ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』公開稽古レポート&稽古写真到着!

撮影:加藤春日

2017 年に日本で初演され、多くの観客の心を打った“奇跡”のミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』が帰ってくる!
コロナ禍を乗り越え公演を実施した 2020 年の再演を経て、新たなキャストを迎えての上演が決定。オープニング公演の開幕まで 1 ヶ月となったこの日、都内スタジオにて公開稽古が実施され、キャストのパフォーマンスや海外クリエイティブスタッフによる場面のレクチャーなどがおこなわれた。

公開稽古で披露された 5 つの場面をご紹介!

① 『The Stars Look Down 星たちが見ている』

ストライキが決行されることになり、炭鉱で働く男たちが“暗闇にいても夜空の星が自分たちを導いてくれる”と力強く歌う中、ビリー(石黒瑛土)がまるで将来の座標軸を探すように床を踏みしめながら進んでいく。
炭鉱夫たちの熱量とビリーの繊細な感情とがリンクし、それぞれの未来を暗示する本作のオープニング場面だ。

② 『Shine 輝け、今!』

ボクシング教室で居残り練習をさせられていたところ、偶然バレエのレッスンに迷い込んでしまったビリー(石黒瑛土)とウィルキンソン先生(濱田めぐみ)が出会うシーン。どんな個性でも踊って輝くことができる!とバレエガールズたちを鼓舞するように歌い踊るウィルキンソン先生と、そのエネルギーの渦の中で戸惑いつつバレエに興味を持ちだすビリー。必死に踊るバレエガールズたちがとてもキュート。

③ 『Express Yourself 自分を表現しよう』

バレエや家族のことで悩みが尽きないビリー(春山嘉夢一)が親友・マイケル(髙橋維束)から“自分の人生好きに生きればいい”と元気をもらうナンバー。ふたりはママのドレスをこっそり着せ替えながら友情を確かめ合う。タップを楽しそうに踏むビリーとマイケルの姿が愛おしい。

④ 『Angry Dance 怒りのダンス』

本作見せ場のひとつ。ビリー(井上宇一郎)はロイヤル・バレエ・スクールのオーディションを受けるためロンドンに行こうとするが、お父さん(益岡徹)に認めてもらえない。行き場のない激しい怒りの感情をダンスで表現するビリー。短い時間で気持ちをマックスまで引き上げて踊る最高にパワフルかつセンシティブな場面だ。

⑤ 『Solidarity 団結を永遠に』

ストライキをおこなう炭鉱夫と警官隊の間の摩擦が激しくなり、“団結だ!”とそれぞれの立場で歌う中、ウィルキンソン先生(安蘭けい)とバレエガールズも同じメロディを歌いながら踊る。炭鉱夫たちとガールズがデュエットのようにリンクするバレエシーンは幻想と骨太さ
が混在する舞台ならではの演出といえる。
ビリー(浅田良舞)も何かの力が宿ったかのようにバレエの実力を高めていく。

この日は海外クリエイティブスタッフのエド・バーンサイド氏(演出補)による場面ごとのレクチャーもおこなわれ、本作におけるビリー役は「マラソンを走りながらハムレットを演じるのと同じくらいの難易度」とのコメントもあった。一生のうち、ほんの少しの期間しか演じられないビリー・エリオット役。2024 年版でこの役を担う 4 人の俳優たちが自らの個性を武器にどんなビリーを魅せてくれるのか非常に楽しみだ。

また、2017 年の初演からお父さん役を演じる益岡徹は優しさと強さを併せ持つキャラクターが短い場面からも伝わり、初参加となる鶴見辰吾はどこか飄々としたお父さん像を構築。芯の部分は同じでもかなり印象が異なるダブルキャストになりそうな予感。
さらに『カム フロム アウェイ』や『アリス・イン・ワンダーランド』等の舞台で共演し、“忘れられた大女優”を描いたミュージカル『サンセット大通り』では主役のノーマ・デズモンドをそれぞれのアプローチで演じた安蘭けいと濱田めぐみ。日本のミュージカル界をけん引するふたりが内心に澱を抱えながらビリーに希望を見出すウィルキンソン先生をどう立ち上げるのか大いに注目したい。

稽古終了後、本番と同じサイズで組まれた舞台上も歩かせてもらったのだが、とても繊細な八百屋(傾斜がある舞台)になっており、角度がついたこのステージでバレエをはじめ、さまざまなダンスやムーヴメントを表現する難易度の高さ、俳優の身体にかかる負荷の大きさは尋常でないと感じた。エド氏も語った通り、アンサンブル、スウィングを含めた大人の俳優陣も過酷なオーディションを勝ち抜いたビリーたちに負けず劣らずトップクラスのメンバーが揃っているということだ。

この日の公開稽古に合わせ、ビリー役 4 人の出演スケジュールも発表になった。1375 人の応募者の中から選ばれ、並大抵ではない稽古を重ねてきた彼らがこの“奇跡のミュージカル”の舞台に立つまであと1 ヶ月。2024 年版の 4 人はどんなビリーを魅せてくれるのだろう。
大人キャストとの組み合わせでもさまざまな化学反応が生まれそうである。

『ビリー・エリオット~リトルダンサー~』は人生のすべてが詰まっているミュージカルだ。ビリー、お父さん、ウィルキンソン先生、マイケル、おばあちゃん、炭鉱夫たち……1984 年、英国北東部で生きる人々の中にきっとあなたの人生を映し出す人物がいる。ぜひ劇場でこの物語を受け取ってほしい。

公開稽古写真

取材・文:上村由紀子(演劇ライター)
撮影:加藤春日