ミュージカル『ナビレラーそれでも蝶は舞うー』|三浦宏規+川平慈英インタビュー

韓国発、感動必至のミュージカル『ナビレラ』を

三浦宏規と川平慈英の新鮮な顔合わせで日本初演!

人気のWEB漫画をもとに舞台化され話題を集めた、韓国傑作ミュージカル『ナビレラ』。今回の日本初演にあたっては、上演台本と演出を劇団KAKUTA主宰で脚本家・演出家であると同時に、自ら演者でもある桑原裕子が手がけることになった。一流バレエダンサーを目指すイ・チェロク役には、5歳からクラシックバレエを習っていたという経験を持つ三浦宏規が、そして定年退職後に一度は諦めたバレエへの想いを叶えようとするシム・ドクチュル役には、ミュージカルだけでなくジャンルを越えて幅広く活躍中の川平慈英が扮する。5/18(土)の開幕に向け本格的な稽古が始まった段階で、これが初共演とはいえ早くもすっかり息の合った三浦と川平に、作品への想いを大いに語ってもらった。

――『ナビレラ』の稽古もいよいよ始まり、現在の心境はいかがでしょうか。

三浦 まだ稽古が始まって1週間ちょっとなんですが、既に「すごい作品が生まれようとしているのかも!」という期待感でいっぱいです。本読みをした時点から、強くそう思っていて。もう、なんだか毎日ドキドキしています。

川平 本読みで僕、涙が止まらなかったからね。最初の本読みで、あそこまで涙が溢れてきたことって。

三浦 ないです、ないです!

川平 僕も、今までそんな経験なかった。まあ年齢的に、涙もろくなってきているとは思うけれども(笑)。ホント「お前、なにそんなに泣いてんの、普通の稽古なのに」って自分でも思うんだけど。宏規くんと目線を合わせて歌う場面でも、特に泣かせるような歌詞でもないはずで、明るい曲にもかかわらず、涙が溢れてくるんだよ。

三浦 旋律というか、音楽の美しさもあって。

川平 メロディーの強さというか、琴線に触れる圧倒的なメロディー力というか。曲に、ここまでキャストがやられるなんてね。もちろん、演じている僕らがビービー泣いてはいけないとわかっているんだけど、どうもまだ抗いがたい。俺自身も「おい、ちょっとジェイ、集中しろよ!」って思う。稽古ではまだここから悪戦苦闘しそうですが、この作品は演じる側も浄化される、そういうお話なんですよね。

三浦 そうですね、確かに浄化される感覚、僕もあります。

川平 セリフや歌詞を覚えるほかにもいろいろとテクニカルなことなど、稽古中にはストレスもあるじゃないですか。だけど、なんだかとても浄化されるんです。

三浦 本当におっしゃる通りだと思います。基本的に本読みの時には台本を見ながら読むわけなんですが、ポイントポイントで目線を会話している相手のほうに向けたりしていたら、最後のシーンで慈英さんのことを見た瞬間にもう「ウウッ!?」ってなってしまって。

川平 それを見て、僕も「ウウウッ!!」ってなっちゃった(笑)。

三浦 「セリフが喋れなくなるから、慈英さんの顔を見ちゃだめだ!」と思ったくらい。そもそも、物語がバレエを題材にしているところから僕にはストーリーがめちゃくちゃ刺さっていたんです。自分にとって、すごく親近感のある話だったので。でもそれを抜きにしてもおそらく、さまざまな人が心を揺さぶられるストーリー展開になっていますしね。老若男女、多くの方に楽しんで観ていただける作品になるんじゃないかと思っています。

川平 お客さんが「あ、私はあの人だ」とか「私のおじいちゃんに似ているな」とか「私の知ってる人と一緒だ」みたいに、自分が当事者になれるようなストーリーになっているんです。ストレートに言っちゃうと、本当にこんなに勇気をもらえる作品ってほかにないと思いますよ。

三浦 なんか泣けてきますもん、慈英さんを見ているだけで。

川平 僕が演じるドクチュルと、妻のブンイを演じている岡まゆみさんとのシーンでは、プロデューサーと演出家まで泣いていましたから。

三浦 稽古場で、プロデューサーさんがあそこまで泣いてるの、初めて見ました。

川平 僕も、初めて見た!

三浦 もっと達観した目で見守っているのかと思ったら、ウーウー泣いてて。

川平 嗚咽していましたね。まあ、そこで甘えていてはいけませんが、でもこのまま丁寧に作っていけば日本のミュージカルの、エポックメイキングな作品になるんじゃないか、なってほしいなと思います。

三浦 本当にそう思います。僕も、ただ台本を読んだ時点で既に泣いていましたから。本読みで人の声を通して聞くと、またさらに堪えられなくて。

川平 だからこそ、これからの稽古で千本ノックのように繰り返し咀嚼して身体に入れていかないと。また宏規くんの感情表現には、圧倒的なエネルギーとパッションがあるものだから。僕はそれをいただきつつ返していくという、キャッチボールができることがとても楽しみです。感受性がすごくカラフルだから、宏規くんの代表作になりそうですよね。僕が彼の姿を見ることで新しい夢と勇気をもらって、再び生きる喜びを感じるわけなんですけど。そのまま、きっとお客様も「生きるって素晴らしいことなんだ」と思ってもらえるだろうし、とても癒される作品になるんじゃないかとも思うんです。また、今って人と人の距離が難しい時代じゃないですか。なかなか寛容になれない社会でもあって。でもこの作品をきっかけに、みんなでもう一度寛容の大切さを考えることができたら。そして自分の大切な人、関わりのある人に自分を捧げるというか、尽力することの素晴らしさも感じてもらえたらいいですね。

三浦 僕は、慈英さんとは今回初めて共演させていただくのですが、実は昔から大好きな俳優さんで、憧れていました。その慈英さんと、今回は“バディもの”みたいな話なので、タッグを組めるということにもすごく喜びを感じています。僕が演じるチェロクがバレエをやっている役なんですけど、物語的には、慈英さん演じるドクチュルのお話みたいなものなので。その慈英さんの姿を見ていると、結末を知っているからこそ、明るいシーンを作っているのに「もう、やめてください……」って泣きそうになる時があって(笑)。

川平 演出のバラさん、桑原さんの伏線の引き方が見事でね。きっと「あ、あれはあそこから始まってたんだ!」ってなるはずだから、ここはぜひリピートもしていただけたら!

三浦 そう! リピートした時ならではの楽しみもあると思います。

川平 「ここ細かい、なるほど!」ってね。バラさんの着眼点もすごいから。

三浦 本当に、きめ細かい作りになっているんですよ。

――それぞれ演じる役柄について、共感する部分や、現在感じている課題などがあれば教えてください

三浦 僕の場合、ほぼ共感ばかりの役なので、どこがと言うのが難しいくらいです。でも、やっぱりチェロクにとってはドクチュルの存在がとにかく大きかったと思います。お母さんは病気で亡くなり、お父さんは原作と舞台ではちょっと設定が違って、原作では過干渉だったんですが、今回の舞台ではその逆で放っておかれている。そうやって孤独に生きてきた人物として描かれているから、ドクチュルと出会ってバレエを教えることになり、最初は煙たがっていたんです。ドクチュルは70歳にしてバレエを始める設定なんですけど、老いていく身体と戦いながら、でも明るく、それまでやってきたことを全部取っ払って、希望を抱いて真っ直ぐに生きている。そんなドクチュルの姿からチェロクは勇気をもらった。それは僕自身も同じで、ドクチュル、つまり僕からすると慈英さんなんですけどね(笑)、慈英さんの姿を見るたびに「あ、俺もちゃんとやらなきゃ!」と強く思うんです。しかもストーリー的にはまだそう思っちゃいけないところ、「なんだ、このじいさん、めんどくせえな」とか思ってなきゃいけない場面で、そう思っちゃったりしてて(笑)。だって、慈英さんのドクチュルがまた、めちゃくちゃカワイイんですよ。カワイイなんて言うと語弊がありますけど。すごくチャーミングにこの役を作られているので、その姿を見ると「俺も頑張らなきゃ!」って気持ちになるんです。役として思ってるのか、自分自身として思ってるのかわからないぐらいに、今は入り込みすぎちゃっています。

川平 僕としては今は、バラさんと今回、老いをどこまで表現するのかということを考えているところでして。僕は今年62歳になりますけど、比較的自分のイメージとしては元気というか、ムードメーカーというか、どちらかというと陰ではなく、陽のほうじゃないですか。沖縄の三男坊だし、ムムッ!とか言ってるし(笑)。それなのに今回は、演劇的にどうやって70歳を表現するのか。また、習い始めたばかりのバレエをどう見せるのか、というのも難しいですよね。まだ振付の稽古には少ししか入っていないんですけど、僕としてはミュージカルをずっとやってきて、タップダンスにしても「どうだ、ジジイになってもまだこんな踊れるぜ!」って、これまでのミュージカルでは全部そうやってきているわけですから。それを今回は一旦、全て封印するというか、禁じ手にしてしまうわけなので。しかもそれが最終的に、チェロクとのコラボではどこまで表現できるものなのか。そこは今からワクワクしているというか、果たしてどこまで自分は表現できるだろう、と考えているところなんです。『ビッグ・フィッシュ』というミュージカルでも老け役は演じていたんですが、あの時は終盤の場面だけで全編ではなかったので。それが今回は徹頭徹尾、おじいちゃんですからね。

三浦 確かに、そうですよね。

川平 それ以外にも、今まで僕がオハコとしてきた特長みたいなものを全部、禁じ手にしないといけないのかなとも考えていて。この喋り方にしても、テンポ重視でやってきたミュージカルが多いですから。三谷幸喜さんの作品にしても野田秀樹さんの作品にしても、ほぼ全部マシンガントーク状態でしたからね。それを一旦封印するというのは、僕にとってなかなかのチャレンジになりそうです。とはいえ、この役者稼業の中で、これまでとは違ったことを要求されることも刺激的なことですから。かといって「本当のおじいちゃんに見えたね」っていうことにはしたくないんですよ。70歳といっても、元気な人はいっぱいいるので。そういう意味も含めて、どうやって老いていく姿を表現するか。いろいろ考えてみたいと思っています。

――桑原さんの演出を受けてみて、現時点でどんな印象を持たれていますか。

三浦 僕は今回、初めてご一緒させてもらっているんですけど。チャレンジしたいことや提案をすぐ受け入れてくださるというか、「どんどん、ください!」みたいな(笑)。ちょっと、言い方が難しいんですけど。演出家さんにもいろいろなタイプの方がいると思うんですよ。トップに立ってガーッて引っ張っていく人もいれば、一緒に作っていこうぜっていう方もいて。バラさんはどちらかというと手に手を取って全員で行くぞ!みたいな方なんですね。だから、思うことはなんでも言えるし、すごく気軽に話しかけてもくれます。演出をする時って正直、作りたい絵をまずは作っていかなきゃいけないから、役者の気持ちは後回しになることもあると思うんですけど。でもバラさんは、すごくそこにも気を遣ってくださるので、こちらとしてはすごくありがたいんです。よくディスカッションもしてくださるので、とてもクリエイティブな現場になっているのはバラさんのおかげだと思いますしね。とにかく今回、やることが多いんです。お芝居はもちろん、ミュージカルですから歌もあり、振付があり、舞台装置も複雑でいろいろテクニカル的な問題もあって、そういったことも含めてしっかりと細かく作っていかなきゃいけない。その全部に気を配れる方であり、全部に目が行き届いているからこそ、今とてもスムーズに稽古が進んでいます。さっき慈英さんがおっしゃっていたみたいに、伏線とか細かい仕掛けのこだわりも強いですから、最後までバラさんの思うような演出がついた時、一体どれくらいの効果が生みだされるんだろうって思うと、すごく楽しみです。演じる側の僕には見えない部分もありそうですから、本当は一度、外から見てみたいくらいですよ。

――川平さんは、演出家としての桑原さんのことをどう思われていますか。

川平 それはもうフェアな人ですよ。どんなに年上だろうが、新人だろうが、ベテランだろうが、とにかくみんな同じようにフェアに接してくれる方です。一人の役者、アーティストとして、アイデアを出させるし、出されたら受け入れるし、笑うし、茶化すし(笑)。

三浦 また、ご本人が楽しそうなんですよね。

川平 そうそう、ホントよく笑ってくれる。笑ってくれると、役者ってすごく安心するんですよ。出してくるアイデアも楽しいものばかりで。バラさん本人も役者をやっているから、芝居も踊りもできるし。この間も、ファイティングシーンの演出を自分でつけてたもん。あれには、びっくりしたなあ。

三浦 殺陣までできるんですからね。しかも、一番うまいという(笑)。

川平 どれだけ経験値があるんだって(笑)。姉御肌的なところもあるしね。絶対に最後まで、役者を守ってくれそうな気がする。

三浦 ああ、確かに姉御肌、その言葉がぴったりです。

川平 今回も、しっかりとみんな揃って“チーム・バラ”になっていますから! この、息の合ったところをぜひみなさんも観に来てください、劇場で待っていますよ!!

(取材・文 田中里津子)