ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』製作発表レポート

(撮影:引地信彦)

ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』製作発表が2月17日(土)クラブeXで行われた。記者やカメラマン、そして抽選で選ばれた一般オーディエンスが駆けつけ、会場は熱気に満ち溢れていた。2017年日本初演、2020年再演、そして3演目となる今回。前回、2020年の際はコロナ禍で日程が半分に減り、海外クリエイターの来日が不可能だった中で敢行された奇跡の公演。それから4年が経ち、長期にわたるオーディションで1000人を超える応募者の中から選ばれたのが浅田良舞、石黒瑛土、井上宇一郎、春山嘉夢一。ついに新たなビリーが見られるのだ。

ほとばしるエネルギー!ビリーは生きる喜びの象徴

主催者代表挨拶では、ホリプログループの堀義貴会長が、これまでの日本のビリーたちの活躍について言及。バレエコンクールで活躍する人、K-POPアイドル、東大生、バトントワリング世界大会優勝、海外留学、高校の声楽科へ進学した人など、みんな高みを目指して今も頑張っているという。ビリーの精神がご本人の中にしっかり息づいていることに驚き、感動してしまう。

次に4人のビリーによる「エレクトリシティ」のパフォーマンスが披露された。イギリスのロイヤルバレエスクールを受験したビリーが、面接官から踊っている時の気持ちを聞かれ、その思いを表現する名場面。通常は一人で踊るが、この製作発表のために4人編成の特別バージョンとなっている。

バッグを斜めがけしたビリーたちが登場すると、ああ、これだ!と鳥肌が立った。「うまく言えません」の歌い出しだけで心が震える。最初はソロを繋ぎ、コーラスへ。4人が一緒に「ぼくは、もう自由!」と叫び、ダンスが始まった。『白鳥の湖』のアレンジされたメロディーに乗せて、技が次々と繰り出される。いやはや、みんな上手いなぁ!素晴らしいのは、きれいに整えて歌う、踊るというより、気持ちを思う存分乗せてのびのびと表現。エネルギーがほとばしるところだ。最後の連続ピルエットでは、挑む一人のビリーに周りのビリーたちが頑張れ!と励ます。そんな団結や連帯を感じさせるのもこの作品ならでは。何より、パフォーマンスから見えるバレエへの情熱、夢に向かうひたむきさ、努力し高みを目指す尊さ…。ビリーは生きる喜びそのものの象徴なのだと実感し、すっかり目頭が熱くなった。早く本番が観たい!

質疑応答では、あれほどのびのびと踊っていたビリーたちが緊張気味で、その初々しさが可愛らしい。大人キャストたちが、マイクをとってあげるなどお世話していたのも微笑ましかった。作品の大ファンで特別番組のナビゲーターを務めてきた綾瀬はるか、そしてトニー役の吉田広大、オールダー・ビリー役の厚地康雄の映像コメントがあり、最後はビリーたちの熱い決意で締め括られた。『名前にも込められているように良く舞いたい!』(浅田)、『常識を打ち破るビリーになりたい!』(石黒)、『お客さんを楽しませられるよう、エネルギーを出す!』(井上)、『希望を与えられるようなビリーになりたい!』(春山)。彼らが更なる夢を掴み取り羽ばたく姿が待ち遠しい。2024年の『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』、絶対に見逃せない。

キャストコメント

■浅田良舞(ビリー)

パフォーマンスが無事に終わってほっとしています。緊張しましたが、楽しくきれいにできてよかったです。ビリーのオーディションを受けたのは、所属しているバレエスタジオの先輩二人がビリーになったから。オーディションではそれまでやったことがなかったアクロバットやタップができて楽しかったです。難しかったり辛かったりもしたけど、できるようになって楽しくなりました。自分の名前に入っているように、良く舞いたいです。

■石黒瑛土(ビリー)

お客さんに自分の踊りをお見せできて最高でした。緊張したけど、拍手をいただいてほっとしました。(ビリーのオーディションを受けた)きっかけは、加藤航世くんと渡部出日寿くんのビリーを観て、やりたいなと。タップがみんなより遅れていて、まだ頑張りが必要だなと思います。苦手なことを克服して、常識を打ち破るビリーになりたいです。

■井上宇一郎(ビリー)

パフォーマンスでは好きなダンスができて楽しかったです。気持ちは最高です!僕は『リトル・ダンサー』のDVDを見て素晴らしいと思い、ビリーをやってみたいと思いました。オーディション期間はみんなと仲良くできて楽しかったし、タップやアクロバット、ダンスといろんなことに挑戦することができました。なぜこんなことができるんだろう?と自分でも驚いています。

■春山嘉夢一(ビリー)

舞台裏では緊張していたけど、踊り出したら楽しくて、まるで天国に行ったみたいでした。(ビリーのオーディションを受けた)きっかけはバレエを始めた頃に観て感動して、絶対ビリーになりたいと思いました。夢を諦めないところが僕と似ています。タップもたくさん練習して、少しずつできるようになって嬉しかったです。お客さんに希望を与えられるビリーになるように頑張ります。

■益岡徹(お父さん/初演より3回目)

ビリーたちの踊りに全てが語られていますね。さびれた炭鉱町に広がる、大人たちの閉塞感や失望。そこで次世代を担う子供が、希望と夢を持って羽ばたこうとする、その姿が感動的です。初演、再演のビリーたちを見ていると、幼かったのにどんどん大人になり、自慢の息子になっていく。ビリーたちに本当の父ちゃんだと思って欲しいです。

■鶴見辰吾(お父さん/初参加)

2017年の初演を観た時、本当に感動しました。帰宅して即、僕は妻に観るべきだと言いました。次の日、妻は観に行きました。僕が観たお父さんは吉田鋼太郎さん。妻が観たのは益岡徹さん。今回、自分の休演日のタイミングに益岡さんバージョンを客席からしっかり観たいと思います。

■安蘭けい(ウィルキンソン先生/2回目)

前回も4人のビリーと一緒にやって、初日から千秋楽まで彼らが成長する姿を間近に見て感動しました。ダブルで回るのも精一杯だったビリーが、4回転ができるようになったりして、素晴らしいなと。今回も楽しみです。

■濱田めぐみ(ウィルキンソン先生/初参加)

偶然、2005年のロンドン初演のトライアウトを観ました。1幕終わった時に感動して立ち上がれず、2幕終わったら立ちすくんでしまって、それくらい感動しました。日本公演も楽しみにしていて、全く同じ感動を味わいました。爆発的なエネルギーと夢を求めるひたむきさがこの作品の魅力。楽しみにしています。

■根岸季衣(おばあちゃん/初演より3回目)

「エレクトリシティ」は本番ではそれぞれの得意技が入った、個性溢れるナンバーで、いつも舞台袖から大丈夫かな?と見ていました。みんなぎりぎりのところまで挑戦し、力を全く抜くことがない。演者もみんなから力をもらえる、とても素敵な時間です。これをまたやれると思っただけで、今からわくわくしています。

■阿知波悟美(おばあちゃん/2回目)

上演が決まったと聞いて、バンザイしました。また絶対にやりたいと思っていたので嬉しいです。前回出演した時、ビリーたちが踊る場面では、自分が出番じゃなくても袖に見に行って、混んでいたらモニターに釘付けになっていました。技が決まると楽屋で大きな拍手をして、モニターに「偉い!」と声をかける、そのくらい見ながら力が入る、素敵な時間だったことを覚えています。

■西川大貴(トニー/初参加)

この作品はビリーの成長、そして親子やコミュニティの話でもあります。トニーは熱い男で、今までがっちりした人が演じてきたイメージ。しかしいきなり身長は伸びないので(笑)、自分なりの役を作っていきたいです。この4人のビリーと本当の兄弟になれるように頑張ります。ビリーのみんな、仲良くしてくれい!

■芋洗坂係長(ジョージ/初参加)

初演を拝見して、感動して大号泣したので、オーディションの時点で夢のようでした。演出家さんとは英語で「ハロー!」なんて言い合いながら、和気あいあいとして楽しかったです。ビリー4人が1年間どれだけ大変な思いをしてきたことか!今日もパフォーマンスを大人たちが見ていて、みんな号泣していました。ビリーたち、素晴らしいよ。僕もボクシングのイケメンコーチとして頑張ります!

■永野亮比己(オールダー・ビリー/2回目)

僕が踊る「ドリームバレエ」は、ビリーが夢に向かって羽ばたいていく心理が描かれ、ビリーとの信頼関係の上に成り立つ重要な場面です。前回は責任と緊張もありましたが、それを超えて幸せも感じられました。そのシーンをあらためて経験できるのはこの上ない喜びです。ビリーたちのダンスはブラボーでした。負けていられないです。

■山科諒馬(オールダー・ビリー/初参加)

僕は映画版の「リトル・ダンサー」を見たことをきっかけに、バレエを始めました。なので、この作品にはすごく思い入れがあります。ビリーと同じように、夢に向かってバレエを始めようかと悩んでいた時、背中を押してもらった。そのビリーの未来の姿を演じられることを、すごく嬉しく思います。4人のパフォーマンスを見て、僕も帯を締め直さないと!