撮影:渡部孝弘
写真左から)こがけん、濱田めぐみ、風間杜夫、新納慎也
ミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』が、2月7日(火)に東京・日生劇場にて初日を迎えた。2018年米国トニー賞で、ノミネートされた11部門のうち、作品賞を含む10部門を独占した傑作『バンズ・ヴィジット』。エジプトのアレクサンドリア警察音楽隊が、イスラエルの空港に到着し、ペタハ・ティクヴァへ向かうが、辿り着いたのはよく似た名前の違う街、ベイト・ハティクヴァという辺境の地であった。そこから始まる奇妙で温かい一夜を描いているのが本作である。
この開幕を目前にした2月6日(月)に公開通し稽古が行われ、キャストからのコメントと舞台写真が到着。レポートをお届けする。
回転盆の舞台は真っ赤に染め上げられていて、日生劇場の客席の赤い絨毯と赤い座席と相まって劇場全体が中東のうだるような熱気に包まれている感覚に陥る。
写真左から) 友部柚里、辰巳智秋、こがけん、渡辺大輔 写真左から) 青柳塁斗、高田実那
警察音楽隊の楽隊長を務めるトゥフィークを演じるのは、風間杜夫。原作映画では寡黙な男性であったが、風間が演じると厳格さの中にもどこか愛らしさが感じられるのも新鮮である。
迷子になった警察音楽隊を快く手助けする食堂の女主人ディナを演じるのは濱田めぐみ。快活な中に妖艶な表情も覗かせるこの役は、彼女の持ち前の歌唱力は勿論、新たな魅力が垣間見える。
「鎌倉殿の13人」でのブレイクが記憶に新しい新納慎也も、ブロードウェイで本作を見て出演を熱望した程の想い入れを持っており、トランペット奏者カーレドの色男ぶりを嫌味なく演じている。
こがけん演じる電話男は終始舞台上に立ち、奇妙な存在として描かれている。しかし終盤で披露される「声を聞かせて」での歌唱は、えもいわれぬ情緒に満ちていて、観客も涙を流すほどの力がある。
ミュージシャンとして第一線で活躍する面々(太田惠資、梅津和時、星衛、常味裕司、立岩潤三)が、警察音楽隊として舞台上で芝居をしながら、演奏を兼ねる点も大きな魅力であり、本作の世界に入り込む上で重要な効果を生んでいる。
米国で本作が圧倒的な評価を得た背景には、楽曲や俳優陣の素晴らしさもさることながら、歴史的に対峙してきたエジプトとイスラエル二国の国民同士が、国境を越えて心を通わせるという、人間の本来あるべき姿を描いたメッセージが、時勢に即して人々の心に刺さったことも大きい。そうした歴史に馴染みが薄い日本の観客にも、より深く作品を理解する一助となるよう、劇場では時代背景を解説するチラシが配布されるので、観劇前に是非手に取ってみてほしい。
=解説チラシ=
写真左から) 風間杜夫、濱田めぐみ 写真左から) 新納慎也、濱田めぐみ、風間杜
其々の役にストーリーがあり、この「一晩」に、ほんの少しだけ其々の世界が変わる様は言葉では言い表せない感動がある。
本作は、2月7日(火)~2月23日(木・祝)の東京・日生劇場に続いて、大阪公演が3月6日(月)~3月8日(水)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで、愛知公演は3月11日(土)~3月12日(日)刈谷市総合文化センター大ホールでの上演が控えている。
※山崎 薫の「崎」は、(タツサキ)が正式表記
※高田実那の「高」は、(ハシゴダカ)が正式表記
演出家・キャストコメント到着!
■演出:森新太郎
淡々とした芝居のようでいて、根底には静かに熱い感情が満ち満ちています。人の孤独とはこんなにも深いものなのか、そしてだからこそ、その孤独を分かってもらえることは、こんなにも救われることなのか。稽古場で幾度となく、そんなことを考えさせられました。人生に疲れ、心に傷を負っている人には、ちょっとした軟膏剤になるかもしれないミュージカルです。
すべての俳優とミュージシャンとスタッフが、作品のもつ繊細さと遊び心を表現するために全力を傾けてくれました。あとは観客の皆様の想像力をお借りするだけです。ミュージカル畑の演出家でない私が言うのも何なのですが、題材と言い、音楽と言い、かなり変わったミュージカルだと思います。この魅力は言葉ではなかなか言い表せません。
■トゥフィーク(指揮者)役:風間杜夫
12月から稽古を約二か月、今の気持ちとしては大変ワクワクしております。一時も早くお客様の前で演じたいなと。初日の幕が開くことを楽しみにしております。
異国が舞台の作品ですが、文化の違う国の人同士が言葉を越える情や心の繋がりの様、これは我々日本人でも理解できるので、私たちの感覚で演じてみたいと思っています。
たった一晩のさりげないお話です。ですが、出会いと別れの切なさがとてつもなく、また一流のミュージシャンによる演奏。こんな贅沢な芝居は無いと思います。一人でも多くの方に客席で楽しんで頂きたいと思います。
■ディナ役:濱田めぐみ
ようやく初日ということで、みんなで一丸となって稽古を進めてまいりました。
今迄やった演目の中でもトップクラスの難しいメロディの連続でしたが、楽隊の皆様のロマンチックで、エモーショナルな演奏と合わさってお届けできるものは、とても素晴らしい仕上がりになっています。ぜひ劇場で楽しんでいただければと思います。
■カーレド(トランペット)役:新納慎也
世界中で戦争が起きていたり、コロナ禍であったり、平和を願ういまの時代にまさに上演するべき作品だと思っています。随所にとても繊細な演出が施されていて、これまでとはちょっと違うタイプのミュージカルになっています。この作品に込められた想いやメッセージを、日本のお客さんがどういう風に受け止めてくださるのか楽しみにしております。ぜひ劇場にいらしてください。
■電話男役:こがけん
とにかくたくさん稽古をやらせていただき、芸人を始めてからこんなに同じことを練習する経験がなかったので、流石に飽きるかなと思ったんですけど、めちゃくちゃ面白くて。衣裳をつけた稽古場での通し稽古で、盆に座って流れて移動している時に感極まって泣いてしまって、それを隠しながら演技したこともありました。そのくらい面白い作品です。『迷子の警察音楽隊』ですが、演技では迷子にならなければいいなと思っています。
これから観劇の人はその前に!観劇後の人は、もう一度!!
WOWOWで放送されたミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』の特別番組「たった一夜の出会いと別れ」をYouTubeで公開中!
開幕前の稽古場に潜入し、“風間杜夫&濱田めぐみ”によるスペシャル対談も収録された9分の動画をチェック!ブロードウェイの願いが託された作品の魅力に迫る。
詳細はこちら ⇒ https://horipro-stage.jp/pickup/bandsvisit20230206_01/
★もっと楽しむための開幕直前講座もチェック!https://horipro-stage.jp/pickup/bandsvisit20230206-2/