日本初演!ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』開幕までの道 第6弾!

“世界に希望を与えた”感動の100分、日本初演のミュージカル『カム フロム アウェイ』がいよいよ開幕! 

<初日前日囲み取材+ゲネプロレポート>

9.11に起きた未曽有の緊急事態の裏側にあった実話をもとにした、心温まる100分のノンストップ・ミュージカル『カム フロム アウェイ』。3月7日(木)の初日開幕の前日に行われた囲み取材には、安蘭けい、石川禅、浦井健治、加藤和樹、咲妃みゆ、シルビア・グラブ、田代万里生、橋本さとし、濱田めぐみ、森公美子、柚希礼音、吉原光夫、この12人の精鋭キャストに加え、オリジナル演出家のクリストファー・アシュリーも登場。まずはクリストファー・アシュリーから、本作の創作にあたっての想いと、日本キャストと共に稽古をしてみての感想が語られた(通訳:寺田ゆい)。

撮影:田中亜紀

クリストファー・アシュリー

「この作品を作ってから9年が経ち、その間も世界では大きな分断、そしてたくさんの紛争が起こっております。こうして戦争やパンデミックがある中で、この作品、つまり優しさや他人に対して寛容な思いを持つ作品を手がけることができたことにはとても幸せを感じています。しかもここに出てくる人たちは実在の、今もお元気で生きている方々がモデルになっていまして、そういう作品を手がけることも僕は初めてでした。彼らはこの作品のメイキングの段階からとても協力してくださり、今ではこの作品のファンとして世界中の公演を追っかけ回してくれてもいます。僕は今回、この日本キャストのみなさんとご一緒できて、本当に楽しい気持ちになっています。既にこの作品については何もかも知り尽くしたつもりでいましたが、今回のキャストたちから改めて作品のこと、そして登場人物たちのことについてたくさんのことを学ばせてもらいました。ここにいるみなさんが好きすぎて、今後の自分のキャリアの中でこの人たち以外とはお仕事しないと思っているくらいです!(笑)(この言葉にはキャスト陣から歓声があがる)」。

続いて、キャストそれぞれからも「初日を迎えるにあたっての今の思いと、作品の見どころ」についてコメントが寄せられた。

安蘭けい

撮影:田中亜紀

「振り返ると約6カ月という時間をかけて、準備や稽古をしてきたことになります。だけど、あっという間すぎて、明日が初日だなんて信じられません。本当にすごくすごく密度の高いお稽古をさせてもらってきたので、きっと明日は素晴らしい初日になるだろうなと思っています。そしてクリスさんが今とてもいい言葉を言ってくださったので、ものすごくうれしくって!(笑) ぜひこの日本キャストにしか出せない味を、多くのみなさまにお届けできたらなと思っています」

石川禅

撮影:田中亜紀

「この半年間、私たちは本当に高い高いハードルをいくつもいくつもみんなで一緒に乗り越えてやってきました。私たちは、実在の人物を演じること自体は経験があるのですが、今も元気で実在していらっしゃる方たちを演じることって、まずないんです。なので、最後の高いハードルというのは限りなくドキュメントに近づくということになるような気がします。嘘をつかずに、その方たちの気持ちに成り代わって演技をするということがきっと私たちの最後のハードルですね。ただ、そのハードルを必死に飛び越えていこうと思いつつも、このキャスト陣があまりにも楽しい人たちが揃っているもので、毎日毎日爆笑しながら稽古しています。どうぞみなさん、劇場にお越しください。楽しいですよ!」

浦井健治

撮影:田中亜紀

「昨日お稽古をしていましたら、舞台袖で安蘭さんが「始まるってことは終わっちゃうんだよね。さびしいな」なんて言っていたんです。そのくらい、本当にこの6カ月の間、みんな毎日8時間くらい一緒に過ごしてきて。舞台稽古に入るとスタンバイキャストの4名も舞台上を見守ってくれているんですけれども、その4人もなんだか少しさびしげな顔をしていて。やはりこの16人のキャスト全員で、しっかり5月まで完走できることを目標にやっていくんだ、ここまでやってこられたことも幸せなんだ、と改めて思います。まさにガンダー空港の奇跡と言いますか、この作品から人と人の絆は温かいんだということを僕は感じているので、引き続き大切にやっていきたいと思います」

加藤和樹

撮影:田中亜紀

「僕は稽古が始まる前から、このミュージカル界のアベンジャーズたちと共演できるということですごくドキドキしていたのですが。そして稽古を重ねていく中で、みんなで同じ時間を共有し、失敗してもそれを笑いに変えながら前に進んでいくこの感覚は、ひとつのカンパニーというよりもファミリーな感じがすごくするんですね。ですから、不安ももちろんありますけれども、この長い稽古期間で自分たちが培ってきたものを舞台上でしっかりと出していきたい。この日比谷界隈で一番エネルギーのある作品に仕上がっていると思いますので、ぜひ劇場に観に来ていただければなと思います」

咲妃みゆ

撮影:田中亜紀

「お稽古場を振り返ると本当に壮絶だったんですけれども、でも本当に愛おしい日々でした。一人の人間として、今後の人生で心にずっと持っておきたい大切な考え方などを、私自身もこの作品からたくさん学ばせていただけたことに、とても感謝しています。この作品のモデルとなった方々への敬意を胸に、一回一回大切にお客様にお届けしたいと思います。そして見どころといえば、美しい舞台セット! これは必見です!!」

シルビア・グラブ

撮影:田中亜紀

「先ほど、実は初めてこの舞台上で照明も舞台装置も全部合わせて、通し稽古をさせていただいたのですが。お芝居の終盤に、M13『Somewhere in the Middle of Nowhere』という曲があるんですけど、あそこでみんなで一列になって上を向いて窓の外を見た瞬間、実は私、涙が出てきちゃって。めっちゃ感動しちゃったんです。いや、本当にすごいです。これで最後のピースであるお客様が入った状態になったら、どれだけ冷静にいられるかわからないなと思ったくらい。本当に最高でした! 出ている側もですけど、きっと観る側もすごく最高だと思いますので、劇場へぜひお越しください!!」

田代万里生

撮影:田中亜紀

「今回、衣装もご覧の通り、ナチュラルというかカジュアルと言いますか。普段着なのか衣裳なのかわからないぐらい自然で、特に男性はみんなまったくメイクをしていません。僕も、劇中で帽子をかぶるので整髪料すらつけていない状態です。突然起きた出来事の最中の話なので、きれいに着飾ってはいないわけですね。こんなに日常と非日常というカテゴライズ感がない作品は、僕も初めてです。ステージ数も全部で50公演以上あり、地方もまわります。この作品は全一幕で約100分なんですけど、100分×50ということは5000分くらい、僕らはこれからも一緒に歩んでいくということですね(笑)。ぜひたくさんの方に見届けていただきたいなと思っております」

橋本さとし

撮影:田中亜紀

「今、衣裳が普段着っぽいと言っていましたが、町長役の僕の場合は普段、絶対着ないような服ですね。それにしても僕の役者キャリアの中で、最も過酷な稽古だったような気がします。そんなミスらないほうなんですけどね……いや、めちゃくちゃミスしてましたけど(笑)、ミスしてもみんなが笑い飛ばしてくれるので。稽古は恥のかき捨てと言いますか、いっぱい稽古でミスしながら、やっとここまでたどり着いたなと思っています。このみんなと一緒に、稽古を経て、劇場に入って明日初日を迎えられるというのは、本当に嬉しい限りです。営業トークでなく、本気で言います、ぜひ観に来てください! お待ちしております!!」

濱田めぐみ

撮影:田中亜紀

「私はみなさんとちょっと違って、アメリカン航空初の女性パイロットの役ということで普段着ではなく今は機長の衣裳です(笑)。今回、お稽古場にいるときからこのメンバーたちと1メートル以上離れずに、ピタッと毎日8時間ずーっと一緒にいたので。本当に他人ではなくすっかりファミリー感覚で、親族の寄り集まりみたいなニュアンスがありました。ステージに上がってもそのまま近くでみんなお芝居するので、舞台上でちょっと不安かなと思っても見回せばそばに家族がいるような、そんな感覚です。その我々がお稽古場で半年ほどかけて積み上げてきたこのチームワークが、本番中もおそらく垣間見られると思います。観客のみなさまも毎回、そのチームワークの一員になってくださるんだと思うと、楽しみで仕方ないです。明日から開幕しますが、最後までケガなく全員で走り抜けたいと思います」

森公美子

撮影:田中亜紀

「私はハンナという役をやっているのですが、わかりやすく言うとメガネをかけている時はハンナで、メガネを取っている時は島民役だということで、お客様に今はどっちの役なのかがわかっていただけるかと思いますけれども。とにかく本当に、このみなさんとすごい稽古をしておりまして、私はもう膝がダメになるんじゃないかと思ったくらいでした。いろいろと幸せ感をこのファミリーからいただいていてとても楽しい稽古場だったんですが、私なんと7キロ痩せました! “カムフロムアウェイ・ダイエット”、ですね(笑)。ドキュメンタリーを見たり、9.11の映像を改めて見直したり、たくさん勉強もさせていただきました。そして私が一番、ニューファンドランド島にいる方に近い体型だということもよくわかりました、実際のハンナのモデルの方にも体型だけは似ております(笑)。という感じで私もがんばっていますので、ぜひ観に来てください」

柚希礼音

撮影:田中亜紀

「このミュージカルは“演じない”ということもテーマで。稽古中から何度も何度もそれを言われて、それが私にはめちゃめちゃ難しかったです。そこで悩むたびに、このすごいキャストのみなさまが本当に家族のように「こうしたらいいんじゃない」とか「ああしたらいいんじゃない」と教えてくれるんですよ。『カム フロム アウェイ』の作品自体がとても温かい物語なのですが、このキャストのみんなも温かくて。温か過ぎてもうどうにかなるんじゃないかと思うくらいに、心がポカポカとしています。明日からのお客様にも、この温かい物語を心から届けたいと思っておりますので、ぜひ5月の大千穐楽の日まで、たくさんの方に見ていただきたいと思います」

吉原光夫

撮影:田中亜紀

「僕は本当なら人の言うことを聞きたくなくて役者をやり始めたようなものだったんですが、この作品の稽古期間中はどうしても、番号とか位置とかが決められていてまるで軍隊のように言うことを聞かなきゃいけなかったので、地獄すぎて稽古が早く終わればいいのにと思っていました(笑)。だけどこの、すごく穏やかで誇り高い作品が果たしてどう日本のお客さんに届くか。というのも、この作品を商業演劇にする際、ちょっとノイズが走る感覚があると思うので。それをどうホリプロさんはじめ、ここにいるミュージカル界のポンコツスターたちが、いかに穏やかに優しく、人に対して思いを寄せて、手に手を取ってこの作品をお客さんに届けるか、ということです。まだ始まってはいないので、明日まで緊張を決して緩めずに、僕もちゃんと人の言うことを聞いて(笑)、がんばりたいなと思っています。3.11があった日本で、そしてまだ地震が起きたりして不安な状態になっていますし、そして人が人を傷つけ合ってばかりの今の時代に、この作品はきっと穏やかな風を与えてくれると思います。心地よく、一緒に楽しんでください」

会見最後には、今作がらみの会見があるたびに締めを担当し、すっかりお馴染みとなった町長クロード役の橋本さとしが今回も前方に歩み出てきて「今、悩んでいる方、壁にぶつかっている方、前に進もうと思いつつも不安になっている方々にエールを送りたいと思います!」と宣言すると、ここでなぜか全員で“三三七拍子”! 加えて劇中の楽曲にちなんだ、このカンパニーの合言葉ともいえる「Welcome to the Rock!」と全員で叫んで、笑顔、笑顔のうちに会見は終了。

そして会見後には劇場内にて、本番さながらのゲネプロが行われた。

撮影:田中亜紀

舞台には太い幹の樹木に、美しい空が広がり、中央にはそれぞれデザインの違う椅子と、テーブル。ここは北米大陸の東端、カナダのニューファンドランド島だ。開演時間になると、舞台袖からスッと姿を現す12人のキャストたち。オープニングナンバーのM1『Welcome to The Rock』で彼らはまず島民となり、それぞれのキャラクター紹介も兼ねつつ、9.11のあの日はいつものように平和な日常を過ごしていたのに、ラジオから流れてきた突然のニュースに衝撃を受ける様子がセリフや歌詞から伝わってくる。場面や曲が変わるとキャストは、今度はあの時アメリカの上空を飛行中だった飛行機の乗客たちに。行き先もわからず不安なまま急遽着陸した場所がたまたまニューファンドランド島のガンダー国際空港だったことで、国、言葉、宗教、文化、食事、常識、何もかもが違う人々が“カム・フロム・アウェイズ(遠くから来た人たちの意)”と呼ばれ、やはり突然のことに戸惑いを隠せない島民たちのサポートを受けることとなる。

キャストは12人で約100人の人物を演じ分けていくのだが、特に見た目を大きく変えることはしない。上着を羽織るか脱ぐか、帽子をかぶったりメガネをかけたりする程度で、あとは声色や姿勢や仕草だけで、見事に瞬時にキャラクターを変えていく。また舞台装置の椅子などもキャスト自らが運び、決められた位置にセッティング。その並べ方で、その場所が学校になり、飛行機内になり、賑やかなバーになったり、する。先ほどの囲み取材で口々に「とんでもなく過酷な稽古だった」と語っていた理由が、このステージングを観るだけでよくわかる。

起こった事件の衝撃度はもちろんのことながら、その裏側で巻き込まれた人々が放り込まれた事態の大変さは想像以上に深刻だった。この作品ではそこにちょっとした笑える瞬間や、微笑ましいエピソードが挟み込まれていてホッとできる構成にもなっている。島民たちと乗客たちが少しずつ歩み寄ってコミュニケーションがとれるようになっていく様子は、見守っているこちら側の胸もアツくなる瞬間だった。

楽曲も優れていてケルト風だったり、伝統的なイメージの曲もあれば、聞き覚えのあるポップなメロディーが流れたりもするなど、ジャンルも幅広くて面白味がある。その音楽をミュージカル界の第一人者ばかりの12人が、ソロで聴かせるパートがあるのはもちろん、いろいろな組み合わせで歌い、意外な顔合わせのハーモニーが楽しめることもうれしい。

実話がベースとはいえ、たった100分の物語の中には新たな出会いがあったり、仲良しカップルに隙間風が吹いたりすることもあり、そして緊急事態にもかかわらず見知らぬ相手に心を尽くす人々の優しさの大切さや、さらにはジェンダーのことや人種差別など社会問題の欠片までしっかりと織り込まれている構成力にも脱帽するばかり。乗客たちがこの島の人々に出逢えたことで変わったように、観客はこのミュージカルに出逢ったことでおそらく何かしら心に残るものをギフトとして持ち帰ることになるだろうと確信した。

災害や事故や事件が次から次へと起こるなどして、世知辛いこと続きの昨今。しかし、それでもまだまだ人間も世の中も捨てたものじゃないと思わせてくれ、劇場全体が温かく穏やかな空気に包まれるという、他ではなかなか味わえない劇体験ができるはず。笑いと涙に満ちた、贅沢で豊かで貴重な100分を、ぜひとも劇場でナマで堪能してほしい。東京公演は日生劇場で3月29日(金)まで、その後、大阪、愛知、福岡、熊本、群馬で上演予定、どうかお見逃しなく。

取材・文:田中里津子

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