宝塚歌劇 花組公演 ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』制作発表会レポートが到着!

1972年に「別冊少女コミック」に第1作目を発表以来、少女まんがの枠を超えて幅広い読者を獲得してきた、漫画史上の傑作・萩尾望都の「ポーの一族」。同作品のミュージカル化を夢見て宝塚歌劇団に入団した小池修一郎の脚本・演出により、宝塚歌劇団104周年幕開けの公演として花組で上演が決定、11月16日(木)に制作発表会が行われました!

18世紀から20世紀のヨーロッパを舞台とした物語「ポーの一族」は、永遠に年を取らず生き永らえていくバンパネラ“ポーの一族”に加わったエドガーが、アランやメリーベルを仲間に加え、哀しみをたたえつつ時空を超えて旅を続けるゴシック・ロマン。

エドガー、シーラ、アランに扮した明日海りお、仙名彩世、柚香光により、本作の作曲・編曲を担当する太田健のピアノの生演奏と共に「ポーの一族」(明日海・仙名・柚香)「哀しみのバンパネラ」(明日海)の2曲が披露された。

 

パフォーマンス終了直後に行われたトークショーには、原作の萩尾望都も登壇。率直な感想を求められた萩尾は『この世のものとも思えぬものを見て…頭がどこかに行ってしまいました…。(司会の中井美穂が表現していたのと同様に、胸が)バクバクするというのが分かります…!』と興奮した様子。

妖しげな紅色のライトの光の中に浮かび上がるようにして登場した瞬間、会場全体が、“まさに漫画の中から抜け出て来たよう”という思いで息を飲み、舞台袖から登場の様子を見つめていた柚香も本物の“バンパネラを見た”ような感覚を覚え思わずゾクッとした、というエドガー・ポーツネル役の明日海。“漫画のキャラクターを立体化する”という事の重大さを感じて緊張したという明日海は、原作を読んでの印象を問われると、普段役柄を演じていく際に自分の役の感情を追って行くのとはまた違い、「物語の中にどんどん入り込んでしまって、エドガーの気持ち、アランの気持ち、いろんな人の想いが押し寄せて来て、途中で狂ってしまいそうな…胸が凄く苦しくて、でも、その時間が凄く楽しくてしょうがなくて…という、ときめきの詰まった物語」であると感じたと語った。

シーラ・ポーツネル男爵夫人を演じる仙名は、原作を読んで、「バンパネラにも愛はある」という想いを強く持ったシーラを“愛”に生きる、とても魅力的な人だと感じたという。

初めてポーの一族を読んだ際、「音楽や香り」さえも想起させられるような、想像力をかきたてられる物語に衝撃を受けたという柚香。柚香が演じるアラン・トワイライトは、今回の宝塚版の『ポーの一族』では、まだ一族に加わる前の、人間の状態が長く描かれるとのこと。

原作の多くのエピソードの中から宝塚版では『メリーベルと銀のばら』以降の物語が描かれていくが、作品内容について問われると萩尾は「全部(小池先生に)お任せ」で、と即答。脚本・演出に関する注文も特にないということで全幅の信頼を寄せている様子が伺えたが、そんな2人の出会いは1985年に遡る。

小池が『哀しみのコルドバ』の新人公演を終えたその足で訪れたカフェで、運命的ともいえる出会いを果たした2人。隣り合った席に座っているのが萩尾望都であると気づいた小池が「もうこんな機会は一生ないかもしれない!」と思い切って声をかけ、名刺と、偶然持っていた紅い薔薇の花を手渡し、いつか「ポーの一族」を上演させて欲しいという旨を伝えたのだという。その時期、丁度ミュージカルの脚本を書いていた萩尾が、後に小池に脚本に関する意見を求めるなど、その後もやりとりは続き、今回の上演へと繋がっていく。

萩尾望都が「イメージしていた以上に美しく、小池先生のこだわりを感じた」という本作のポスター撮影の際、エドガーに扮した明日海を見たスタッフから「何十年も待ったかいがありましたね!」という声が上がった。小池も「宝塚では難しいかな、とも思っていたけれど、明日海がいるこの日のために、運命の神様は、このタイミングまで上演をしない、という状況を作られたのかな」と思った程だったという。

まさに時は来た!というタイミングで発表され、反響もかなりのものだったという本作への意気込みをそれぞれが語った。

明日海りお
「萩尾先生、小池先生と、作品のファンの皆様に、ご納得頂けるようなものを作りたいと思っております。稽古場で、エドガー!と呼ばれて自分が、はい!と返事をすることすら畏れ多いと感じるぐらいに、“エドガー”という存在は本当に特別なものだと思いますので、しっかりと自覚をもって、自分のイマジネーションをフル活用して、小池先生ともお話し合いをしながら、組子と共に力を合わせて、楽しく作品を作っていけたらいいなと思っております。」

 

仙名彩世
「小池先生の『ポーの一族』という作品への愛と夢が詰まった思いを受けて、私たちもこの作品の中で役として息づいていくことへの責任を感じています。沢山研究して、大切に大切に、作り上げていきたいと思います。」

 

柚香光
「本当に沢山の方に愛されて、大事にされて来ている作品ですので、誠意をもって、宝塚のファンの方にも、原作のファンの方にも、みなさんに喜んで頂けるように、心を込めて役と向き合っていきたいと思います。」

“萩尾望都があらゆる上演希望を断り続けた幻の舞台が30年の時を経て実現!”というように言われているが、実は小池の『蒼いくちづけ』『華麗なるギャツビー』を観劇し「どちらの作品もとても私好みで、その素晴らしいセンスに驚いて、小池先生なら“いつでも”舞台化して下さってOKですよ」と前々から伝えていたという萩尾。原作者自ら「こんなに待たされたけれど、待ったかいがありました!」と語る宝塚版『ポーの一族』。2018年の幕開けを飾る注目作は、2018/1/1(月)~2/5(月)兵庫・宝塚大劇場にて、2/16(金)~3/25(日)東京宝塚劇場にて上演される。

 

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*こぼれ話*

明日海はエドガーの魅力について「エドガーの存在すべてに魅力を感じています。萩尾先生の描かれる表情…目の寂しさであったり、結んだ口の薄そうなところだったり、後頭部に感じるオーラというか…立っているときの背骨のラインとか…、少年なのにセクシーでもあり、凄く惹きつけられるものがあるので、それを佇まいでどう表現したらいいものかと今困っているところです。」と苦笑しつつ、声色についても「男役をやっていく中で、声は深みがあればあるほど良いと思っていましたし、仕草も、なるべく男らしく見えるように研究してまいりましたので、いざエドガーを演じるとなった時に、声を凄く考え直さねばならないな、と感じました」と語っていたが、小池は「そんなに問題ないと思いますよ…?」と即座にコメント。「外見は高校生ぐらいだとしても、中身の年齢は百何歳だから」と小池から伝えられつつも明日海は「何年も何年も時を経て来た、深くてまろやかな声でありつつ、少年の声、というのを作れたらいいなと思います」と、役作りへのこだわりを見せていた。

約1ヶ月半後、2018年の幕開けと共にヴェールを脱ぐ明日海エドガー。その深く細やかな役作りに期待が高まる。

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撮影・文/ローチケ演劇部(ミ)