目に相応しい、そして令和1発目としてフレッシュで勢いのあるみなさんと一緒にお届けできる作品になっています。いろいろと辛いことが続いている時代ではありますが、愛することのいとおしさや、大切な人との時間をあらためて思い出させてくれる素敵な作品なので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらと思います。

甲斐 今のような状況の中で、作品を届けられる機会や場所を用意してくださったみなさまに感謝していますし、足を運んでくださるお客様に、本当に心から感謝しています。皆さんのおかげで僕らがステージに立って、『ロミオ&ジュリエット』が上演できますから。その感謝を忘れずに、もっともっと稽古をして、僕らが伝えたいメッセージを凝縮して、お届けしたいと思います。手にしていただいたチケットの価値をもっともっと高められるように、2021年にこの作品をやってよかったと感じていただけるように、頑張ります。人生観が変わるくらい、没頭して観ていただきたいな、と思います!

 

撮影・インタビュー・文/宮崎新之