世界中で上演され続け、熱狂的なファンを持つ人気ミュージカル『The Last 5 years』が小林香の新演出でかえってきた。過去3回の日本公演では、男女の心の揺れ動き・すれ違いを描いた普遍的なストーリーとドラマデスク賞を受賞した美しく魅力溢れる楽曲で多くの観客を魅了、2014年には映画化もされた。
上演を目前に控えた6月27日(日)、3組の出演者と演出・小林香による舞台挨拶が行われた。
時が逆行する女性と時が時間通りに進む男女の5年間を描く
――みなさま一言ずつご挨拶をお願いいたします。
小林:本作は20年前にオフ・ブロードウェイで誕生いたしました。タイトルにあるように、ある男女の5年間を描いたミュージカルです。男性は出会いから別れまで、女性は別れから出会いまでの時を遡る5年間という形をとっており、時が逆行する女性と時が時間通りに進む男性の交錯する演劇構造が非常に話題になった作品です。
作詞作曲・脚本を務めたジェイソン・ロバート・ブラウンの人生を反映している素晴らしい14曲で彩られており、2021年新演出版で上演させていただきます。20年前に作られた作品がいま上演させる意味も考えながら、演出させていただきました。この作品がみなさんのもとに届くことを楽しみにしております。
木村:この作品のお話をいただいた時、やらないという考えが自分の頭の中に思い浮かばず、いまの自分ができるすべてをこの作品にかけたいと思いました。稽古を経て、本当にこの作品に出会えてよかったと思っています。沢山の方にぜひ劇場に足をお運びいただきたいです。
村川:11年前にこの作品に出演させていただき、とても思い入れの強かった作品です。いつかまた出演できたら嬉しいなと思っており、11年越しにこういった形で叶うことになりました。でも(11年前とは)まったく違う新しい作品になっていて、挑戦することだらけで刺激的で楽しい毎日を過ごしおります。シンプルにみにきていただけたら嬉しいです。
水田:この後に行われる公開稽古のことで気もそぞろですが、それくらい難解な楽曲や作品に挑戦できることに本当に幸せに思っております。いまだからこそ、この時空を超えるパワーが広まって、この2021年版として上演できることを幸せに思っております。沢山の方に届けられるように精一杯がんばっていきたいです。
昆:明日が初日という現実にとても緊張しております。この作品に出演できることにやりがいを感じております。もともと作品とジェイソン・ロバート・ブラウンのつくる楽曲が大好きだったので、この作品に参加できて嬉しいです。3組とも違う個性があり、この作品がまったく異なる作品としてお客様にお届けできるものになりましいた。できれば3組ともみてほしいです!
平間:この作品で一番楽しみにしていたことは小林さんと一緒に作品を作れることでした。いつも感覚的に稽古をやっていくことのですが、(過去2回、一緒に作った作品で)小林さんとは言葉ではなく、その感覚的なところでなんとなく繋がれていると感じていて、今回も作品についてどうこうではなく、宇宙とか別の話とかしながら楽しく作品つくれました。そんな作品作りについてきてくれる花乃ちゃんもいて、本番がくるのが楽しみです。
花乃:たくさんの方に愛されているこの作品が小林さんの新演出によって、新たな魅力を放っていると感じております。本当に難曲ぞろいです。私は宝塚歌劇団退団後初めてのラブストーリーなので、挑戦することが多いのですが、挑戦させていただけることがありがたいと思っております。人生のきらめきが5年間にぎゅっとつまった作品です。平間さんと一緒にがんばっていきたいと思います。
まったく異なる3組のジェイミーとキャシー
――木村×村川ペアにお聞きします。相手役の印象を教えてください。
木村:本当に頼れるパートナー。作品の軸を作ってくださり、僕はもう彼女の周りを走り回るだけで上手くいきます。ジェイミーにとっても、木村達成にとっても欠かせない存在です。作中、一曲だけ目を合わせて愛を誓うシーンがありますが、その時の衣装が本当に素敵で、ビビっときましたね。
村川:頼りにしていますね。ミュージカル経験も豊富で勉強になることばかりです。シュッとしているけど、日に日に奇想天外な人だとわかってきて楽しいです。しゃべるとギャップのある方で面白いですね。
――水田×昆ペアならでは魅力はどういったところでしょうか。
水田・昆:なんでしょう…。これは他の人に聞いていただきたいです(笑)
平間:身体の比例?すごく体でも表現していると花乃ちゃんと話しています。
昆:小林さんにはパッション、エネルギッシュなペアとおっしゃっていただきましたね。
水田:1曲だけ二人で歌う曲はお互いのパワーを感じて、それに演技で返していっていますね。
昆:(その曲で)手を繋いで歌うシーンは花乃さんに「熱烈に愛し合っている」といわれましたね(笑)
――平間×花乃ペアは稽古を積んでどんなペアになりましたか。
平間:小林さんには見守っていきたくなる二人だねといわれ、自分たちでもそう感じています。形で例えると、「まる」ペアです。木村×村川ペアは「しかく」、水田×昆ペアは「さんかく」になりました。
花乃:ジェイミーは浮気をしてしまうのですが、平間さんのジェイミーは浮気をしても許してあげたくなる。女心に刺さりますね。
小林:花乃さん新婚さんですが、そんなこと言って大丈夫ですか。
花乃:それとこれは別です(笑)
小林:平間さんのおっしゃったまる・さんかく・しかくはわかりますね。言葉で例えると、平間×花乃ペアは「ジェントル」、水田×昆ペアは「パッション」、木村×村川ペアは「ナイーブ」です。稽古も別々にやっていて、お互いの稽古もみていないので、自ずとそれぞれの個性を拾い上げることができましたね。まったく同じテキストですが、全然違う作品に仕上がっていると思います。3組ともみていただきたいですね。
――最後に小林さんから作品の見どころをお願いいたします。
小林:とにかく音楽の美しさと珍しい演劇構造に話題がいく作品ですが、これから自分の人生を築いていく20代の若い男女が、愛する人も自分の夢に対しても強い思いを持ちながら、自分にうそをつくことなく本当に一生懸命生きている。一度とても愛し合ったのに、すれ違いが生まれていく様子が描かれているミュージカルです。いまは会いたくても人に会えない状況が続いておりますが、顔がみえなくてもだれかを強く思う姿があちこちで見受けられます。誰かを強く思う気持ちが人を生かすのだと、改めてこの作品を通して、しみじみと感じました。既婚者の方は特に「あ、わかる!」と共感していただけることが多い作品だと思いますし、出会いと別れを経験したことがある人であれば、自分の人生に照らし合わせながらみていただける作品になっております。ぜひオルタナティブシアターまで足をお運びいただければ嬉しいです。