出演者勢揃い!One on One 34th note 『face-to-face』インタビュー

写真上演左から、田村良太、千田阿紗子、小林優太
写真下段左から、野口 準、藤原祐規、新 正俊、鎌田誠樹

プロデューススタイルでオリジナルミュージカルを上演するOne on Oneの最新作は、昨年、上演された『back-to-back』に登場した「コムロ探偵事務所」シリーズ第2弾。前作で圧倒的な存在感を放った名探偵コムロと愉快な仲間たちを中心に、今作では新たなキャストを迎えて再び難事件に挑戦する。いったいどんなミステリー&ミュージカルとなっているのか?9月22日(木)からの新宿シアタートップスでの開幕を目前に、出演者全員(新 正俊、田村良太、野口準、小林優太、千田阿紗子、鎌田誠樹、藤原祐規)に『face-to-face』への意気込みを語って貰った。

ーー昨年、上演された『back-to-back』に登場したコムロ探偵事務所の面々と再び会えるんですね! 

千田 前作の1年後というイメージです。正当な続編でもあり、スピンオフ的な要素もあると思います。

ーー『back-to-back』に登場した“コムロ探偵事務所”チーム5名に加えて、謎の来客として鎌田誠樹さんと野口準さんが加わる豪華布陣になるとか?

藤原祐規

藤原 そうです。『back-to-back』をご覧になった方はご存知なのですが、実はコムロ探偵事務所にはもうひとり、アンドウアイリ(法月康平)という男がいるのですが、彼は今回、とある依頼で出張中なので声の出演のみの参加です。とはいえ、しっかり爪痕を残してくれます。

ーーコムロ探偵事務所シリーズは、オリジナルミュージカルでありながら、ミステリーとしても楽しめるのが魅力だと思います

藤原 浅井さやかさんが書くストーリーなので、どんでん返しがあったり、見事な伏線回収がラストに用意されていたり、何度見ても発見がある舞台になっていると思います。

ーー今日は出演する7名全員にお越しいただいています。『face-to-face』に挑む意気込みをそれぞれお聞かせ下さい

藤原 偏屈な探偵コムロをやっている藤原祐規です。前作は、アンドウアイリとのバディものというか、いがみ合いながらもだんだんお互い認めあっていくラインがあったんですけど、今作はアンドウアイリがいないので、前作とは違う軸で演じなければいけないのが難しいとところですね。でも、心強いみんながいてくれたり、新しい風を吹かせてくれるふたりが入ってくれたことで『back-to-back』とはまったく違う話をお見せできると思います。

 新 正俊です。コムロ先生の雑用をやっている小説家志望のワダ役を演じています。前作の終わりで「小説家になりたい」と夢を語ったところで終わって、自分の中でもワダ君このあとどうなるのかなぁと思っていたので、今作ではその後を見せられるだけでなく、ストーリーテーラーのような立ち位置でやらせて貰えるので凄くありがたいと思っています。

新 正俊

千田 今回は、ワダくんがメンバーとコムロさんの出会いを聞いたりもしていくんだよね?

 そうなんです。コムロ先生とみなさんの出会いを聞けるのも嬉しいです。エピソード・ゼロ的なところもあります。

藤原 もうすっかりワダとして語っているじゃん。

 あ、そうですね。ワダ目線で語ってしまいました(笑)。

小林 大家の息子・ハトムラ役の小林優太です。前作は探り探りやっていたんですけど、今回はしっかりとハトムラを身体に落とし込んで、ふわふわな感じのハトムラを纏って帰ってきたいと思います。新しいキャストもいらっしゃるので、より騒がしくパワーアップしたコムロ探偵事務所をお見せしたいと思います。

小林優太

千田 千田阿紗子です。私はコムロ探偵事務所に協力を求めに行く警部補のコグレ役です。オリジナルミュージカルって毎回、ひとりひとりにセリフや歌があるので、このメンバーでしかできない作品が今回も生まれるんだろうなと思うと楽しみでなりません。

田村 発明家で情報屋のマエクラ役の田村良太です。前作の『back-to-back』は背中合わせという意味だったので、ちょっとニヒルというか、クールなテイストがあったと思います。だけど、今回は『face-to-face』ということで、正面を向き合っているという意味があるので、そのぶん味が濃くなっています。正面から向き合って、ぶつかったり、はしゃいだりするシーンも多くありますし。

 確かにめちゃくちゃ濃くなっているね。

田村 でしょう? あと、前回同様、劇中劇が用意されているのですが、そこではみなさん更に濃いキャラを演じられていいますので、注目してください。

一同 あなたが一番、濃いでしょう!

田村 そう? 

一同 そうだよ!(笑)

ーー前作から引き続き出演する5名に加えて、鎌田さんと野口さんが、コムロ探偵事務所への訪問者として登場するわけですね

藤原 はい。このおふたりがまた強烈なキャラクターなんですよ。

野口 若手推理小説家アサガリク役をやらせていただいています野口準です。One on Oneの舞台に出演するのははじめてなんですけど、浅井さんの……なんて言ったらいいんでしょう?天才が喋ったときに一瞬、置いていかれるような空気が凄いなと毎回、思っています。話を聞いて理解はできるんですけど、実際動いてみると「ああ、そういうことか!」って思わされる瞬間がけっこうあって、そこまで考えていらっしゃるんだなと。圧倒される日々です。

鎌田 私が演じるカネダイチという男は、元・刑事で元・探偵で、現在はミステリーコンサルタントです。One on Oneの公演に出るのは12年ぶりになります。久しぶりに出られるのも嬉しいですし、浅井さんの考える舞台だからきっと凄いものになるんだろうと思って楽しみにしていました。『back-to‐back』も見たんですけど、今回のストーリーと全部繋がっていて、間違いない舞台になりますね。なんの問題もない。

鎌田誠樹

一同 問題ない(笑)。

ーー鎌田さんは、12年ぶりということですが、One on Oneの雰囲気に変化はありましたか?

一同 ないんかいっ!

鎌田 ないですね。

藤原 12年前と一緒ってこと?

鎌田 うーん。雰囲気とか色がね、変わっていないというか。

千田 色はそうかも。変わらない部分はありますよね。

鎌田 そう。変わっていないなあ。

ーーそもそも今回の続編はいつから動き出したのでしょうか?最初からシリーズものを予定されていたのですか?

一同 ぜんぜん!

 続編の話なんて一切、なかったよね?やれたらいいねっていう話は出てましたけど。

千田 前作を観たお客さんから「続編はないんですか?」という多くの声を頂いたからですね。そんなにみなさんコムロ探偵事務所を好いてくれるなら、じゃあ、やりますか!って企画が進みました。

ーー前作の好評を受けて続編が生まれたんですね

千田 浅井さんも、続編をやることになるとは思わずに『back-to-back』は書いたって言われていました。

藤原 キャラが立っている役がいっぱいあったから、この役にスポットを当てたら面白いねって話は僕らも当時からしていましたけど、まさか続編をやるとは思っていませんでした。

ーー『face-to-face』に新たに登場する鎌田さんと野口さんは、コムロ探偵事務所の面々に負けないくらい個性的なキャラクターだと伺いましたが、今はどんな役作りを?

藤原 そうそう。おかしなキャラクターなんですよ。稽古をしていても、あのキャラクターをふたりがどこから持ってきたのか気になって(笑)。

一同 わかる(笑)。

藤原 鎌田さんはまあ……なんとなくわかるんですけど。

鎌田 なんで?カネダイチがおかしなキャラクターってこと!?

ーー鎌田さん的にはおかしなキャラクターではないと思って演じられているわけですね

鎌田 ハハハ。まあ、作り込むまではいかないかなとは思っています(笑)。

藤原 作らずにできるんですね、あれを(笑)。

千田 まんま、カネダイチさんですからね。胡散臭くていいです。

田村 そう。ずっと笑わせて貰っています。

藤原 鎌田さんの普段の柔らかさみたいなものが、カネダイチの堂々とした胡散臭さに近いんですよ。ボケるときもテンションの変動ゼロでくるところとか。

鎌田 褒められてる?どっち?

ーー褒められていると思います(笑)。野口さん演じるアサガリクは、物語のキーパーソンともいえる難しい役だと思います

野口 浅井さんが、こういうキャラクターを目指して欲しいって言ってくださったので、それに応えるように頑張っています。たまに浅井さんの想像を超えたくて、遊んでみたりすると「やりすぎてるよ」って言われたりして(笑)。あ、ここまでいくとダメなんだなって。

小林 そういうところも含めてリクっぽいですよね(笑)。

藤原 稽古中は相手役として見ているのでリクだなと思っているんですけど、客席側から見ると、ホントにぶっ飛んでる奴だなって思います。

ーー鎌田さんも野口さんもどんな役に仕上がっているのか楽しみです

藤原 いやあ、凄いですよ。

ーーOne on Oneのいちばんの魅力は、ストーリーと音楽の融合です。今回はミステリーものということで、音楽がどのように挿入されるのか想像がつきません

千田 One on One主宰の浅井さんは、脚本も演出も音楽も自分で作られるので、“音楽”の演出もけっこう大きいと思います。

ーー脚本・演出はわかりますが、音楽も自分で作られる方は珍しいですよね?

千田 そうですね。なので、ご自身で書かれた脚本に対して、「あ、ここにこんな曲調の曲が欲しいわ」ってオーダーに自分で応えることができるんですよね(笑)。この人の声で、こんな歌を聴きたいとか、これを歌って欲しいとか、ご自身のイメージに応じたアテ書きができるので役者さんたちの魅力はさらにそこで引き出されているのかなって気はします。音楽が加わることでより立体的になっていくというか。

千田阿紗子

小林 浅井さんはもう天才という言葉でしか表現できないです。浅井さんのもとでやれているというだけで幸せですね。なかなか浅井さんのもとでやれる機会はないので幸せな日々だと実感しています。

ーー浅井楽曲の魅力は?

千田 今回も劇中劇があるのですが、そこで流れる楽曲を聴いたときに、浅井さんが前にやりたいって言ってた“大袈裟な楽曲”という言葉を思い出しました。これか~って(笑)。曲が流れた瞬間に、クセの強い登場人物たちが出てきて、何が起きても不思議じゃないような(笑)。いかにもって曲が作れるのは凄いですよ。

藤原 わかる。まさに、ここでこの曲調ね!みたいな。

千田 今回は新さんと野口さんが生演奏で心情を歌うシーンがあるんですけど、浅井さんの期待値を感じますね。

ーー生演奏ですか?

野口 実際にまだ一回くらいしか合わせていないのでわからないんですけど、想像している未来では、そこも楽しめたらいいなと思っています。

野口 準

 生演奏で歌うのがはじめてなんですよ。だからプレッシャーですよね。とはいえ、本番が近づいてきたので今は楽しんでやろうとしか思っていないです。

小林 楽しみですね~。

 あ~、なんか緊張してきた(笑)。

野口 僕はミュージカルに出るのははじめてなんですけど、どうしても気を張るので、歌うときは歌だけってなっちゃうんですよね。浅井さんからは「セリフとして歌って欲しい」と言われているので、そこは意識しています。

田村 じゅんじゅんの歌声はすごいキレイだよ。ハスキーで透明感があって、絶対、これから成長するんだろうなと思わせてくれるいい声なんです。声質が凄くて。それをぜひ聴いてほしいですね。

野口 おおっ~。太字でお願いします!

田村 ミステリーってどうしても説明が必要だったりして、言葉が多くなるんです。だけど、ミュージカルだと音楽に乗せてセリフを喋ったり、セリフのうしろにBGMがあったり、楽しみながら状況の説明が入ってくる。そういう部分もエンターテイメントになるのが、ミステリーをミュージカルにするメリットかなって思います。

小林 いいこと言ってます~。

ーー『face-to-face』の見どころ、ここは見て欲しいというところは?

藤原 僕がやるコムロや鎌田さんが演じるカネダイチは、天才というキャラクターなので間違えられない。長セリフとかを間違えると一気に説得力がなくなるんでね。そこらへんは難しいです。特に浅井さんの作品は伏線が張り巡らされているので、コムロはどこまで知っている演技をするべきか? っていうのは考えて演じなければいけないですから。

ーーお客さんはコムロとカネダイチは天才だと思って見ているから、そこがブレちゃいけないんですね

藤原 そう。前作の稽古中に、ワダとコムロがはじめて会うってシーンをエチュード(即興劇)でやったんです。それを見た浅井さんは「コムロはひと目みた瞬間にすべてを見抜いて欲しいんだよね」って。いやいや、それは無理でしょうって(笑)。さすがに言いましたね。コムロには天才的な能力が備わっているけど、その能力はオレにはないから(笑)。エチュードでは無理ですよって(笑)。

一同 爆笑

藤原 そんなこともありましたけど、重要なのは今、コムロはどこまでわかっていて、予想通りに進んでいると思ってやっているのか。で、一方で知らない部分はどこなのかっていう。前作もそこが難しかったので、しっかり浅井さんと詰めて臨みたいと思います。

ーーコムロがどこまでわかっているのかを見極めるのも見どころですね。新さん演じるワダは今回、重要な役です

 ワダとしては、開始数十秒の長セリフを観てほしいですね。いきなり長セリフがあるので、そこはワダ的には見どころなんじゃないかなと思います。

鎌田 本編でもみんなそれぞれ個性が強い役なんですけど、劇中劇では更に個性が爆発する役をそれぞれ演じますのでそこは凄い。特に田村さんに注目してください。いつも稽古場で笑わせていただいています。

田村 僕が演じるマエクラは、趣味が盗聴とハッキングという男なので、基本、裏で何かやってるんです。なので、出ていないところもマエクラを感じながら見て欲しいですね。このとき、マエクラは何をやってるんだろう?と想像しながら見てもらえると深い見方ができると思います。

田村良太

小林 今回はハトムラくんのソロパートがあります。ハトムラらしいふわふわ感をお伝えできればいいなと思っているので、楽しみにしていてください。

千田 コグレは緩急の緩の部分を担う部分が大きいと思っています。探偵事務所の面々に真剣に集中して貰うところと、コムロ探偵事務所って楽しいなと思って貰うところの両方を見せられたらいいなと思っています。

野口 全体を通してコメディ要素が強い印象なんですけど、だからこそ、そのあいだで出てくるしっとりしたシーンとかが、よりグッとくるものがあります。笑いながら、涙腺をくすぐられる瞬間というか。歌も感情が乗る楽曲なのでぜひ聴いてください。

ーー最後にメッセージをお願いします

藤原 『back-to-back』をご覧になられたみなさまも、はじめてご覧になろうとしているみなさまにも、“ミステリーコメディ&ちょっとしっとりエンタメミュージカル”をお届けできると思っています。個人的にも思い入れの強い作品になりましたので、たくさんの人に観てもらえたら嬉しいです。

取材・文/高畠正人