ミュージカル『魔女の宅急便』山戸穂乃葉インタビュー

角野栄子の児童書を原作にしたミュージカル「魔女の宅急便」が2024年3月に東京・日本青年館ホールと大阪・新歌舞伎座にて上演される。「魔女の宅急便」は、1989年にスタジオジブリによるアニメーション映画化され、その後蜷川幸雄の手によりミュージカル化と、2016年にはイギリスでも舞台化され、多くの人々の記憶に残る作品。2017年には新演出で再びミュージカル化され、2018年、2021年と再演を重ね好評を博している。2024年版でのキキ役を射止めたのは、第9回「東宝シンデレラ」オーディションでミュージカル賞を受賞した山戸穂乃葉。トンボ役には深田竜生が決定した。本作で舞台デビューを果たす山戸は、どのような想いで作品に臨むのだろうか。話を聞いた。


――第9回「東宝シンデレラ」オーディションでミュージカル賞を獲得されてから、初のミュージカル出演となります。今のお気持ちをお聞かせください。

初めてのことで戸惑ったり引っかかったりすることがあると思いますが、練習してミュージカルで活躍されている方と並んで一緒にやれるよう頑張っていきたいです。ミュージカルは歌うだけなのかと思っていましたが、演技や物語がしっかりとあると知り、こんなにも面白いのかと思うようになりました。今は月1回くらいのペースでミュージカルを観に行っています。


――ミュージカルの面白さをどんなところに感じますか?

ミュージカルって1つのジャンルではありますが、その中でもたくさん分かれていて、全部違っているんです。その面白さも、作品によって全てが違っていて、その幅広さがとても魅力的ですね。


――「魔女の宅急便」にまつわる思い出はありますか?

小さい頃、毎年の誕生日におじいちゃんからスタジオジブリ作品のDVDを貰っていました。その中に「魔女の宅急便」もあり、初めて観たときは、魔女の存在を信じてしまっていましたね。もしかしたら現実にいるんじゃないか、と魔女に対しての好奇心が生まれました。13歳なんてまだ小さいのに、1人で違う街に行く勇気もすごいです。でも、私自身も後先考えずにどんどんとやってしまうタイプで、いつも「どうにかなるでしょ」と思ってしまっているので、そういうところはキキちゃんに似ているかも知れません。


――キキを演じるにあたって、どんなところが大事になってくると思いますか。

キキちゃんは13歳ですが、私自身は舞台に立つときには16歳になっています。まずはその年齢差を感じさせないようにしたいです。そして、魔女であることの特別感も大切にしたいと思います。普通は空を飛ぶことはできないけど、キキちゃんは魔女だから、空から見た景色を知っています。そこから見える景色を知っている特別感を出していきたいです。

 


――もし魔法使いになれたら、どんな魔法が欲しいですか?

「あの時こうしていればよかった」っていう経験が今までにたくさんあるので、時間を戻せる魔法が欲しいです。実は、スマホをすぐ落としてしまうんですね。この間も落としてしまって画面がバキバキに割れてしまいました。画面が割れたのは初めてではなくて、親からも今回は自分で払いなさいと言われてしまったので、お金が飛んで行ってしまいました。スマホを落とす前に戻したいです。あとは、もしキキちゃんみたいに飛べるようになったら、雲の上や飛行機と同じくらいまで飛んで行って、飛行機に乗っている人を驚かせたいです(笑)


――原作やアニメ映画のエピソードで好きな場面はありますか?

やっぱり、キキちゃんが飛べなくなってしまった後、トンボに危機が訪れて必ず助けに行かなければならなくなったところです。飛ぶことはできなくても助けに行こうという、キキちゃんの気持ちが、とても印象に残っています。


――初舞台に向けて、楽しみにしていることはありますか?

ミュージカルの他作品を観ていても、飛ぶシーン(フライング)はいつかやってみたいと思っていました。それがまさか初舞台の作品で経験できるなんて、とても楽しみにしています。とてもしんどいのか、逆にとても楽しいのか、どちらなのかはまだ分からないですが、今はワクワクしています。あと、ミュージカルって最後にみんな揃って歌ったり盛り上がったりするシーンがありますよね。その場面もとても楽しみにしている瞬間です。


――ビジュアル撮影をされて、作品の入り口に立ったようなお気持ちになったかと思います。キキになった自分を見て、どんな感想を持たれましたか?

今まで、髪は一番短くても肩より下で、前髪も作ったことがありませんでした。だからか、第一印象は「え、誰?」でしたね。家族にも写真メッセージを送りましたが、妹から「ショートも前髪も似合わない」と言われてしまいました(笑)


――ご家族からすると見慣れなさすぎるのかもしれないですね(笑)。ショートヘアも赤いリボンもすごくカワイイですよ。撮影には、どんなお気持ちで臨まれましたか?

キキちゃんが飛んだ時の気持ちで撮影しました。基本は笑顔で、「あ、街が見える」とか脳内で景色を想像していました。

 


――今回はミュージカル作品ということで歌やダンスのパフォーマンスもあります。ダンスはもともとお得意でいらっしゃるそうですが、歌など挑戦の部分もあるかと思いますがいかがですか。

お話を頂いたときに「キキはずっと歌ってるよ」って言われていたんです。それを聞いて、最初から最後までずっとキレイに声を出していられるかな?とか、不安も感じています。地声から裏声に変わるところが今の課題なので、本番までに解決できるようになるのか心配ですね。歌のレッスンは以前から定期的にやっており、歌うことももともと好きでしたが、だんだんと感情やストーリーを考えながら歌うことの楽しさが分かるようになってきました。自分なりに、こんな感じで歌ってみたい、という工夫をしていて、それが今は楽しいです。


――ダンスなどの身体表現はいかがですか?

高校生になって、ダンスの練習時間が減ってしまっているんです。だから、カンが衰えているかも知れません。ダンスは、自分はこう見せたい、こう表現出来たら、というところを鏡で確認していくのがとても楽しいです。もともと音楽が好きで、その好きな音楽の中で表現しているということ自体が、ダンスがとても好きなポイントになっていると思います。


――初舞台でたくさんの挑戦もありますが、人との出会いも初めてばかりだと思います。そういう新しい環境に飛び込んでいくのは得意なほうですか?

私、緊張がよくわからないんです。自分がどうなったら緊張しているのか、わからないんですね。いつも「とりあえずいっちゃえ!」というタイプです。ただオーディションのファイナルの時に、マイクで話す時間があったんですが、その時に手がずっと震えてしまったんですね。今思うと、それが初めての緊張だったかも知れません。初めてお会いする人も、きっかけさえあれば、私のおしゃべりが止まらないので(笑)、きっと今回の舞台でも緊張せずにみなさんと頑張れると思います。


――初めての人と仲良くなる時の、自分なりのコツはありますか?

とにかく共通点を見つけて、その話題を話すことです。関西出身なら関西の話題でおしゃべりするとか、お相手の方のお仕事などで興味があるところについてお聞きするとかですね。何か共通の話題を見つけるように意識しています。


――今回共演の方々でお会いするのが楽しみな方はいらっしゃいますか。

みなさん楽しみなんですけど、個人的に楽しみなのは横山だいすけさんです。歌のお兄さんとして、まさに自分がリアルタイム拝見していた方なので、お話できるのがすごく楽しみです。

 


――「東宝シンデレラ」でミュージカル賞を受賞して事務所に入ってから約1年、どんなところが変化したと自分では感じていますか。

久しぶりにダンスレッスンに行ったときに、表情をつけられるようになったと自分でも感じました。この時はこういう表情というのが、演技をしているときでも少しだけできるようになりましたね。でも最近は、むしろ考えすぎて自然じゃないようにも見えているような気がしてしまうんです。それが今回の作品に挑む中で、どんなふうに変わっていくかも楽しみにしています。


――初舞台に向けてお仕事が忙しくなってくるかとは思いますが、普段リラックスできるのはどんな時間ですか。

リラックスですか? 私、あまり暇な時間を作りたくないんですよね。常に外に居たくて、友達と何かしていたいと思っています。リラックスと言うよりは、友達とご飯に行ったり、今の時期ならイルミネーションを観に行ったりして、時間ができたら友達とアクティブに遊んでる時間が多いですね。ご飯はピザが好きなんですよ。窯で焼いたピザのふわふわの耳が、とてもおいしくて大好きです。


――俳優としての第一歩をこの作品で迎えることになりましたが、今後、どんな自分になっていきたいですか。

ミュージカルだけではなく、ドラマや映画の映像作品も、その他のお仕事も幅広くいろんなことができるようになっていきたいです。事務所の先輩方もとても幅広く活躍していらっしゃいますし、私もそうなっていけるように頑張りたいと思います。そして、山戸穂乃葉と言えば、誰もが知ってくれているような存在になりたいですね。知ってくださっているだけではなく、ちゃんと私の演技やお仕事も含めて知っていただけるようになりたいと思います。


――最後に、公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします!

初めての大きなお仕事、初めての舞台で初主演をさせていただくので、不安もあります。ですが今回の舞台で一番頑張らなきゃいけないのは、私だと思っています。みなさんから観て、楽しいなと思っていただけるところ、共感してもらえるところをたくさん作っていけるように頑張りますので、ぜひ観に来ていただけると嬉しいです!

 

 

インタビュー・文/宮崎新之