作品解説
19世紀が生んだ世界的文豪ヴィクトル・ユゴーが自身の最高傑作と評した原作小説を、ミュージカル『マリー・アントワネット』の演出を手掛けたロバート・ヨハンソンが脚本を担当、フランク・ワイルドホーンの音楽、ジャック・マーフィーの歌詞でつむいだミュージカル「笑う男」は、2018年に韓国で世界初演、翌年の2019年4月に日生劇場にて日本初演を飾った。好評を博した日本初演は、当時から再演の声が多数寄せられていたが、2022年2月-、装いも新たに帝国劇場での公演が決定した。
口を割かれた奇怪な顔のために幼少から見世物として生きる“笑う男”グウィンプレンに扮するのは、人気・実力ともに日本演劇界のトップランナーの一人であり、ミュージカル、ストレートプレイの両方で活躍する浦井健治。グウィンプレンの育ての親であり見世物興行を取り仕切るウルシュスには、帝劇のミュージカル公演に数多く出演、日本ミュージカル界に君臨する名優・山口祐一郎。世代を超えて深い交流を続ける二人の俳優が、息の合った演技と歌のハーモニーで観客を魅了。演出を手掛けるのは2019年日本初演の演出をつとめた上田一豪が続投(翻訳・訳詞も担当)。2022年2月帝劇の舞台にまた一つ誕生する名作ミュージカルに期待!
あらすじ
1689年、イングランド、冬。
“子供買い”の異名を持つコンプラチコの手により、見世物として口を裂かれた醜悪な笑みを貼り付けられた少年、グウィンプレンは、一行の船から放り出され、一人あてもなく雪の中を彷徨う。そのさなか、凍え死んだ女性が抱える赤ん坊、後のデアを見つけ、道すがら偶然辿り着いた興行師、ウルシュスの元へ身を寄せた二人は彼と生活を共にすることになる。
時はたち青年となったグウィンプレンは、その奇怪な見た目で“笑う男”として話題を呼び、一躍有名人になっていた。盲目であるデアと共に自らの生い立ちを演じる興行で人気を博す二人は、いつしか互いを信頼し、愛し合う関係となる。
そこへ彼らの興行に興味を持ったジョシアナ公爵とその婚約者、デヴィッド・ディリー・ムーア卿が来訪する。醜くも魅惑的なグウィンプレンの姿に心を惹かれたジョシアナは、彼を自身の元へ呼びつけ誘惑する。突然の愛の言葉に動揺するグウィンプレンがウルシュスらの元に戻ると、突然牢獄に連行され、そこで王宮の使用人、フェドロより衝撃の事実が明かされる―。
本当に醜いのは、刻まれた貧者の笑顔か、それとも富める者の嘲笑か。運命に翻弄される“笑う男”が辿り着く先に待っているものとは―。
2019年4月日生劇場公演舞台写真
写真提供:東宝演劇部(2019年公演より)